経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

武器としての人口減社会とその条件

2016年09月18日 | 経済
 国際比較統計のおもしろさは、当然と思っていたことが、特別だったと知るときだ。村上由美子さんの『武器としての人口減社会』では、日本の中高年や女性のスキルレベルが国際的に特に高いと指摘されている。このような、見劣りする経済成長とは対照的な事実が、人々の能力を活かし切れていないという、我が国の問題の在りかを浮き彫りにしている。

………
 9/14に7月の消費総合指数がオープンになり、4-6月期平均からは+0.4となった。読みどおりの結果で、このまま、8.9月が横ばいでも、消費は年率1.6%成長となる。GDPは、意外な高成長となる可能性が出てきた。9/12の7月機械受注は、非製造業(除く船電)が上向き、非製造業はまずまずの水準を得て、当局の判断も上方修正された。景気の回復は、次第に確かなものになってきている。

 8%消費増税から2年半が過ぎようとしているが、民間消費は、増税直後の落ち込みから0.5%しか増えておらず、駆け込み前からは7兆円も少ない。あまりに打撃が大きく、当初の15年10月の追加増税時はもちろん、延期後の17年4月ですら、駆け込み前の水準を下回るのが確実な情勢にある。徹底して、成長より財政再建を優先する中で、どこで人々の能力を活かせるのかというのが正直なところだ。

 村上さんは、OECDの成人力調査(PIAAC)を基に、日本は「読解力」と「数的思考力」で他の国々を上回り、特に中高年が高く、女性は最高点を得ていると指摘する。その上で、日本は、男女の賃金格差が大きく、中でも16歳未満の子どもを持つ場合は、世界最大だとする。その背景には、パート労働での制約があるだろう。村上さんも、日本の労働時間は、全体ではOECDの平均を下回るのに、男性は世界最長としている。

 人材活用のためには、更なる流動性の促進は必要にしても、労働需要そのものを大きくしていくことが重要である。これが解消の原動力になるし、日本のように需要管理が滅茶苦茶だと、限られたパイを争うイス取りゲームになりかねない。そして、流動性の最大の障害は、パートと正社員の壁であり、社会習慣もさることながら、社会保険の適用差別という制度上の問題が大きく横たわる。

(図)



………
 所得税の改革が取り組まれるようだが、本来は、社会保険料と一体で議論すべきものだ。収入の増加に応じて、順次、負担が増す形に改め、130万円の壁のように、負担が一気に掛かり、手取りが却って減るという不合理な事態を解消しなければならない。しかし、そこまでの道は遠い。大企業のみを対象に社会保険の適用拡大がなされ、助成金も用意されているものの、半数が労働時間を減らしたりしている。この路線での成功は見込みがたいが、失敗を経なければ、次のステップへは進めない。

 今後、景気が順調に加速し、もっと労働需給が引き締まり、どうしてもパートに長く働いてもらわないと困る事態に追い込まれ、「いいかげん、壁を何とかしてくれ」という声が澎湃として広がり、ようやく、社会保険料の段階的賦課が持ち出されるだろう。改革で成長が得られるということはあまりなく、成長が改革を引きずり出すというのが、世の習いというものである。


(今週の日経)
 所得税、数年かけ改革。GDP推計見直し、研究開発費など20兆円かさあげ。税や社会保障で格差大きく縮小、13年調査。金利変動リスクに警鐘、不動産融資も警戒。日銀、マイナス金利を軸に総括検証。育児休業を2年に、厚労省が延長検討。総務省、消費の新統計を作成。機械受注7月4.9%増、完成品出荷も進む。
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Unknown (はるこ.inc)
2016-09-18 12:57:47
GDPの推定方法の変更が15年の7〜9月期には既に行われていたっていうデマがありましたが、あれは一体何だったんでしょうね…
Unknown (基礎固め)
2016-09-21 22:24:07
失礼します。

2008snaへの改訂は今年12月頃から予定のようです。内閣府にやっと今月15日に詳しいところが載ったので、それまでので報道であった7~9月期と勘違いをするひとがいてもしょうがない面があります。

精緻化とかの宣伝はあるが、こちらのほうは宣伝も報道もなかったですから…。
因みに前も書きましたが、精緻化といのは目的化がないと意味のない概念でス。
基礎固めさん (はるこ.inc)
2016-09-21 22:49:56
去年の12月末には7〜9月期の2次速報から変更するという事が分かっていたんです。

ちょうど去年の7〜9月期というとGDPのマイナス成長がプラスに変わった局面だったので、それで勝手に想像しちゃったのかと思いました。
Unknown (基礎固め)
2016-09-24 16:39:51
失礼します。

話しの流れ全然関係ないです。
最近の政策手続きとかマネイジメントの問題見ててちょいと調べてたのですが…

責任の明確化って議論や交渉や会議のはじめの頃に決めるものという考えを知りました。
ゲーミング理論のアシステッドネゴシエーションから。ゲーム理論じゃないよゲーミングだよです。目からカイコウセンデス…

で、
官僚等の推進者は入るが、関係の調整や事実認定などの第三者の調停者や裁定者の仕事が不明確な日本の行政や交渉場面で重要な気がします。透明化やエビデンスはこの責任の明確化を初期に決める際重要で、初期の責任の明確化があるからこそプレイヤーたちが透明化とかをするインセンティブが有るんだと思いました。リスクの明確化やリスク対処を考えるインセンティブにもなるかと
Unknown (基礎固め)
2016-09-29 21:15:33
失礼しまして続きを。

で、大体次に費用問題が話題になってしまうが…。費用は責任をどうするかやリスクをどうするか…誰がとるのか…どう決定したかで変わるかと思います。かなり価値観の問題が入る。
その為、財源コストとか税金の無駄とかの話しは責任論やリスク論を議会や交渉でしっかり決めてから話すべきで。
ある程度の価値観の共有をもたらすために、上に書いたような手続きの明確化が必要ではとも思った次第です。

失礼しました。
Unknown (Unknown)
2016-10-30 11:57:02
(ヽ´安`)人口減少は日本にとってボーナスステージ!

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