一身二生 「65年の人生と、これからの20年の人生をべつの形で生きてみたい。」

「一身にして二生を経るが如く、一人にして両身あるが如し」

斎藤慶輔

2017年05月02日 | 社会

 

「決まった道はない。
ただ行き先があるのみだ」
齊藤慶輔
獣医師

全国でも数少ない、野生動物を専門に診る獣医師の齊藤。かつて、齊藤の心を救った1つの言葉があった。
北海道釧路湿原の環境省が設立した野生生物保護センターを拠点に、齊藤は絶滅の危機に瀕する動物たちを救うべく、精力的に活動を行っている。野生動物のなかでもオオワシやシマフクロウなどの猛禽類の専門家だ。
齊藤が北海道で働き始めて二年が経った頃、異変は起きた。外傷が全くないオオワシの死体が次から次へと運び込まれてきたのだ。鉛による中毒死だった。ハンターに駆除されたシカをワシがついばみ、鉛弾の破片を一緒に飲み込んだことから、鉛中毒を発症していることがわかった。
このまま鉛中毒が広がれば、絶滅の危機に陥ると齊藤は直感した。鉛の弾を毒性の低い銅などに代えてもらえれば、オオワシやオジロワシの悲劇は防げると、仲間たちと行政やハンターの団体に訴えたが、とりあってもらえなかった。それどころか、思い出したくないほどの脅迫電話や抗議の手紙を受け取った。ワシの死体はどんどん運ばれてくる。齊藤は絶望的な気持ちになった。
 そんな時、調査のため齊藤はサハリンに向かった。トラックが泥道で何度も動かない。その時、齊藤は「ロシアは大変だね。予定どおりにはいかないね」と運転手に声をかけた。すると、ロシア人運転手は片言の英語で答えた。

決まった道はない。ただ行き先があるのみだ

その言葉は、齊藤をはっとさせた。ワシを守るという目標さえ見失わなければ、必ず道は開ける。
帰国した齊藤は、猛然と動き出す。鉛中毒のことを、あらゆる機会をとらえて訴えた。しだいに、鉛弾から銅弾へ切り替えるハンターや、無毒の弾を教えて欲しいという問い合わせが増えていった。
その後、北海道のシカ猟では実質的に鉛の弾は使用禁止になった。現在も野生動物のおかれた現実は厳しい。しかしだからこそ、齊藤は奔走する。進むべき道は、自分で作ればいい。

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