天満放浪記

matsuken tenma blog

大統領ツイートあれこれ

2016年12月25日 | 西:ラテンアメリカ情勢

 ドナルド・トランプのツイッターが世間を、というか世界をにぎわせている。トランプスピーチで英語を改めてキチンと学び直そうと思っている私もフォローすることにした。その結果、英語のあまり分からない私でも、こんな八尾の立ち飲み屋で息巻いてそうなオヤジを元首にするなんてアメリカ人は大丈夫か…と不安になったのでした。

 そのトランプツイート、クリスマスに「ハッピーハヌカ」ときた。ユダヤコミュニティのあるアルゼンチンなどではマクリ氏がハヌカを祝うツイートをしていたが、トランプがなぜ? そういえば国連でイスラエルの占領地入植停止決議が採択され、オバマがそこで否決権を行使しなかった、ひょっとしてこれへの抗議か、と思って少し調べたら本当にそのようです。小説なんかよりずっと解釈の勉強になりますね、ツイッター。ラテンアメリカ文学を「代表する」と言われることが驚くべきことに稀にでもある小説家パウロ・コエーリョが、かつて、ジョイスより自分の方が偉い、ユリシーズなんて読破した人間はわずかだが、私のツイッターは何百万の人々が見ているのだ、と言っていた。ある意味で真実かもしれない。大学も文学の講義などせずツイッター解釈論とか開講すべきかも。

 ところでアメリカ大陸には他にも国があります。

 ちょっと気になったので、各国大統領のツイッターを全部のぞいてみた。

 特に、11月25日のフィデルの死に際し、各国首脳がどのようなコメントを出したかで、だいたいその人の性格や思想が見えてくるだろう。こういう記事も出ているが、改めて確認していこう。

 メキシコはエンリケ・ペニャニエト大統領。66年生まれということは私の2つ上、私の兄と同い年のようですね。むむむ。最初の奥さんに先立たれて女優と再婚、愛人との間に婚外子が2人。なかなかやりますね。わりとイケメンだし。フィデルのことは referente emblemático del siglo XX だったとしている。さすが「いちおうインテリ」、難解な言葉をお使いになります。

 グアテマラは元コメディアンのジミー・モラレス大統領。国民の過半が先住民インディオという可憐な小国の大統領ブログは更新があまりなく、犯罪がらみのものが多い。6月10日のナルコは写真だけでも怖いよ。ジミー君は元コメディアンであるが、フィデルについては El Pueblo y Gobierno de Guatemala jamás olvidará a Fidel Castro por ser un amigo que tendió su mano cuando más lo necesitábamos.とツイート。我々がもっとも必要としたときに手を差し伸べてくれた友、と敬意を表した。

 エルサルバドルは元FMNL所属ゲリラのサルバドール・サンチェス大統領。元ゲリラとか元コメディアンとか人材が豊富な地域だなあ。エルサルバドルなんて国があること自体、知らない人も多いでしょう。ぜひ大統領ブログをご覧あれ。元闘志の大統領はフィデルにこんな言葉を捧げた。La humanidad ha perdido a un gran hombre, que supo interpretar y transformar al pueblo.(人類は偉大な男を失った。人民を代弁し変革できた男を。)翌日はエルサルバドルから米国などへ移民していった人々に、困ったら現地領事館に助けを求めてと訴えている。中南米の国では国外移民のケアが重要課題となっている。理由は単純。行った先でケアしてくれないからだ。

 ホンジュラスはフアン・オルランド大統領。フィデルの死のときにはハリケーンで壊滅的被害を受けた先住民居住地域の援助で手一杯だった模様。災害時にここまで細かく国家元首が情報把握をしていてくれたらありがたい。小国だからこそできるのかもしれないが。

 コスタリカはルイス・ギジェルモ・ソリス大統領。こちらもハリケーン被害のケアでてんてこまい。ホンジュラス大統領と同様、フィデルの死に関してはオフィシャルな声明のみ。中南米では、いわゆる左派政権ではないかぎり、公人がキューバに対し極端にシンパシーを示すような真似はしないのだろう。

 ニカラグアはダニエル・オルテガ大統領。こちらはツイッターは1年前に止まったままである。大丈夫? カストロ路線をある意味で継いでいるオルテガ氏だが、中国を巻き込んだ大洋間第二運河建設という大ばくちに出ている。したがってこの国は現在、事実上、中国のラテンアメリカ進出の拠点ともいえる場所だ。百年前には米国がパナマで同じことをしている。歴史は繰り返すのでしょうか。

 そのパナマはフアン・カルロス・バレーラ大統領。気のいいオッサンという感じ。パナマは死ぬまでに一度訪れてみたい国の一つだ。あの人工的な都市の景観がいろいろな想像を刺激してくれそうで。

 キューバの横にあるドミニカ共和国はダニロ・メディーナ大統領。公式の哀悼の意の次で Emblemático símbolo de la lucha contra la desigualdad, convirtiéndose en una de las figuras más influyentes del siglo. Descanse en paz.と少し個人的感想を書いている。不平等に対する闘いの象徴、と書くだけで、この人の物の見方が分かる。キューバ革命は、それを論じる人間の思想や生き方を測る、とても便利な物差しになっている。

 コロンビアはノーベル賞授賞式の記憶も新しいフアン・マヌエル・サントス大統領。はじめて幸せなクリスマスを迎えた、と和平交渉成立の成果を強調している。フィデルの死に際しては公式な哀悼の言葉の次に(ツイッターはこの公式声明の直後の「お気持ち表明」が注目ね!)なかなか面白いツイートが。Fidel Castro reconoció al final de sus días que la lucha armada no era el camino. Contribuyó así a poner fin al conflicto colombiano.(フィデル・カストロはその最期に武装闘争が進むべき道ではないことを認めた。そうすることでコロンビア紛争終結に寄与してくれた。)この言葉はくだらない詩よりもポエティックで含蓄に富んでいる。さすがノーベル賞?

 お隣ベネズエラはニコラス・マドゥロ氏。マドゥロ(成熟した)の名の割りにいっこうに国のかじ取りが成熟しないと言われるマドゥロ氏であるが、ツイッターを見る限り幸せな国を統治しているように見える。フィデルの死に際しても怒涛のツイート。そんなことしてる場合か…おまえ。

 エクアドルはラファエル・コレア大統領。この国は4月16日に生じ、死者600人以上を出した地震の復興に追われている。クリスマスのメッセージはやはり移住者へ向けたもの。国を出ていった人たちのほうがネットメディアを見ていることを意識してのことだろう。左派のコレア氏はフィデルの死に際して「彼の革命は時空を超える」と敬意を表している。その次のツイートでは「サッカーの試合ごときで人が2人も死ぬなんて許しがたい」と言っていて、なにかキトのスタジアムで事故でもあったんでしょうか。面白いなあ、南米。

 ペルーはPPKことペドロ・パブロ・クチンスキ氏。この人はフィデルやキューバには何のシンパシーも感じていないだろう。11月26日にはチリを訪れている。ちなみにサンティアゴ市内はペルー料理屋さんだらけ。それもそのはずだ、あんなサンドウィッチとスープしかない国ではペルー料理はあまりに魅力的で…これ以上言ったらチリ人に怒られる。

 そのチリでPPKを出迎えたのがミシェル・バチェレ大統領。この人の経歴と思想は今さら確認するまでもないのだが、微妙な歴史を持つ国のかじ取りをしている以上、これがフィデルへのぎりぎりの敬意の表明だったのだろう。Mis condolencias al Presidente Raúl Castro por la muerte de Fidel, un líder por la dignidad y la justicia social en Cuba y América Latina. 後半、キューバとラテンアメリカに尊厳と社会正義を求めた指導者、という部分の「発言されなかった気持ち」を想像するだけで面白い。

 マドゥロと並ぶフィデルの弟子筋に当たるのがボリビアのエボ・モラレス大統領。国家の主権と世界人民の尊厳のために戦う方法を教えてくれた師匠、といった、本当に師を敬う弟子のような言葉が並ぶ。しかしその他のツイートを見る限りボリビアも前途多難であるよなあ。ここは20年前のペルーのようになっているとも聞くので、近々ぜひ訪れてみたい国の一つだ。アイマラ語の教育をやっている写真も興味深い。

 パラグアイはオラシオ・カルテス大統領。かなりスカスカで、11月9日にはトランプおめでとうとかツイートしているので、大丈夫か?と思ったりもするが、よく考えたら公職の人間がツイートなんてやってる暇があったら仕事しろよ、という気も。政治家はツイートが少ないほうがほんとはマトモなのかもしれないが…。

 と思っていたら、ようやくツイッターをやらない人が。ウルグアイのタバレ・バスケス大統領は、大統領執務室が代行して「大統領は~と述べている」という形のツイッターを運営している。まあ、これが当たり前だよなあ。国家元首がペラペラしゃべりまくる時代が来るなんて、いったい誰が想像したでしょうか。ヒトラーがあの世で臍をかんでいるかも。

 最後はアルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領。PPKと並ぶ新自由主義ゴリゴリの人なのでフィデルの死にも素っ気ない。

 以上、各国元首のツイートぶりを見てまいりましたが、トランプ氏に負けないくらいに、どこも皆さんお元気。スマホを持たない私も、机のPCで、公人のツイッターなら読める。文学に当てている時間の半分はこちらの読解に費やした方がいいのかもしれないな。ひょっとして。最後にこちらはクリスマスのプレゼントです。あの人によるスペイン語のツイート。

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