渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う

息吹を!

2010年11月03日 | 刃物

先週のこと、友人から頼まれごとがありました。

お父上が30年以上前にハンターだった頃に愛用して
いたナイフだそうです。
友人が子どもの頃、父君から譲り受けた物で、かなり
使い込まれていますが、暫くしまったままだったらし
く、錆がかなり出ています。いわゆる赤イワシの一歩
手前の状態です。
「またこいつに命を注ぎ込んでやってくれませんか」
とのご依頼。
そういうことならば、喜んで一肌脱ぎます。

サンドペーパーでこすって赤錆を落としてみると
ようやく刻印が読めました。

Original Trapper Knife
hand made in Solingen Germany
と彫ってあります。ドイツのゾーリンゲン製の手作り
ナイフです。鋼材は炭素鋼でしょう。

両刃ではなく峰をつけています。


全体をペーパーで時間かけて丹念に錆落としをしました。

表面上の酸化第二鉄は除去できましたが、かなり深い錆
が鋼材に食い込んでいます。また、安定定着した黒錆と
なってまだら模様に平地に広がっています。ここから先
は砥石で押すことになります。

状態をよく観察して、研ぎに入ります。
切りと筋違いで交互に押して行きます。鎬(しのぎ)が
完全につぶれているので、やむなく、金剛砥まで下げて
若干の整形をします。

その後、大村砥で整えていきます。大村砥は墨の粉と
土とを混ぜて焼き刃土を作るときにも使います。

さいてを巻いて押します。


だんだん鎬が立ってきました。食い込んだ深い錆は
完全に除去すると刀身がかなり薄くなってしまうので
適度なところでとめるようにします。


鎬線をはっきりさせるため鎬地を軽く磨きます。

この後、名倉砥に番手を上げ、さらに番手を上げて
鎬地を蹴らないように鎬を作って行きます。
日本刀の場合は名倉は「タツに突く」という方法で
刀身を縦にしゃくるように突いて肌を起こすのですが、
ナイフですので角度を決めたら一定に押して研ぎます。

かなりはっきりと鎬が立ってきました。


こちらはまだ整形していない表側。鎬が完全に
潰れています。古い研ぎの砥石目が見えます。


こちらは砥石をあてた裏側。

まだ、細部修正が残っていますが、ここで裏研ぎから表
の研ぎに移行し、細部仕上げは表裏一体で行ないます。
本日はここまで。

研ぐと錆び易くなりますので、次の研ぎまでの間、
刀油を引いて表面が空気に触れないようにしておき
ます。

ここまでの所要時間7時間。(1日1時間~2時間毎)


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