先日、田舎の小さな病院で起きた医療訴訟の判決がでた。
60代の男性がオートバイで走行中に車と正面衝突し、近くのA病院に搬送された。
骨盤骨折を起こしており、すぐに隣県の大病院に転送されたが、まもなく亡くなった。遺族は初期対応をした医師がもっと適切な処置をしていれば助かったはずだと考え、医師と病院を相手に一億4千万円を超える損害賠償を求めた。
高等裁判所は原告の訴状を認めたというものである。
A病院は県内の僻地にあり、その地域で唯一の総合病院である。
総合病院とはいえ、たった60床、常勤医は3名(内科2名、外科1名)しかいない。
耳鼻科、脳外科、皮膚科などはすべて非常勤医師でかろうじて成り立っている。
おそらく彼らは当院のように、自分の専門外の診療を強いられているだろう。ただでさえ東北は深刻な医師不足にあるというのに、このご時世に僻地医療に従事している医師は極めて貴重な存在であり、私は畏敬の念すら覚える。このような良心の固まりのような医師に、都会の大病院の”外傷専門医”と同じレベルの技術を要求するというのはあまりにも酷ではないか。
市立病院なのでこの賠償金により小さな市の財政はさらに窮地に落とされ、市民の生活が窮迫することが予想される。
遺族の悲しみは察するが、そもそも正面衝突した本人や対向車の責任は問われないのだろうか?
初期対応をした医師がすべて悪いのだろうか?
定年間近の成人の余命を考えた場合、一億4千万円という賠償は妥当な額なのだろうか。
車と正面衝突したバイク事故は一般にかなり厳しいが、外傷専門医が初期に診れば本当に救命し得た事例だったのだろうか。
そもそも救命し得たか、し得なかったかを正確に予測できるほど、現代医学は進歩しているのか?
救命し得たと判断できる決定的科学的根拠はあるのか?
しかし明日は我が身でもある。
神経内科医である自分も、明日の当直では非典型的な心筋梗塞を見逃すかもしれない。
ここに来てから毎日こうしたリスクに怯える日々であり、実際個人的にもあやうく訴訟を起こされそうになったことも、この2年半で2例あった。
地域の救急医療を無理に支えようとするあまり、結果が悪ければ訴訟に負けるのが今の日本の現状である。
現場の医師の中には、こう葛藤する者も少なくないはずだ。
「地域のためにとどまるのか?あるいは保身を優先するか?」
自分と家族を守りたければ、なるべく都会の、しかも自分の専門だけ診療すればいい病院で働くのがベストな選択である。
そういう意味では大学病院が最も安全かもしれない。
病棟業務なし、救急医療なし、専門外診療なし、好きな分野だけ診療し、論文も書かなくていいし、アルバイトもOKとなれば、たしかに大学に引きもる医師が増えるのも無理はない。
地方のことなどほっとけばいい。
さらに今後もこうした判例が増えれば、地域の医師不足、地域医療の崩壊が加速することは避けられないだろう。
医者が勉強して知っている医療は、国民が考える医療レベルにはほど遠い。
日本人はいつから”修羅”になったのだろうか。
60代の男性がオートバイで走行中に車と正面衝突し、近くのA病院に搬送された。
骨盤骨折を起こしており、すぐに隣県の大病院に転送されたが、まもなく亡くなった。遺族は初期対応をした医師がもっと適切な処置をしていれば助かったはずだと考え、医師と病院を相手に一億4千万円を超える損害賠償を求めた。
高等裁判所は原告の訴状を認めたというものである。
A病院は県内の僻地にあり、その地域で唯一の総合病院である。
総合病院とはいえ、たった60床、常勤医は3名(内科2名、外科1名)しかいない。
耳鼻科、脳外科、皮膚科などはすべて非常勤医師でかろうじて成り立っている。
おそらく彼らは当院のように、自分の専門外の診療を強いられているだろう。ただでさえ東北は深刻な医師不足にあるというのに、このご時世に僻地医療に従事している医師は極めて貴重な存在であり、私は畏敬の念すら覚える。このような良心の固まりのような医師に、都会の大病院の”外傷専門医”と同じレベルの技術を要求するというのはあまりにも酷ではないか。
市立病院なのでこの賠償金により小さな市の財政はさらに窮地に落とされ、市民の生活が窮迫することが予想される。
遺族の悲しみは察するが、そもそも正面衝突した本人や対向車の責任は問われないのだろうか?
初期対応をした医師がすべて悪いのだろうか?
定年間近の成人の余命を考えた場合、一億4千万円という賠償は妥当な額なのだろうか。
車と正面衝突したバイク事故は一般にかなり厳しいが、外傷専門医が初期に診れば本当に救命し得た事例だったのだろうか。
そもそも救命し得たか、し得なかったかを正確に予測できるほど、現代医学は進歩しているのか?
救命し得たと判断できる決定的科学的根拠はあるのか?
しかし明日は我が身でもある。
神経内科医である自分も、明日の当直では非典型的な心筋梗塞を見逃すかもしれない。
ここに来てから毎日こうしたリスクに怯える日々であり、実際個人的にもあやうく訴訟を起こされそうになったことも、この2年半で2例あった。
地域の救急医療を無理に支えようとするあまり、結果が悪ければ訴訟に負けるのが今の日本の現状である。
現場の医師の中には、こう葛藤する者も少なくないはずだ。
「地域のためにとどまるのか?あるいは保身を優先するか?」
自分と家族を守りたければ、なるべく都会の、しかも自分の専門だけ診療すればいい病院で働くのがベストな選択である。
そういう意味では大学病院が最も安全かもしれない。
病棟業務なし、救急医療なし、専門外診療なし、好きな分野だけ診療し、論文も書かなくていいし、アルバイトもOKとなれば、たしかに大学に引きもる医師が増えるのも無理はない。
地方のことなどほっとけばいい。
さらに今後もこうした判例が増えれば、地域の医師不足、地域医療の崩壊が加速することは避けられないだろう。
医者が勉強して知っている医療は、国民が考える医療レベルにはほど遠い。
日本人はいつから”修羅”になったのだろうか。
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