渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う

鐵を探る ~クロガネの男の拳がある~

2012年01月23日 | 日本刀

ぶひ~!
面白いサイトみつけちゃった。

刀匠大野兼正氏は自家製鉄を手掛けていたが、その心は脈々と
うけつがれている。

こちらのサイト⇒兼正流小だたら製鐵

驚いたのは鉄穴流し(かんながし)まで実験している。
こりゃすごい!


それで出来た自家製鉄で作った日本刀はこちら。

おお~!なんちゅう精良な地鉄なんだ!
いいね~。とてもいい。


で、このサイト見ていて、個人的に別回路でかなり萌えたのはこれ。

いや、なに、このフォントなんだけどね(笑)
これ・・・明らかに昔の大学によくあったカクメイ的なお兄さんたちが書く
タテカンやビラの文字そのものなのよ(笑)
見る人が見れば即座に判る(苦笑)
こういうフォントってあるんだね~。知らなかった。
10年ほど前に共産趣味者の間で趣味的にPC用ゲバ字フォントが作られたと
いうのは都市伝説として耳にしたことがあるが、ここまで完成度が高いと
マジ笑える。
1980年頃までは、日本国内の大学にはこの字体があふれていた。
むろん、1970年前後には全国の全大学でこの系統の字体だらけだ。

東大全共闘(全学共闘会議)のタテカン(立て看板)

当然、70年代に大学に入学した私も学生時代には原稿書きやハケを使っての
看板文字書きはこの字体だった(苦笑)。
レジュメも試験の解答も全部この字体。筆使っての手紙の時だけ純和風の字体。
笑える、このサイトでこの字体が出てきたことは。
でもね、実はこの左巻きのフォントは何も全学連や全共闘のあんちゃんたちが使い
始めたんじゃないのよ。最初に使ったのは、実は旧日本軍だったりする(笑)
皇軍のプロパガンダのポスターや翼賛会などはこの系列の原初的なフォントなの。

戦時中の大政翼賛会のビラ。
字体といい、言い回しといい、その後の新左翼そのものだ。


国論を二分した60年安保(現実的には国民の7割以上が
安保反対だった)から7年後、そろそろ「ゲバ字」として戦前
の字体が復活し始める。使ったのは右翼ではなく新左翼だった。
これは1967年10.8羽田闘争(通称ジュッパチ)に向けた
中核派のビラと同闘争で機動隊との衝突で死亡した京大生
山崎君虐殺抗議のビラ。字体や言い回しは上記大政翼賛会
の国粋主義的右翼ビラとそっくりである。
1967.10.8羽田で反日共系全学連は学生運動史上初めて防具
としてヘルメットを被り、武器としてゲバ棒と後に呼ばれる角材を
持って街頭に登場した。以降、数年はこのスタイルが権力に抵抗
する学生スタイルとなっていった。
(後に日共、社会党、右翼も被る。ただし日共は反権力闘争ではなく
新左翼襲撃のためだけに黄色ヘルメットを被り、新左翼のような
折れやすい杉角材ではなく、釘を何本も打ち込んだ樫の棒を
襲撃部隊全員が所持した。反スタ(反ソ連)主義である新左翼を
襲撃するソ連派スターリニスト日本共産党の実態が如実に表れて
いた)
後に無党派である全共闘もこの反日共系全学連ゲバスタイルを
踏襲していく。組織温存路線のセクトよりもノンセクトである全共闘
の方が時には過激であった。彼らは「ノンセクト・ラジカル」と呼ばれた。

1968年当時の大学生の一般的スタイル。無党派でも「反スタ」が
主張の根幹だった。反スタ(=反ソ連)は反権力の一環でもあり、
そうした地平においてアメリカやフランスの学生たちとも連帯が
克ち取れていった。1960年代後半は西側先進国のほとんどの
国で「異議申し立て」と戦後地球上で最悪の戦争であるベトナム
戦争に反対・抗議するムーヴメントが広がった。ビートルズなどの
ポリシーもその延長線上にある。
日本全国で数十万人の学生がこのスタイルで抵抗運動に参加した。
紛争大学数は全国で260校を優に超え、学習院でさえ全共闘が
結成されていった。

戦時中の檄文用・プロパガンダフォントは、それが1970年前後に亡霊のように
新左翼学生たちによって復活させられたという歴史の皮肉。
おもろいね~、文化史ってのは。
そして1970年頃には学内の右翼が出すタテカンも左翼の字体とさして変わら
なかった。
三島が死んだ直後に右翼が出したタテカンは普段敵対する新左翼によっても
撤去行使はされず、新左翼学生たちも頭を垂れて瞑目して哀悼の意を表した。
(否定的だったのは現世を変えたくない日本共産党くらいではなかったか)

早稲田大学内に出された右翼のタテカン(立て看板)。
三島を別人名に、狂気を「パトス」に、昭和維新を「プロレタリア
日本革命」と入れ換えたら、まったく新左翼党派(というよりも
東大や日大の学内の壁に書かれた無党派学生の独白落書き)
のセリフになるというロジック(笑)。
右と左(既成左翼でなく新左翼)は実は180度方向を大旋回
ループしてつながっているということを感じ取れるだろうか。
三島は東大全共闘との討論集会にも出席していた。
右翼タテカンの実力撤去行使を新左翼があえてしないところに、
日本が敵兵皆殺し切り捨ての「チェス」ではなく「将棋」の国である
ことがうかがい知れる。
敵将を総殲滅皆殺しにするのでなく、人材を活かすためには
過去の立場は問わないということにみられる日本の独自性、
欧米や中国朝鮮と異なる精神特性は、決して「(ソ連型)共産主義」
や「帝国主義的全体主義」や「ファシズム」や「ナチズム」とは
相容れない日本人の「和」を尊ぶ歴史的国民性のように思える。
私はそこにこそイデオロギーを超えた日本人のアイデンティティと
日本の「美」を見る。

文字の字体に代表されるこうした文化は日本独特のもののような気がする。
仮名文字が女文字であったことが遥か昔の時代となってから以降は、イデオロギーを
超えるという点で、字体というものはどこか一方の勢力の所有物ではないという側面
において日本独自の文化であるし、字体は階級性を持ちえないことの証左だとも思える。
こういう文字文化のグローバリズム(本来の意味のグローバル)というのは、アメリカや
イギリスやフランスには存在しないのではないだろうか。敵味方関係なく、総体を
包むものとして日本人には源平の頃から旗を愛する文化があるように、字体や文字
そのものを慈しむ文化は、日本人全体を包む文化として培われてきたものである
ように思える。表意文字でない欧米は早くからタイプライターだしね、手紙も。
日本でも最近は封書の中の私信さえもワープロ文字で済まそうとする人がいたりして、
なんというか、美しくないなぁ、と思う。文字の上手い下手ではなく、肉筆文字で
相手に伝えることが日本人の心であり礼儀のような気がする。

ところで、文字といえば、「鉄」という字はやはり「鐵」の方がいいと思う。
「鉄」というのは「金を失う」で、「鐵」は「金の王なり」だし。
しかし、江戸時代の刀のナカゴにも「鉄」という字は使われたりしているから、
あながち最近使われだした漢字という訳でもないみたいよ。
画数が多くても、「鐵」の方が本来の意味を体現していていいなぁ、俺は。
この製鉄サイトはあえて「鐵」を使用しているところに、産鐵者としてのポリシーが
見えるよ。

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