渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う

「ナイフ販売するかも」というお話

2017年05月17日 | 刃物

「ナイフ販売するかも」というお話


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しかし、鉄板削り出しでナイフを作るストック・アンド・
リムーバル方式で「型」を使うシステムを考え出した
ボブ・ラブレスは偉いと思う。
あれによって、世界の中で素人でも削り出しでナイフを
作れることが広まって定着したものね。
それまでのアメリカンナイフはトンテンカンの鍛冶屋さん
方式だった。
1970年代から1980年代にかけては、人類史の中で刃物に
ついて革命的出来事があったということなんだよ。


でも、実は日本は早くから包丁と簡易実用ナイフの分野で
鋼材打ち抜き削り出し方法での製法を確立していた。
ラブレス方式の製作方法は、いわば逆輸入のようなものだ。
日本刀は鋼材打ち抜き削り出しでは製作ができないが、
ナイフの世界ではラブレス方式が一般化している。
単に削りといっても簡単ではなく、仕上げの完成殿高さは
技術がないとできない。
カスタムナイフと呼ばれるプロメーカーは、いわば「削り屋
さん」とも呼べるほどの高度な研削技術を有している。まるで
3Dマシンで作ったような造形美をプロナイフメーカーは見せる。
作業自体は一般売りのマスプロナイフと違わないのだが、二つ
を並べると職人塗り箸と割り箸ほどの差がある。

しかしまあ~、この動画の鉄板鋼材のでかいこと。
業者用ではなく一般にもこんなの売ってるの?
知らなかったよ~(笑)

私も以前は一般鋼材の削り出しでナイフを作ってはいたが、やはり
鍛造刃物に回帰してしまった。
一番の原因は、「熱処理」という刃物にとっての最大の命を吹き
込むクライマックスを人任せにするのが嫌だったのと、はたして
それは個人的な生産レベルでの「自作」と呼べるのかという疑問
があったからだ。

工房や工場生産ならば、熱処理を別業者もしくは別人に委託依頼
担当させることもありだろう。
しかし、個人的な製作としたら、刃物にとって最大の最重要部分
を人任せというのはどうなのかと私自身は思う。
だが、現代特殊鋼は熱処理に厳密な温度管理が必要なので、個人炉
での熱処理を困難にしている。
〇〇℃で5時間保持とかそんなの個人炉ではできないもの(笑
ソルトバスなどの熱処理専門業者による現代科学的な温度管理
設備でないと現代特殊鋼の熱処理はできない。特にステンレス鋼
などはそうだ。

炭素鋼の切れ味は格別だが、金属自体の良否で言ったらステンレス
鋼のほうがあらゆる面で炭素鋼を凌駕している。
また、炭素鋼でも、昔の製法の炭素鋼よりも現代鋼のほうが金属的
には生産性から質性からすべての面で優れている。
玉鋼で東京タワーも戦艦も作れない。
金属の良質性のみをみたら、玉鋼は現代鋼に太刀打ちできない。
だが、玉鋼のようなたたら鋼は、それしか鉄を生みだす方法が
なかった時代にあってはお宝のような神々しい鉄だったのであり、
その最良の鉄を昔は使用した。(るつぼ鉄はここでは割愛)
しかし、現実としては、たたら鋼は現代特殊合金にはすべての面
で勝てない。昔の刀鍛冶の時代に現代特殊合金があったならば、
彼らは迷わず全員が現代特殊合金を使ったことだろう。鋼として
優れているからだ。

前述したが、ところがどっこい、現代特殊合金は工場での熱処理
以外は困難(やりこなすツワモノ個人ナイフメーカーもいるが)
であるという条件が立ちはだかる。
ステンレスを鍛造してモノにしてしまうという、日本で唯一
現在も木製シャフトのピッケルを作っている名人二村氏など
の存在は稀有中の稀有であり、ナイフメーカーでもSUS材を
自家処理してしまう服部氏などは特異な存在なのである。

自作刃物といってもね、いろいろ大変なのよ。
一番簡単なのは炭素鋼の鍛造刃物だが、これまた簡単なのだけど
奥が深くて一番難しかったりする。
いうなれば炭素鋼は注文建築の在来工法の大工さんの仕事みたいで、
S&R方式の削りナイフは2×4の即行建築みたいな感じ。

会社の周囲に新築戸建て住宅が乱立した時期があった。
2×4の建築方式でも、あれ、施行者によっていろいろなのね。
まるでド素人のような人がパンパンと道具を使ってデタラメ?
みたいに見えるやり方で作った住宅もあれば、同じ2×4でも
とても丁寧な仕事でびっくりするような住宅があったりして。
それが向い同士で経っている(笑)。
住宅を買われて入居された人たちは、自分たちの家がどのような
手法で建てられたか分からない。

私の首都圏での家など、かつての在来工法の時は、たとえ建売
住宅でも、建築前に契約するので途中の建築経過を見ることが
できた。私の家は首都圏では二軒一戸建てを父が建てたが、その
どちらも何度も建築途中で見に行った。ムネアゲで棟梁が高い
所に乗って何かオヒネリのような物を投げて、近所の子どもたち
が集まってそれを喜んでキャッチするという、当時よく見られた
光景が我が家の建築の際にも見られた。
うちの家の建築途中で面白いことがあった。余所で削って持って
きた材料(梁?)が3センチほど短かったのだ。(多分違反の旧法
で棟梁は仕事していた。当時の職人はふざけんなと尺貫法施工後も
新法に反発して旧寸法計算で仕事することが多かった。だが、一時
期見せしめのキリシタン刈りのように大工たちに逮捕者が出た。
うちの数件隣りの大工さんも逮捕されてしまった。これも日本の
表には出てこない歴史だ)
その寸法間違いの材料を前に棟梁はかなり現場で落ち込んでいて、
「っしょう。オシャカかい」と言ったのを子ども心によく覚えて
いる。本当にかなり落ち込んでいた。有り得ないミスだったのだ
ろう。もしかしたら住宅の通し柱と並ぶ根幹部分の材料だったの
かもしれない。

自作刃物でS&R方式は誰でも手が出せる。
しかし、熱処理に関しては人任せだ。刃物の最大のクライマックス
の瞬間に製作者本人が関与できないという最大の欠点がある。
鍛造刃物は熱処理をすべて自分でこなせる。ここが最大の魅力だ。

だけどね、小さい刃物ならば、炭と七輪があれば炭素鋼は焼き入れ
ができるのですよ(^^)。戸建住宅ならば庭先で。マンションは
ベランダ蛍族も最近締め出しくらう位なので絶対に無理だけど。
七輪で鍛造さえもできる。
以前『ナイフマガジン』(廃刊)でそのような特集もあった。
鍛造自作刃物は1990年代末期から流行し始め、カスタムメーカー
も鍛造に挑戦することが流行り出した。

あの頃からなんだよなぁ・・・変なグロテスクなダマスカスなる
物を「日本刀のような」と嘘ついて業者がキャンペーンし始めて
多くの人たちが騙され始めたのは。
ダマスカスなるものが日本刀の地肌と異なることは、本物の日本刀
を見てみればすぐに判るのに。
便乗嘘宣伝商法というもので、虚言をあたかも本物であるかの
ようなイメージ戦略で売るという徹底した商業主義なのだが、あまり
そういうやり口はクリーンではない。
その後笑えるのが包丁業界が追随して、積層の利器材を予め作って
それを「日本刀の伝統製法を受け継いだ」とか言い始めた。なので
ダマスカスとか積層の包丁はばんばん売れている。

先日回転寿司に行ったら、私の事を日記で知っている副店長が話し
かけてきた。「普段から尊敬してます」って、よせやいと思うが、
「刃物については私の先生と勝手に決めてます」と言ってた。
その副店長が「ダマスカスの包丁って意味はなんなのですか?」と
尋ねてきた。
「意味は販売価格を高額にしてもイメージで売り切ることができる
商品」と答えた。あくまで私見だよ、と付け加えて。私の意見でよい
のなら、私の意見を述べましょう、と。

「性能的には?」と問うので、「フラックスを噛ませる分、一枚物
よりもずっと耐錆性は劣る。切れ味はどちらも同じ」と答えた。
日本刀の場合、硼砂沸かしは刀身によくないという説もあるが、それ
は一概にそう決め付けることもできず、泥と藁も実はある元素の
化学変化を利用した古代鍛接材であるのだし、表面脱炭を防ぐため
だけの目的ではない。あきらかに接着剤としての効果も得ている。
硼砂も使用法によっては
糊の役目として大いに利用できるものだ。
なぜならば硼砂を利用すると低温での鍛着が可能になるからだ。
小林康宏は完成品の削り粉を混ぜた自作硼砂鍛接材も場合によっては
使用する。

ただし、一般の包丁製品などで、包丁やナイフの利器材では、折り
返し鍛造ではなく面鍛着させるためだけの目的でフラックスが
使用
されるので、現象としてそこだけ錆びやすくなる。ノリが消えずに
残っている現象がそこに残存する。トラックなどの工業製品の電気
溶接などで、溶接のフラックス部分から出錆が発生する現象と同じ
ことが刃物において起きているのである。

事実、ダマスカスなる包丁は、特にステンレス割り込みを高級物と
して謳っている製品などは顕著に鋼の挟み口(かいさき)がすぐに
錆びる。
包丁のダマスカスは「錆びやすく、日本刀とは製法が異なる、ただの
高い商品」でしかない。ナイフも然り。私などは「騙すカス」なの
ではとさえ思っている。
ところがそれが飛ぶように売れる。まるで本式の一枚物ナイフや包丁
があたかも「安物」で各下であるかのように。
大衆とは、そうしたものなのかも知れない。本当のところを見抜く
ことが不得意だ、というような存在なのかも。
さしあたって、ダマスカスの意味は、性能的には皆無である。

みんな乗せられてるなぁ~。商業主義的な売らんがなの商人たちの
手練手管に(^^;
そりゃそうよね。深夜の通販番組やアキバ駅前の街頭製品売りの
ようなのって詐欺まがいなんだけど見抜けなくて良い物だと思って
買ったりするものなぁ(^^;
アキバの包丁売り見てて「あ~あ」と思ったよ。
良く切れる包丁てなことで太い電線切ったりしてもトマトもスライス
できるとかやってたけど、切る包丁の刃の部分がちゃうやんけ!と(笑
そりゃ刃は潰れないから切れ味落ちないやい、てなもんでね。
ところが口上巧みに素早く切る実演を展開するから、衆人たちはオオ~
などと感嘆の声を上げる。大道芸というのはこれは一つの芸だね、と
その時私は思った。人を騙す手練手管を持っている、と。

ガマの油売りなんてのは封建時代の大昔からその典型だろうね。
あれは人を欺いてその気にさせる一つの芸です。騙しが上手い。
そんでもって、とどのつまりは「騙されたほうが悪い」というスタンス
なのでしょうが、彼らも売り込んで食うのに必死だったのでしょう。
門つけや口上願人と同じく、演劇系職能を独占していたので、演技
には自身があるしお手の物だし、職種は限定されていたから、その
中で収入を得るために編み出さざるを得ない。見世物小屋などと同じく。
そうしたことは罪ではないと思いますよ。歴史の中では。

逆に今の時代、人騙しのような商法を見ると・・・・
でもやっぱり騙されてるほうが悪いような気もする(笑
ジャパネットのたかた会長のようなのは決して騙していない口上
だけでその気にさせる技あり商売だと思うけど、ダマスカスの刃物
のように明らかに「嘘」を宣伝文句にしている商法が蔓延し過ぎ。
他人の褌で相撲を取るようなのが多いのだが、いやはやなんとも。

この動画の人は、自作ナイフ製作者として、好感が持てる。
それは外連味が感じられないからかもしれない。
ナイフが好きなんだなぁ~というのが感じられるし、自作ナイフを
出典したら日本ナイフ協会で入賞したなんて、すごいじゃない。
こういうよこしまなところがない純粋な若い人は応援したい。





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