天満放浪記

matsuken tenma blog

味の素が育てた文学

2017年03月07日 | 西:書評②北中米・カリブ

ライア・フフレサは1983年生まれ、ということは現在34歳。袖の情報によるとベラクルスの霧の森で育ったのだとか。ベラクルスはメキシコ市から南東に向かってメキシコ湾まで行きついた先にある都市で、コルテスが上陸した地点としても知られ、メキシコ以外の多くの人はハリウッド映画『ヴェラクルス』で記憶しているかもしれない。私は行ったことがないので知らないが、熱帯雨林に近いはずなので、bosqueも森というよりは密林といったほうがいい感じなのかもしれない。彼女はマリオ・ベジャティンが主宰するライタースクールに通っていたそうだ。ということは美術畑に片足を突っ込んでいる人なのだろう。最近はこういうタイプの作家が増えてきた。ラテンアメリカ文学は長らく①ジャーナリスト出身の小説家と②詩人出身の作家に二分されてきたが、そこに③造形芸術と二足の草鞋の作家というカテゴリーを含めてもいいかもしれない。本当は④スペイン語やポルトガル語や英語を使用しない作家、というカテゴリー樹立の方が先だとは思うけれど…。彼女は短篇も書いているようだ。2013年の『新たなる全体像:現代メキシコ小説選集』にも含まれているのだとか。この本は私は持っていない。アンソロジーをたまにまとめ買いするのを近年サボっているからである。最初に刊行された本は El esquimista.といい、これが長編小説なのか何なのかは分からない。言葉の意味も分からない。詩も書くらしく、2006年に刊行された『メキシコ詩精髄』に1篇取り上げられたことが何よりの誇りなのだとか。フランスで美術を学び、今はマドリードに住んでいる。

 そのライアの2015年に刊行された話題作が本書『うまみ』。メキシコ市のアパートに暮らす主人公のアナは中庭に milpa, すなわちトウモロコシ畑をつくろうと思い立つ。姉が死んだばかりで、兄弟は軍に入り、たったひとりの女友だちも自分を捨てた男を探して消えてしまった。がらんとしたアパートにはアルフォンソという先スペイン期の薬草を研究している人類学者が住んでいる。アルフォンソはアパートの家主で、アパートは彼の味覚に関する理論に基づき5つの区画に分かれていた。甘味、辛味、苦味、酸味、そしてうま味。アナが畑をつくるあいだ、アパートに残された人々が自らの過去を回想する…と裏表紙の説明。

続きは読んでから~。


この記事をはてなブックマークに追加