経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の教え

アベノミクス・V字回復の瓦解

2014年08月31日 | 経済(主なもの)
 日経は、半月前、7-9月期について、消費が6月の水準を保つだけで前期より高まる「ゲタ」を履いているとして、読者を元気づけていたが、7月の家計調査の実質季節調整済指数は、前月比で-0.2の低下となり、基調を示す「除く住居等」は-0.8にもなった。本コラムの警告どおり「ゲタ」は割れ、多くのエコノミストのV字回復への期待は、半月もたずに瓦解した。

 7月の鉱工業生産指数は、投資財の特定要因の押し上げで、わずかに生産がプラスになっただけで、在庫は前回不況時に匹敵する水準にまで達し、年内は生産調整が続くことが避けられなくなった。それどころか、消費財の生産・出荷は、未だ下がり続けており、8月の鉱工業生産は悪化する恐れが高い。デフレスパイラル勃発の崖縁に立つ、不穏な情勢にある。

………
 まずは、家計調査の図から見ていただこう。7月は見事にお辞儀をしている。これから発表される消費総合は強めに出がちだが、供給側統計を見る限り、同じ傾向となろう。8/29公表の「消費税率引上げ後の消費動向等について」では、8月の飲食料品や家電は、7月に輪をかけて悪化している。8月の新車販売も底割れした。したがって、消費の底バイは続くと考えられ、7-9月期のV字回復は、望み難くなっている。

 それにも増して衝撃的なのは、勤労者世帯の実質実収入が下がり、増税後の最低を更新したことだ。前年度平均との差は-6.0ポイントに広がった。これに伴い、消費性向は75.3%という高水準になっている。悪天候でサイフの紐が締まったわけではなく、収入の割には多くの消費がなされている。このことは、反動減が薄れるのを待つだけでは虚しく、消費の回復には、在りあり得ぬほどの大幅な収入増が必要なことを示している。

 収入減に関し、7月の労働力調査を見ると、季節調整値の就業者数は6万人減、完全失業率は3.8%と0.1ポイントの上昇である。職業紹介状況は、季節調整値で新規求人倍率が-0.01の1.66となり、新規求人数は-1.5%の低下となった。このような雇用状況の悪化は、家計調査の収入減と符合する。収入増自体が厳しくなっていると見るべきだろう。

(図1)


………
 次に、鉱工業生産を見ていく。7月の在庫は111.5へ上昇し、前回の景気後退の谷である2012年後半に匹敵する水準となった。2012年は、2月に白川日銀による一段の金融緩和がなされ、いったん円高是正に成功したものの、再び円高へ押し返され、野田民主党政権が手を拱くうちに、景気はズルズルと後退していった。そうした時分の在庫水準になったわけだ。

 その後、在庫は、安倍政権が誕生した12月に、出荷が底入れしたことから、4か月程かかって、安定した水準まで低下した。おそらく、現時点においても、このあたりが適正な水準だろうと考えられる。アベノミクスの立ち上がりの消費急伸の時でさえ、在庫減らしに4か月を要したのであるから、今の在庫が適正な水準まで下がり、生産の抑制が不要になるには、少なくとも年内はかかるだろう。当然、これは収入が伸び悩む要因となる。

 今のシナリオは、この7月で在庫が天井を打つことが前提である。1997年の消費増税の場合は、在庫増が止まるだけで翌年1月までかかり、生産と出荷の底入れには、更に半年を要している。在庫増が止まっていない現時点では、未だ消費増税のダメージの全貌が判明したとは言えず、これから、前回同様の「生産減→所得減→消費減→出荷減」というデフレスパイラルが勃発する恐れが十分にある。

 もはや、「V字回復はあるか」といった、暢気なことを言っていられる生易しい状況ではなくなった。毎月、奈落を覗き込むような心配をせねばならない。「再増税は可能か」というセリフは、非線形的に悪化する経済の怖さを知らぬ者の言い草だろう。もっとも、1997年には、大型金融破綻を起こした11月に、緊縮を目指す「財政構造改革法」を成立させているのだから、「バンザイ突撃」の歴史は繰り返されるかもしれない。

(図2)


………
 筆者とて、このまま何とか収まってほしいと願っている。1997年当時とは違い、大型金融破綻の危険性はないし、かつては、成長速度が高かった分、転倒した際のダメージは大きかったが、今は、幸か不幸か、そんな勢いはない。並みの景気後退で済んでくれないだろうかと、希望的観測もしているところだ。

 それにしても、消費増税を1%にとどめ、代わりに5.4兆円の補正予算を圧縮していたら、消費の落ち込みは小さくて済み、公共事業によるクラウディングアウトもなく、民間工事が補ってくれただろう。景気対策のために、復興特別法人税の廃止で、財源に大穴を開け、カネ余りの企業にバラ撒く必然性もなかった。

 「猛アクセルに急ブレーキ」、「ゴー&ストップ」の度外れた財政を「第二の矢」に据えたりするから、こうなるのだ。「第一の矢」の金融政策にすがったり、「第三の矢」と称して「成長には、成長させる政策を打て」といった同義反復に酔う必要はない。穏健な財政をするだけで、経済はおのずと成長する。なぜ、日本にそれができないのか、最後の切り札の「異次元緩和」を消費増税のドブに捨てた今、よくよく考えてほしい。



(昨日の日経)
 インドでタタと水処理。繰越控除縮小で法人減税に財源メド。景気回復に足踏み感、消費に悪天候が冷や水。無人タクシー。軽の生産13か月ぶり減。

(今日の日経)
 東芝が量子暗号実用化へ。景気にまさかの下ブレ・滝田洋一。中国4大銀に不良債権の陰。新車販売8月9%減、落ち込み最大。五輪の品格・大島三緒。

※五輪を迎えるにふさわしい社会の構築が大事とは同感だ。青写真は1/12のとおり。読み返してみると、その後の経済の動きは大体合っているね。
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