渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う

小林康宏日本刀鍛練所合宿 1日目 ~その2~ 刀剣観賞会

2017年05月04日 | 火と土と水、そして鋼



昼食後は刀剣観賞会です。
二代目小林康宏6口、藤安将平1口、上田祐定1口。
私個人は、上田祐定作大刀二尺三寸四分に瞠目した。
なんだか作から伝わる魂のようなものがあった。

一番笑えたのは、極上研ぎをかけた二代目康宏の短刀で。
直紀先生曰く「上手いね~。これ誰の作なの?」と真顔で
訊いていたこと。「先生のですよ」と言うと、「いや、違うよ。
俺こんなに上手に造れないもん」とのこと(笑
何を言ってるのかねぇ。あなたの作ですよ、貴方の!

要するに、康宏の場合、打ち下ろしからせいぜい抜刀研ぎ
というのが圧倒的大多数なので、無鑑査の研ぎ師の先生が
極上研ぎをかけるなどというのにお目にかかったことがない
のでそういう事態になったのだ。
その無鑑査の研ぎ師の先生も、現代刀の新作刀の打ち下ろ
しから研ぐのは初めてとのことで、ことさらに入念に研磨が
施された。
私も出来上がりを見てぶっ飛んだ。これはまるで粟田口である。
作者本人が「私はこんなの造れない」というのもよく分かる(笑)。
研ぎもあるだろうが、まったく以て、現代刀にはひとつも見えない。

ここで、「何だよ。康宏てのは研ぎ上った自分の作品を観た
こともないような奴なのか」とか思ってはいけない。
小林康宏は美術刀剣製作者ではないのだ。
短刀でも、造るとしたら通常は鎧通しだ。そして研磨は極上
美術研磨などほぼしない。

今回のこの短刀については、注文主の友人が絞り込みをする
のに、私も協力させてもらい、いろいろモデルケースを引っ張って
きた。
実際のところは、この作の寸法出しとイメージで私が持って来た
資料は国宝の厚藤四郎(1290年前後の人)だった。
持ち寄られた刀剣群の中では、焼き詰めの刃と極小小杢目の
鋼肌(鍛造折り返しの鍛接面ではない本当の肌)を持つこの短刀
が頭抜けていた。飛び抜けて出来が良かった。

長物の大刀のほうは、康宏、将平、上田祐定という国内切れ物
三作を同時に観賞できるというラッキーな機会に恵まれた。
年齢は康宏が戦時中生まれで、藤安氏と上田(うえた)氏が小林
直紀康宏の2つ年下の同学年のようだ。
ただ、刀工になったのは藤安、上田両氏のほうがずっと早く大先輩
である。小林直紀康宏は岡山の安藤広清刀工と同期で、初代康宏
に学んだ。
二代目直紀康宏は、実父ながらも仕事の話で先代を呼ぶ時には
「先生」と呼んでいる。その他のプライベートな件で呼ぶときは「うちの
親父」と(^^;
でも、それは刀鍛冶としての一つの師弟制を見るようで、私は身が
引き締まる思いでそれを聴いている。

刀剣観賞会は刀剣学識レクチャーなどはしません。
純粋に皆さん全部の刀を観て楽しんでもらう、というものです。
これもたっぷり時間をかけて観賞しました。

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