渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う

江戸時代の鉄 黒田公の鉄

2017年02月11日 | 火と土と水、そして鋼




江戸刃物師である左久作池上の兄様から、驚きの物を頂いた。
買おうとしても買えない。まず、市場には出ない。
伝統刃物鍛冶の鉄のプロだから手に入れられた江戸時代の釘である。
釘といっても短刀くらいの大きさがある。
これだけで武器になりそうな。
長さ9寸はある。
斬釘截鉄を禅語だと知らず、「普通の刀なら釘位どれでも切れるのに
こんな銘を入れて」と嫌味を言った刀工がいたが、江戸時代の屋敷の釘
とはこれだ。これがご自身の作で切れるとでも?
これでひっぱたいたら頭蓋骨陥没するような釘だよ。というかこれが釘。
だからこそ斬釘などと禅語でも言われた。簡単に切れる物を喩えには
使わないだろうに、二重の意味で物事が解ってない。
「斬釘截鉄」の禅語は「虎徹」と同じ原意で、「貫き通す意志の強さ」の
ことを表している。

これは、筑州黒田藩の藩主黒田公の御屋敷で使われていた江戸時代の釘だ。
建物解体の際に出たものを人を介して左久作池上兄様の所に来た物だ。
出処確か。鉄の質も頗る良い。
池上兄様は、一部を火花試験したが、「未知の鉄」とのことだった。
左久作工房は、国内で一番和鉄の保有量がある。日本で一番ということは、
世界で一番ということだ。
その池上兄様が「未知」という鉄。質は良い。だが、謎の鉄。
黒田の殿様の御屋敷に使われていたという稀少な来歴もさることながら、
鉄質がこれまでに見たことがないような鉄だという。
池上兄の所見は以下だ。
「慶長年間前後かと考えています。確固たる証拠があるではないのですが、
鉄肌がざっくりで穴のあけ具合に精緻さが無いのです。とにかく穴をあける
事に追われたって感じ。江戸時代になるどほとんどの穴は、スコーンと同じ
大きさに見事にあけられるようになり、なにかしらの技術革新が行なわれたと
推測できます」
鉄に関して池上兄の知見は信用できるので、識者の一つの所見としては、
やはり慶長あたりの鉄といえるのではなかろうか。

二つ頂いた。
一つは桐箱に入れて、黒田藩の家老を先祖に持つ方に来歴の添え書きを
して進呈しようと思う。
もう一つは、うちの家宝にする。

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