経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の教え

今年もやります緊縮財政

2016年01月24日 | 経済(主なもの)
 国内は昨年来のゼロ成長状態、海外はFRBの利上げで年初から大荒れ。それでも、日本は、どこ吹く風で、「緊縮財政一本槍」である。2014年度は一気の消費増税、続く2015年度が8兆円の緊縮、そして、来る2016年度は、更に6兆円締め上げる。これでは、成長が低迷しない方が不思議だろう。もっとも、「審判の日は遠のいた」と、緊縮財政に恍惚を覚えるような人たちに、何を言っても始まらないが。

………
 日本は、変わった国で、どのくらい政府全体で緊縮しているかを知らないまま、経済運営をしている。おそらく、「緊縮はやればやるほど良いから、各所で精一杯やってくれれば、それで十分」という独特の思想に基づくものだろう。ジャーナリズムでも、「国が、地方が、年金が」とバラバラに報じるだけで、「全体はこうだ」という論説がなされることはない。仕方がないので、わざわざ本コラムが集約しなければならない。

 1/22に2016年度の政府予算案が国会に提出され、これを点検したところ、約6兆円の緊縮であることが判明した。2015年度の約8兆円よりはマシだが、近年の日本経済の成長力は、せいぜい1.6%ほどであることを踏まえれば、GDP比で1%超の大きさは、成長を圧殺するのに十分であろう。しかも、予算案の税収は、3.6兆円ほど過少に見積もられており、実質的なデフレ圧力はもっと大きい。

 財政の計測手法は様々なので、面倒だが、約6兆円という数字の根拠を示しておく。まず、今回の補正予算については、公債金の減額分0.4兆円を緊縮とした。また、2016年度の本予算も、同様に2.4兆円の緊縮と判定する。次に、地方財政は、臨時財政対策債の減額分0.7兆円と、交付税特会への借入金償還の増加分0.1兆円を合わせたものとした。社会保障に関しては、便宜上、最大の厚生年金のみを対象とし、1.2兆円の緊縮とした。

 今回の補正と本予算には、日銀納付金の減という特殊要因がある。日銀が緊縮の主体とは意外だろうが、金利上昇時の利払いに備えて、引当金を溜め込むためである。その額は、日経の報道も踏まえ、それぞれ0.45兆円とした。補正の税外収入の減額、本予算の日銀納付金の縮小からして、妥当なところと考える。このようにして、補正、本予算、地方、年金、日銀を足し合わせると、5.8兆円の緊縮という数字になる。

 なお、厚生年金の緊縮は、特別会計の政府予算案に基づく。フローの収支を見るため、収入は、保険料収入+一般会計受入+基礎年金受入とし、支出は、保険給付費+基礎年金繰入として、その差額の前年度からの変化を緊縮の大きさとした。ちなみに、収支差は3.0兆円の赤字で、前年度より1.2兆円の「改善」であるが、その要因は、保険料アップと支給開始年齢の引き上げである。

………
 政府予算案の国会提出を前に、1/21には「中長期の経済財政に関する試算」が公表されている。これによると、2014年度の財政収支はGDP比で1.6%も「改善」したことが分かる。これほど一気に緊縮したら、マイナス成長に転落するのも当然だろう。2015年度は0.8%の「改善」にとどまるが、これには、税収が補正以上に上ブレしそうな状況が反映されていない。そこで、国の税収が2.4兆円上ブレし、地方税も同様に増えるとして試算すると、下図の緑線のようになる。

 緑線は、起点となる2015年度の税収を上げ、あとは、消費増税を加味しつつ、名目成長率で伸ばした単純なものである。これから分かるのは、2020年度には基礎的財政収支ゼロの財政再建の目標が達成されることだ。しかも、GDP比で0.2%ほど過剰に達成しており、ちょうど、消費税の軽減税率を行えるだけの余裕がある。つまり、財源なしに軽減しても、財政再建の目標は達成できることを意味する。

 昨夏、目標達成には9.4兆円の増税か歳出削減が必要とされたが、2014年度決算の判明に伴い、必要額がコロリと6.2兆円まで減った。今年も、夏の決算で税収の上ブレが分かれば、同じことになる。軽減税率のために見送ることにした総合合算制度を、今度は復活させるといった締まらない議論がなされよう。税収動向を無視する日本の財政論議は、いつもマヌケである。

(図)



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 今回の中長期試算では、ついに期間が延長され、新たな増税や歳出削減なしでも、2024年になれば、基礎的財政収支がプラスになることが示された。緊縮を焦る必要はないのである。然るに、日本の財政当局は、軽減税率をしないと過剰達成になるような行過ぎた緊縮をして、経済をゼロ成長状態に陥れ、かえって財政再建を危うくしている。財政再建の最大の障害は、全体も見ずになされる財政再建のやり過ぎと言えよう。


(昨日・今日の日経)
 総理演説・同一賃金の見えぬ具体像。なくせ放課後の学び格差、必要な層に届かず。

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