読書ノート  

主に都市、地域、交通、経済、地理、防災などに関する本を読んでいます。

なぜ貧しい国はなくならないのかー正しい開発戦略を考える 大塚啓二郎 2014

2017年01月03日 | 財務・経済産業

開発経済学と開発援助の第一人者による、研究成果を土台にした「入門書」。

私が今まで理解していたことが裏付けられた点
・1人あたりの所得は、経済的な豊かさを示すだけでなく、乳児死亡率、平均寿命、教育水準などの「人生の質の指標」とも密接に関係している。
・就業構造が、農業から工業、さらにそこからサービス産業への比重を移していくにつれて、貧困者比率は低下する。就業構造の変化とともに労働報酬が高まることが、その大きな理由である。したがって、貧困削減のためには産業構造の変化とそれに伴う就業構造の変化が重要である。
・労働集約的産業→資本集約的産業→知識集約的産業の発展という「雁行形態論」的発展経路をたどることなく経済発展に成功した国はないといっても過言ではない。
・東アジアの発展の秘訣は、(1)海外から学ぶこと、(2)身の丈に合った産業の発展を推進すること、(3)教育を充実させることである。
・農業の発展戦略 知的資本の向上:技術移転・技術開発→人的資本の向上:技術・栽培方法の普及→インフラの整備:灌漑、輸送・通信インフラへの投資→物的資本の充実:信用の供与と支援
・工業の発展戦略 知的資本/人的資本の向上:研修と教育による海外からの技術・経営方法の導入→インフラの整備:工業区の建設(集積の強化)→物的資本の充実:信用の供与と支援
・経済発展のためには、社会関係資本、人的資本、インフラ、物的資本、知的資本の蓄積が必要。市場メカニズムを活用しつつ市場の失敗には対応策をとる。どの産業も発展のための基本戦略は同じ。

これらは、当たり前と言えば当たり前で、開発経済学以前に経済学の常識でもある。しかし当たり前のことは話題にならず、経済学の常識は世間の常識ではない。ともすれば「GNPよりGNH(国民総幸福)が大切」とか「農業は大切」「都市化によって様々な問題が起こる」といった言葉が人気を集め、それらは間違いではないけれども、この本に書かれている基本を踏まえた上でいうべき言葉だと思う。

これに対し、第6章「途上国がしてはいけないこと」には知らなかったことの発見があった。①小作地を地主から没収して小作人に移譲する、②大規模農家は維持発展させる、③森林については社会林業を推進する、といった一見開明的な政策には落とし穴があり失敗の実績がある。①には地主が自作農を装うため小作人を追放し小作人は農業労働者に転落する。②は途上国の大規模農業にはスケールメリットはなく、自由競争ではなく権力によって構築されたもの。③森林や共有地の管理については、過剰採取の防止は集団で、しかし樹木の管理は個人にして世話をするインセンティブを与えるべき。

この本に書かれていることのうち、アジアの経済開発についてはバングラデシュなどを含め正解が事実で示されているが、アフリカの経済開発と第8章国連ミレニアム目標については、まだまだ決め手となる処方箋がなさそうだ。
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