田園都市の風景から

筑後地方を中心とした情報や、昭和時代の生活の記憶、その時々に思うことなどを綴っていきます。

久留米絣の工房を巡る

2017年06月09日 | 日々の出来事

「絣の里巡りin筑後」という催しがありました。筑後市の久富地区と高江地区には絣工房が点在しています。毎年開催されていますが、初めて行って来ました。車で狭い田舎道を走ります。

 写真は最初に訪問した工房です。自宅が展示即売場で右手の建物が工房です。どの工房も同じようにご自宅を臨時の展示場にしてあります。各工房間にはシャトルバスが運行されていました。常連さんが多いようで、即売場はご婦人方で賑わっていました。

 絣工房です。手織りの織機が並んでいます。若い女性の織子さんがいました。機械織りの工場でも結構若い人がいました。

  染める前の絣糸です。アラソウで括られています。

 この工房は化学染料ではなく、天然藍染をしています。染場には藍甕が十数個並んでいました。阿波藍を使っているそうですが、徳島でも藍を育てる人が少なくなっているそうです。

 藍染をするためには、藍を発酵させた「すくも」を原料にします。そのままでは染色できないので、藍甕で2週間ほどかけて発酵させます。木灰汁などを加えて最初は強アルカリ性にし、最後は弱アルカリ性に持って行くそうです。藍甕の間に四角い木の蓋があります。これは火床で、冬場には火を入れて甕を温めます。染めは薄い色から徐々に濃くしていきます。 

  発酵が終わり甕をかき混ぜると、泡立ちます。

  近づいてよく見ると、光に輝いて宝石のようです。藍色は美しいと実感します。

 左に少し見えているのが洗い場で、染色後、絣糸をよく洗います。手前が脱水機、向こうにある釜で絣糸を煮沸してから藍染の行程に入ります。煮沸は不純物を取り除くためで、煮沸しないと藍甕の中で糸が浮くそうです。

 これは織貫といって、手括りでは出来ない細かい模様を出すために、最初から絣糸と括り糸を織り込みます。柔道着のように分厚い生地になります。染色後に糸を解いて織ります。

 この技法は初めて知りました。工房の方からは見たことがあると思いますよ、と言われました。着物が普通だった時代に作家や学生が好んで着たので、文人柄や書生柄と呼ぶそうです。後でネットで調べたら昔の写真にありました。絵柄ではなく、細かい霜降りのような模様になります。 

 庭では藍染をした絣糸が干されていました。

 藍甕です。人の背丈ほどもあります。キズが入ったものだそうですが、このような大きな甕を作っているところはないので、今ある甕を大事に使っているとのことでした。

  戻ってきて手織りの様子を見せていただきました。

 手前の織機で織っているのは、絣糸が緯糸(よこ糸)だけのようです。経糸(たて糸)と緯糸双方に絣が入っていると、柄合わせが難しくなります。

 絣糸を巻いた管巻き(くだまき)が投げ杼に収められています。投げ杼は直接手で触らず、木の道具でレールの上を左右に飛ばします。機械織りではこの円筒形の管巻きではなく、平たい木のトングと呼ばれるものに絣糸を巻きます。

 織る時は、竹の先にある爪をひっかけて反物をぴんと張ります。柄をきちんと合わせるためです。

 別の工房に来ました。この機械は絣糸の括り機です。文化財の指定条件は手括りですが、商品としてはこういう機械括りも使います。機械と言っても足踏み式の手動です。手括りは大変な時間と熟練を要する作業です。でも機械括りでも技術が要ります。

 機械の右の方に図面を巻いたドラムを据え、何本もの絣糸を括っていきます。括りは絣の出来栄えを左右する重要な工程です

 この工房の染め場です。伺った時、見学者は私一人だけでしたが、実演してくださいました。糸の束を手鉤で藍甕に漬けます。

  引き上げてから竹を使って絞ります。

 そして甕の間にある窪みに叩きつけます。藍は酸素に触れると発色します。叩くと糸が膨らみ、空気に触れて発色が鮮やかになります。簡単なようですが、なかなか難しいそうです。久留米絣は括り、藍染め、織りと、それぞれに技術保存者と技術伝承者の有資格者がいます。染めは30回ほど繰り返します。

  染めた後に洗い、脱水します。

 この絣糸は薄い中間色が出ています。これは染めの行程の途中で括りをほどき、さらに染めを続けていきます。

 この工房では古典柄も作りますが、商品として売れるためにはデザインが大事だということでした。

 重要無形文化財としての久留米絣は、一反を仕上げるのに熟練者でも数か月かかります。毎年50反しか製作されず、私が買えるような値段ではありません。しかし日当に換算すると当たり前のような気がします。

 絣は化学染料で機械織りでも、お洒落な衣料として根強いファンがいます。私も家内もそれなりの値段の絣愛好者です。

 

 

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2 コメント

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有資格者 (tango)
2017-06-10 20:15:03
凄い技術ですね
九州様が詳しく説明してくださるので
大変さと高級感を味わうことが出来ました
お高い久留米絣は買えません・・・
でもほしいです!(^_-)-☆
テレビで見ましたよ~~
いい報告ありがとうございます
tango様へ (九州より)
2017-06-10 21:36:22
今晩は。
もともと久留米絣は野良着や作業着でした。
伝統的な技法で作ると、お高くなります。
私は機械織りで十分です。
十数年前に買った、
夏の小紋絣の半袖シャツを今でも愛用しています。

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