天満放浪記

matsuken tenma blog

ブックフェアの熱気

2016年12月28日 | 西:LA文学最新情報

 昨日紹介したグアダラハラのブックフェアでの若手作家特集は、こちらで作家たち4人の肉声を聞ける。エクアドルのリバデネイラさん、グアテマラのアルノルド君、アルゼンチンのカミラさん、ウルグアイのダミアン君。小説を入手するのはアマゾンレベルではまだ無理のようで、だからこそこういうフェアで売り込みということなのだろう。短篇をめぐってノックアウトがどうのとか言っていて、ラテンアメリカの典型的な文学好き学生っぽくて素敵です。

 情報源はこちら、コロンビアのウィンストン君のサイトなのだが、面白いのでチェックしていくと、まず彼はフェア直前にフィデルが亡くなったことに言及し、こっちで彼なりの革命キューバ文学(=カストロ独裁下でのキューバ人が書いた文学)の総括をしている。文学業界でフィデルは独裁者扱い。キューバ文学は私はまるで読んでないのでさっぱりわからないが、こうした「まとめ方」にもあの国に対するスタンスが反映されているのかもしれない。フェアの中には壁のセットがしつらえられ、壁は(人の流れを)制限し、読書は(その壁を)越える、トランプは読書をしない男、とあって、このあたりはメッセージ性も。ちなみにバルガス=リョサのような新自由主義派は今や旧第三世界のほうに多いくらいなのだが、彼らはトランプとカストロを共に非難する。グローバリゼーション肯定の立場からすれば、どちらも「鎖国志向」に変わりはないからである。ツイッターばかりやってるドナルドとは違ってカストロは猛烈な読書家だったそうだが、彼の読書歴にも文学はあまり入ってなかったようだ。

 勉強になったのがこちらの鼎談。フェアの主催者女性と、バルセロナの新聞バングアルディアのセルヒオ・ビラサンファンと、アナグラマのホルヘ・エラルデがデジタル時代に紙媒体の宣伝フェアを実施することの意義を語り合う。フランクフルトのブックフェアとの色分けに関する話がまさに「目から鱗」だった。いっぽうで、カルメン・バルセイス・デジタル文庫というのが始まったそうで、このあたり、紙媒体とデジタルを用途で柔軟に使い分けていこうという、スペイン大手出版業界の先手必勝路線が見え隠れする。

 ウィンストン君の実況はこちら。熱気が伝わってきます。彼自身が案内役をするのがこちら。大手に混じってセクストピソなど新興のマイナー出版社が頑張っているのがよく分かる。日本の漫画の紹介で頑張っているスペインのサトリの名も。

 いろいろゲストが来たようで、生ける伝説バルガス=リョサも。お取り巻きの連中がぞろぞろ来てイベントが催されたようだが、私もぜひ参加して質問したかったです。「今年の新作 Cinco esquinas は日本で言うといわゆる通俗小説レベルの出来でノーベル賞作家にふさわしくない水準だと思いますがどうですか?」 取り巻き連中から袋叩きにされそうだ。詩人のほうの生ける伝説はスペインからアントニオ・ガモネダ、ニカラグアからエルネスト・カルデナルも来場。カルデナルみたいな極左に近い過激な人が招かれる場をペンギンランダムハウスのようなコングロマリットが企画するという、このフェリアのごった煮的な空気は素晴らしい。メキシコのベテランではエレナ・ポニアソウスカの姿も。

 こちらはペンギンランダムハウスのクラウディオ・デラマドリがペルーの作家アロンソ・クエトとラテンアメリカ文学について語ったもの。音がほとんど聞こえません。

 フェアにはラテンアメリカ中の本屋が集まる。

 彼らからのアンケート調査が面白い。お題目は「21世紀で最高のラテンアメリカ小説はなんだと思うか?」。だいたい2冊挙げている。

 バルガス・リョサ『チボの狂宴』(だからなぜ?!)、ガルシア・マルケス『我が悲しい娼婦たちの思い出』(ベスト?!)。頭が古いなあ。

 フランシスコ・ゴールドマン The Divine Husband のスペイン語訳。この人はメキシコ以南の多くの国々でスペイン語作家と思われている。日本では未知の作家だが、南米の書店ではラテンアメリカ文学のコーナーに。アロンソ・クエト『青い時』。百恵さんの回想録ではありません、センデロルミノソの後遺症を扱った都市小説。でもこれが21世紀ラテンアメリカ小説のベストとはねえ…。

 ペドロ・レメベルの Tengo miedo toreroを挙げたのはアルゼンチンの書店員、分かってるなあ。この人はボラーニョ『2666』も挙げていた。

 エレナ・ポニアトウスカ『レオノーラ』。画家レオノーラ・キャリントンの伝記モノで、ポニアトウスカの得意ジャンルのひとつだ。エクトル・アバド・ファッショリンセ『来るべき我らが忘却』。

 メキシコのソタノ書店の店員はアレハンドロ・サンブラ『帰宅の方法』とカルメン・ボウヨサ『ロマン主義者たちの謀略』を挙げていた。

 FCEの人はネリダ・ピニョンの Libro de horas とベルナルド・エスキンカの Belleza roja というが私はどちらも存在すら知らない。

 ガンディ書店は『2666』だけと潔い。

 リマのバランコから来た書店員は『2666』と自国ペルーのクラウディア・サラサル・ヒメネスによる La sangre de la auroraの2つ、こういう選択が妥当だろう。

 コロンビアの書店員は私のまったく知らない2冊を挙げている。ウゴ・チャパロ・バルデラマの La sombra del Licántropoとダニエル・ゲベルの El caso Voynichと言われてもわからない。たぶんコロンビアの作家だろう。自国のマイナー作家を「21世紀ベストだ!」と断言する書店員が可愛い。

 次のメキシコの書店はマルケスの『我が悲しき…』とレオナルド・パドゥラ『犬を愛した男』。これでマルケスに二票目だ。やはりマルケスブランドはいまだ強し。

 エクアドルの書店員はディアメラ・エルティッツの『労働力』とフランシスコ・ゴールドマン Say Her Nameのスペイン語訳。またかよゴールドマン! いったいお前は何文学なの?

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