西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

シューマン「麗しくも美しい五月に」

2007-05-06 11:37:58 | 音楽一般
5月になると、どうしても聴きたい曲にシューマンの「麗しくも美しい五月に」があります。これは歌曲集「詩人の恋」(op.48)の第1曲です。

Im wunderschönen Monat Mai,
Als alle Knospen sprangen,
Da ist in meinem Herzen
Die Liebe aufgegangen.

Im wunderschönen Monat Mai,
Als alle Vögel sangen,
Da hab ich ihr gestanden
Mein Sehnen und Verlangen.

麗しくも美しい5月、
すべての蕾が開き始めた時、
僕の心に
恋が芽生えた。

麗しくも美しい5月、
すべての鳥たちが歌い始めた時、
僕は彼女に
僕の憧れ・熱望する気持ちを告白した。(筆者訳)

ハイネによる詩に付けた、このシューマンの作品は、シューマンの「歌曲の年」と言われる1840年に作られました。この年には、生涯で最も多くの歌曲(リート)が作曲されたということです。

モーツァルトの晩年のリートに、「春への憧れ」(K.596)があります。

Komm, lieber Mai, und mache
Die Bäume wieder grün,
Und laß mir an dem Bache
Die kleinen Veilchen blühn!
Wie möcht ich doch so gerne
Ein Veilchen wieder sehn,
Ach, lieber Mai, wie gerne
Einmal spazieren gehn!

愛しい五月よ、来ておくれ、そして
木々を再び緑にしておくれ、
それから私のために小川に
小さなスミレを咲かせておくれ!
だって私はそんなにも
すみれの花を再び見てみたいのです、
ああ、愛しの五月よ、本当に
どうしても歩き回りたいのです!(筆者訳)

このようにヨーロッパの人々にとっては、我々が4月の桜の季節を待ちわびるように、5月は待ちに待った月ということなのだろう。手元の曲名辞典を見ても5月を歌った曲の方が4月の3倍以上もあることがわかります。

今年は4月の始めに復活祭がありました。そして、この5月の季節。このあたりのことを十分に知ることなくして、これらの偉大な歌曲を生んだ作曲家たち、またヨーロッパの人々の心情を汲み取ることはできないのでは、などと考えます。このような違いがあるからこそ、自分たちとは違う風俗習慣を持つ人たちを生んだ風土というものに強く興味を持ち引かれます。さらにそのあたりの勉強をこれからもしていきたいと思っています。



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