渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う

切り損じ

2016年09月15日 | スポーツ・武道など



うを新先生は、試斬稽古の際に康宏で一太刀切り損じたらしい。
刃筋が狂い、畳表の途中で刀身が停止したという。
「え?刀曲げなかった?」と私が問うと、「ええ。何でもその
魚屋は渓流先生という人から教わった切り方で、切り損じた
瞬間に▽■△×%&~P-をやったんで、刀身は何ともなかった
みたいですよ」とのことだ。わひひ。

実は、切りに関しては、これは修心流の町井勲先生もそうだ
が、練達者
は「あること」をやっている。
これは多くの公開されている動画を熟視すれば読み取れる。
要は「見る目があるかないか」と、「それの本旨を理解して
工夫して体現できる力があるかどうか」ということだろうと
思う。
私は町井先生に見抜かれたことがある。
「やっぱり渓流さんは据え斬りができるんだぁ・・・」と。
町井先生とのつきあいはかれこれ6年程になるが、なぜあれ程
の腕を持つ町井先生が私などと違和感なく接してくれるのかを
尋ねたことがある。
すると、「僕と同じ斬り方をする人を初めて見たから」との
ことだった。
その時、私は言った。でも、斬り始めた時期は私のほうが先
ですよ~ん、と。だが、開始時期の問題ではない。密度と進化
の問題だ、術の会得というものは。やり始めの時期のみを
言ったら、私などは本当は居合のほうもとうにもっと高段者
の免状を取っていないとならない。居合開始が平成元年なの
だから。だが、たとえどんな理由があるにせよ、稽古を長期
に亘り「停止」したことは、錬度の深化の不在が生じる。
要するにサボっていて進歩はあり得ない、ということだ。

真面目な話をすると、うを新の刃味タッチを掴み取る感性は
かなり鋭敏で、微妙な刃味と切れ味の違いを体感で察知する
能力を持っている。
こういう人とは、包丁や一般刃物の研ぎの話をしていても楽
しい。
「個体差」とそれについての対処や方針を選択する抽斗を
沢山持っているので、やはり「わかる男」との話は面白く
ないはずがない。

私は全剣連だけではなく、別団体や別流派の剣士たちとの
交流も多いが、いろいろな視点やアプローチを知ることで
とても勉強になる。私が自分の流派と所属連盟だけしか知ら
ない狭いところでの判断から脱して視野狭窄を忌避する視点
を持ち得るのは、多くの方々の教えや導きのおかげだ。
そもそも、私の居合の師匠自身が、別団体や別派との交流で
学ぶことを私にも許可してくれていた。これは私は死ぬまで
生涯師匠の直門弟子である、という確固たる部分があっての
ことだろう。
私の師匠も、康宏作を20数年前に注文して差料の一つにして
いる。道場の人たち数名と墨田区の鍛人に行って、直接小林
直紀刀工と面談して仕様を決めたのが懐かしい。
(結構ざっくりした注文だった。「長さはこれで反りは浅めで」
というのみの)
修心流の町井先生については、引退していた康宏の作刀復活
プロジェクトの話が具体化する前に、真っ先に注文の声を
かけてくれたのが町井先生だった。
町井先生の注文も当初はざっくりしすぎていて、「長さ二尺〇
寸から〇寸五分くらい、反りは浅めで」というものだった。
さすがに五分違うと1.5センチ違うので、申し訳ないが細かい
寸法出しをしてもらった。
存外、剣法練達者というのは、差料の長短や寸法等には細か
すぎるこだわりというものは持たないのかもしれない。
よくよく考えれば、私もある面「長さは大体これくらいで」
という程度で、あまりこだわらない部分はある。
もし、戦国のイクサ場だったならば、状況如何では敵の武器
を奪ってでも状況を突破することも問われることになるのだ
から、いくら自分の差料といっても、大切なコレクションの
ように捉えて心が居着くことはよくない事なのかもしれない。
AK-47のようにどんな状況下でも絶対作動を約束するような
刀にはいくら絶大な信頼が置けるとはいえ。
しっちゃかめっちゃかの乱戦では、綺麗事など通じない。
大昔、私がある闘技の訓練を受けている時、「こういうケース
ではどうするか」という出題があった。私は、「たとえ歯が
折れるまで噛みついてでも□△×を%$~する」と答えたら、
教官は「合格」と言った。

刀の切れ味の話に戻すと、うを新が言っていた。

「日記に魚屋からの伝言として書いといてください。『いくら
別次元の切れ味を持つ康宏作といえども、刃筋が狂ったら康宏
でも切れないよ』と」
そりゃそうだ。当たり前だのクラッカー(古過)。

うを with 康宏斬釘截鉄剣



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