Kanazawa Jazz days

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Keith Jarrett and Charlie Haden: Jasmine(2007年録音) 美しく裏切られた一枚

2010年05月23日 | jazz (piano)
Keith Jarrett(p) & Charlie Haden(b):Jasmine (ECM)

      1. For All We Know

      2. Where Can I Go Without You

      3. No Moon At All

      4. One Day I'll Fly Away

      5. I'm Gonna Laugh You Right Out Of My Life

      6. Body And Soul

      7. Goodbye

      8. Don't Ever Leave Me

2007年録音,2010年発売


一言でいうと「裏切られた」一枚.それでも「こんな裏切り」は悪くない,と思う.

届いたCDから,全くケレン味のない自然な音が流れて出してきたとき,思わず裏切られたと思った.と共に何とも云い様の無い引きもあって,反芻し反芻し聴き続けている.今までの彼らの演奏を聴く時よりも,ずっとずっと距離感が近づいている.そして,今もまた聴き続けている,聴き続けている.何でだろうか.なぜ? だから美しく裏切られた一枚.

ECMレーベルの惹句のなかで,Keith Jarrettの言葉が紹介されている:
These are great love songs played by players who are trying, mostly, to keep the message intact.
love songを無垢のまま伝える,という演奏意図が,ボクが抱いていた彼らに対するassumptionから大きくハズレていたことがよくわかる.演奏のvectorが天蓋を突くのではなく,身近な人への暖かい気持ちを指向しているならば,
確かに自然に淡々と音が流れ出るのだろう.名曲Body and soulにしてもテーマの始まりから美しさとオリジナリティが自然に溶け込んでいる.One Day I'll Fly Awayの美しさも聴き飽きない.

だけど裏切られた気持ちが底に残るのだ.

-----------------
Keith JarrettとCharlie Hadenの共演の話はポロポロ情報は流れていた.心待ちにしていた人は多かろうと思う.ボクもその一人だ.初めてジャズを聴きはじめた30年前から,そう思っていたのだから,話は長くなるし簡単ではない.手短に整理できないし,するべきでないように思う.じゃないと,裏切られたという意味が自分でもわからない.

1979年頃,ボクがジャズを聴き始めた頃の忘れられない光景がある.京都三条のアーケイドのなかにある十字屋の店頭,いや,通り沿いの窓,に黒地に欧州 の街頭の写真をはめ込んだレコードジャケットが並べてディスプレイされていた.Keith JarrettのECMからの新譜”Eye of the heart”が西独ミュンヘンのECMから届いたのだ.その光景は甘酸っぱい輸入盤特有の匂いとともに強く記憶に残っている.

 
Keith Jarrett: The survivor's suite(ECM)        Keith Jarrett: Eye of the heart (ECM)
1976年                     1976年5月オーストリアでのライブ,1979年発売

ともに
Keith Jarrett (p,ss,perc), Dewey Redman(ts,perc), Charlie Haden(b), Paul Motian(ds,perc)


新米ファンにとって待望の一枚であった理由は,大好きなECMから,Keith Jarrettの米国でのQuartet,俗にAmerican Quartet (
Keith Jarrett (p), Dewey Redman(ts), Charlie Haden(b), Paul Motian(ds)ほか )のライブが発売されるから.このバンドはImplseレベールから発表されていたが,Keith Jarrettの奔放な部分がまとまりなく垂れ流されている感があって,全体のアルバムの質は低かったと思う(Death and flowerは名盤と称されるだけの内容はある).しなしながら,ボクはCharlie Hadenとの絡み,Charlie Haden固有の昇り立つような独特のドライヴ感のうえでのKeith Jarrettが好きだったのだ.Impulseレーベルでは,好きな音の瞬間・瞬間が騒音の海に浮かんでいるような感じ,だった.Paul Motianは是も非もなく,Dewy Redmanの絵の具のチューブをしごくようなtsは耐えられなかった.だからボクにはAmerican Quartetのダメなレコード群はやりきれない思いがあった.美しい音のカケラが詰まっていたのに.

ところが,Impulseのあと,ECMからリリースされたSuvivor suitesの出来は遥かに良くKeith の魅力を捉えており,アルバムとしても無駄の無いまとまりになっていた.つまり,ECMのMansfred Eicherのプロデュースの質とか力を見せつけられたような一枚だったのだ.だから”Eye of the heart”への大きな期待になり,京都での売り出し初日の光景が記憶に残っている訳.それにしてもテナーサックスはいらない,ついでにドラムもいらない,という感覚は最後まで残った.聴きたかったのはKeith JarrettとCharlie Hadenのプレイだったのだ.それが30年前の話.

フォークの香をまとったアメリカ人の基底に降りていくような音(Charlie Hadenのリーダ作Closenessはその世界に近い),あるいはinter-playというより奔放で静謐,冷たく熱いようなimprovisationを想起してしまうのだ.たぶん,そのような期待のなかにあった人は多いのではないか.あの70年代はじめのAtlantic時代のトリオ(
Keith Jarrett (p), Charlie Haden(b), Paul Motian(ds))も,部分的にそのような香が匂い立っているのである.


Charlie Haden: Clossness (Horizon)                 Keith Jarrett:The mourning of the star(Atlantic)
A1のみKeith Jarrett (p), Charlie Haden(b)          Keith Jarrett (p), Charlie Haden(b), Paul Motian(ds)
1976年                       1971年

とても長くなったが,Jasmin発売の報を聞いてから,そのような記憶が走っていたのである.33年ぶりの共演,という惹句の帰結でもあるのではないだろうか.


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14 コメント

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TBさせて頂きます (中年音楽狂)
2010-05-23 16:51:37
kenさん,出張ご苦労さまです。私も海外出張は多いですが,西海岸ではSF以北が中心で,アナハイムまでは下ることはまれですねぇ。

それはさておき,"Jasmine"の評価はバラツキがありますが,「残氓」は文句なしの傑作ですよね。私はアメリカン・クァルテットの最高傑作だと思います。ということで,"Jasmine"は"Jasmine"でTBさせて頂きます。"Closeness"も聞きたくなってきたなぁ。
Unknown (ken_jazz)
2010-05-23 16:59:52
こんにちは.

SF以北は少ないですね.昔,数回だけ***入ってる,のI社に行ったくらいかな.SF以南と随分違いますよね.タホのあたりは行ってみたいな,って思っていましたが.

僕もTBさせて戴いているのだけど(Woody Showも)うまくいかないみたいですね.

ClosenessのA面はいいのだけど,B面のアリスコルトレーンとか,戦闘音とのモノは頂けないヘイデンなのです.私は.
TB確認してみました (中年音楽狂)
2010-05-23 18:37:44
kenさん,私は結構ポートランドには行ってますねぇ。いい街です。それはさておき...。

TB確認してみたのですが,私のところには到達していないみたいです。プロバイダー間で相性が悪いことはよくありますが,こういうのはストレスがたまってよくないですね。Woody Shawについては記事の末尾にURLを張らせて頂きますね。
ありがとうございます (ken_jazz)
2010-05-23 22:59:26
TBそうですか.相性がありますね.恐れ入ります.

ポートランド,とか港町はよさそうですね.同じロス近郊でもロングビーチは中古CDショップなんかがあるダウンタウンでご機嫌でした.ああ,アナハイムはやだな.
はじめまして (criss)
2010-05-24 23:08:43
kenさん、はじめまして。
コメント、ありがとうございます。
中年音楽狂さんのことろからおいでいただいたのでしょうかね。

Kenさん同じく、僕もジャズを聴きはじめたのが81年なので、80年代のジャズに特別な愛着があります。やっぱり感性豊かな10代で聴いたジャズは今でも胸が熱くなります。

僕はヘイデンが苦手なので、「Clossness」などは聞いたことがありません。ぜひ聴いてみたいです。最近はヘイデンへの免疫もだいぶ出来てきましたし。

ということでTBさせていただきます。
今後ともどうかよろしく。
ありがとうございます (ken_jazz)
2010-05-25 00:16:32
中年音楽狂さんのことろから伺いました.
僕は79年春なんです.本当に10代で聴き始めた音楽は格別ですね.未だに70年代後半から80年過ぎに集中するので,びっくりします.
ぼくもヘイデンも久しぶりでした.ヘイデンの作品はメセニーとのデュオとかクリスチャン・エスクーデとかとのデュオは割とナチュラルで好きです.ClosenessはA面だけで,B面の後半の政治主張っぽいのは嫌ですね.リベレイションオーケストラのような政治惹句付は嫌なので(主張内容と関わりなく),聴いていないですね.隠喩であればこその音楽なので.その意味で,ヘイデンはある種の苦手感がありますね.
TBさせていただきます (910)
2010-05-25 17:16:58
どうもはじめまして。

もしかしてkenさんの方からトラックバックをいただいて入ってなかったのかな、と思い書き込みさせていただきます。中年音楽狂さんと同じココログを使用しているので、そのようなことが書いてあったので、状況が同じことがあります。

私が本格的にジャズを聴きはじめたのは’83年のあたりで、しかも当時のジャズに関しては少し後追いだったこともあり、チャーリー・ヘイデンのキースへの参加アルバムはリアルタイムではなかったと思います。

アメリカンクァルテットは好みの問題でしょうが、ECMの録音作の方がなぜか好きだったりします。ミキシングや曲の問題なのかもしれませんが。

今回の新譜はリラックスしすぎるくらいなのですが、こういうECM盤があってもいいな(こういうCDがECMで出せるのもキースの特権でしょうけれども)と思っています。

今後ともよろしくお願いします。
こんにちは (ken_jazz)
2010-05-25 18:22:50
コメントありがとうございます.
Eye of the heartのリリースが79年でしたから(76年録音だけど,まだリアルタイムの残香が微かに),83年ですともう昔の感覚なんでしょうね.若い頃の1年2年は随分違いますよね.またジャズも日々変貌するような時代でしたしね.
ECMで聴くAmerican Quartetはいいですからね.Impulseは冗長で.
今回の新譜も結論は皆さん同じような気がしますね.
TB送ってみます.
ありがとうございました (ki-ma)
2010-05-25 22:42:36
はじめまして、私も中年音楽狂さんから来ました。私のところのコメントとトラバありがとうございました。
私のkeith初聴きはstanders vol.1で、うなり声と魂丸出しの生々しいピアノの音には正直こんなものが売っていて良いのかとまで思ったのを思い出しました(カシオペアとかを聴いていた時期でした)。先日belongingを久々聴いたのですが、keith初聴きの時に感じた妖気を感じました。今回のデュオはなんと言うかその妖気のようなものはありませんね。形を変えているということかもしれませんが、詰まるところkeithは単純にこの時幸せだったんじゃないかなどと思っております(幸せと言うか表現欲求の源が枯れ気味、ストレスが少ない?)。そうなると表現者としてはジレンマがあるかもしれませんが、その状態なりに表現の形を変えるとなると今回のようになるのではなどなど、、勝手な推測ですが。それではまたお邪魔しますね。トラバさせて頂きます。
こんにちは (ken_jazz)
2010-05-26 00:20:58
standers vol.1ですか.僕が急に興味を無くした後だったので,聴いたのは随分後です.また幾つかはトリオを持っているのですが,何故か気持ちが動かない(いいんですが).聴き始めから30年経つと,また聴こえ方が変わるので,聴き直しはじめてるところです.
ありがとうございました (すずっく)
2010-05-27 10:29:14
コメントありがとうございました。わたしは、新潟です。(^^)

ええと、、キースが他のベーシストでデュオってことなら、、あれなんですが、、最近のヘイデンのデュオとか、、タイトルのジャスミンとか、、自宅スタジオとか、、そのへんから、、
なんだか、サウンドはこんな感じなのだろうって、思ってました、、
が、、でも、聴かずにいられなかったし、予想の範囲のはずなのに、しっかりはまってしまい、、しかもある意味「斬新」だったことも事実です。


あちらのコメントにも書きましたが、とっても、不便で面倒で申し訳ないのですが。。
トラバのアドレスはわたしの古い携帯からでは無理なのです。
トラバしたいので、教えてくださいね。これからもよろしくお願いします。

ありがとうございます (ken)
2010-05-27 16:33:50
すずっくさま
コメントありがとうございます.ボクの場合,ある意味でニ十数年の間はkeithは散漫にしか聴いていないので,読みが古いのかな,と思います.TBは以下のとおりです(で,いいのかな?).
http://blog.goo.ne.jp/tbinterface/d6bfa94d564b7035a0b16be988b5fac1/b4
とらば (すずっく)
2010-05-27 18:07:42
ありがとうございました。
面倒ですよね。すみません。
あちらに、書いていただかないとダメなんです。m(__)m
こちらこそ (ken)
2010-05-28 09:31:09
すずっくさま
こちらこそありがとうございました.

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