く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<クマガイソウ(熊谷草)> 平敦盛を討ち取った源氏の熊谷直実の名前から

2016年04月27日 | 花の四季

【アツモリソウとの対で命名、ユニークな花姿を武者の母衣に見立て】

 ラン科アツモリソウ属の多年草。北海道から九州まで全国各地の竹林や雑木林などでしばしば群生する。葉も花も実にユニークな形。葉はフキに似て団扇(うちわ)のように大きく放射状の縦じまが目立つ。4~5月頃、その2枚の葉の間から花茎を伸ばし、丸い袋状の花を1つ付ける。これは唇弁(しんべん)と呼ばれるもので、白地に紅紫色の網目模様が入る。その外側の花被片はうすい黄緑色。

 別名「ホロカケソウ(母衣掛け草)」。膨らんだ唇弁を武者が矢を防ぐため背中にまとう母衣(ほろ)に見立てた。同属のアツモリソウも同じような唇弁を持つ。クマガイソウの名は源氏の武将熊谷直実から。一方のアツモリソウは平家の平敦盛から名付けられた。『平家物語』の中の「敦盛の最期」の場面。一の谷の合戦で直実は逃げ遅れた若い敵将敦盛(平清盛の弟、経盛の末子)を討ち取る。敦盛はまだ10代半ば、自分の息子と同じ年頃だった。笛の名手でもあった。無常を感じた直実はその後出家する――。

 木陰で咲くクマガイソウは花色がやや地味で、葉が大きく広がる様から男性的な印象。これに対し、日当たりを好むアツモリソウの花はあでやかな紅紫または淡紅色で優しく女性的。そんな両者のイメージからそれぞれに熊谷、敦盛の名前があてがわれたとみられる。一方でこんな見方も。源氏は白旗、平氏は赤旗を立てて戦った。そのため花が白っぽいクマガイソウに源氏の熊谷、赤っぽいアツモリソウに平氏の敦盛を当てた。

 『日本植物方言集成』(八坂書房編)によると、クマガイソウはその花姿から「おーぶくろばな」「きつねのちょうちん」「たぬきのきんたま」など各地で親しみを込めて呼ばれてきた。ただ最近は園芸採取などで野生種が減少しており、環境省はアツモリソウと同様、絶滅の危険が増大しているとして絶滅危惧Ⅱ類に分類している。近縁種に台湾クマガイソウ、中国クマガイソウがある。「竹取るや熊谷草の母衣のうへ」(綾部仁喜)

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