読書ノート  

主に都市、地域、交通、経済、地理、防災などに関する本を読んでいます。

ブータンの小さな診療所 坂本龍太 2014

2017年02月21日 | 海外事情・国際関係
 今や日本ではブータンは「幸福の国」としてよく知られている。ブータンの人々は素晴らしい、今のままで変わらないでいて欲しい、と言う人もいる。この本の著者もブータンでたくさんの感動をしてきた。
 しかし、ブータンが変わらなければいけない理由がこの本からもうかがい知れる。
 例えば、
・医療は無料だが、国が貧しいために薬を十分に買えない。診療所にはレントゲンも心電図もない。CTは首都にしかない。(2010年の話)
・頭部に大怪我をした3歳児を街の病院に運ぼうとしても、道路事情が悪く、通行止めとなり、救急車も来ない。

 誰もが認める幸福の条件=健康に長生きを実現するためにも、国がもっと豊かにならなければいけないし、また道路の整備もしなければならないだろう。経済成長と幸福最大化は矛盾するものではない、と私は思う。もちろん、幸福最大化が究極の目的であり、経済成長はそのための手段の1つである。経済成長は最終目的ではなく、唯一の手段でもない。しかし、重要な手段の1つだろう。

 著者はブータンにあこがれた若い医師。地域在住高齢者の保健管理を目的とするプロジェクト計画書をブータン保健省に提出し、訪問・滞在許可を得た。
 滞在期間は1年、滞在先は空港から車で山道を3日走ったブータン東部タシガン県カリンの診療所。「幸福の国」の現実は甘くない。暖かいシャワーは期待できず、ダニには慣れるしかない。

 受入れた保健省や村役場や診療所の人の言葉は、率直であり、かつ意義深い。
「老人が検診に集まるというのは難しいだろうな。しかし参加者に褒美を出すようなことはやめよう。健診の意味を徐々に理解する人が増えて、段々と広まっていけばいい。」
「日本から持ってきた薬はできるだけ使用しないでほしい。たとえその薬に効果があったとしても、値段が高いと国がその薬の調達を維持できなくて困ることがあるから。」
「あなたの知識と技術をシスター(診療所スタッフ)にしっかりと教えてほしい。そうすれば彼女が未来のブータンの助けになるから。」

 著者は村の長老たちに健診計画を説明し、日常の診療に加え、山奥の出張診療所にも出向き、人々に予防医学の重要性を説き、診療所スタッフやボランティアと協力して7日間の高齢者健診をやり遂げた。地域に住む高齢者の8割が参加した。
 高齢者健診の効果は保健省に認められ、国の計画にも盛り込まれた。

 支援する側の心構えも勉強になる。
・現地のニーズに応えるものでなければならない。
・現地の習慣を理解する。
・不便を受入れ、工夫して解決することを楽しむ。
・自分の仕事の目的を説明し、その意義を理解してもらう。
・意見の相違を、お互いの考えを共有し調整する機会を得たと捉える。
・自分の知らないところで自分を支えてくれている人がいることを思う。

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