経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

マインドで済ますな

2013年05月01日 | 経済
 3月の家計調査の結果は、凄まじいものだった。季節調整済の実質指数で、対前月2.0ポイントもの上昇である。10-12月期の指数平均98.4から1-3月期は102.4へ、4.0ポイントものアップになる。この結果を受けて、各調査機関はGDPの高い伸びを予想しており、最も高いところでは、年率3.2%成長である。

 こうした消費の高い伸びの理由について、大方は、円安株高によるマインドの変化とするが、これだけの分析で済ましては、もったいない気がする。また、株高などの資産効果もあるにせよ、贅沢品や百貨店販売の消費に占める割合は小さく、それだけで納得してはいけない。やはり、設備投資増→雇用増→所得増→消費増というスタンダードなルートを点検する必要があろう。

 今回、特に目を引いたのは、勤労者世帯の実収入が増加し、消費性向が少し下がった点である。2月は、実収入があまり増えていないのに消費が大きく伸び、消費性向が大きく上がっていた。不自然なほど消費性向は高くなったが、収入が増えることを見越して、消費を増やしていたとも受け取れるわけだ。

 ここで、消費者態度指数を見ると、今年になって雇用環境の指数が大きく改善していることが分かる。昨日は、労働力統計の発表があり、失業率は低下したものの、就業者数は停滞しており、必ずしも良い結果とはされていない。雇用統計の数字では、これまで明確な改善が見られていなかったが、主観的には良くなっていると感じられている。

 改めて、最近の労働力調査を眺めると、団塊の世代が65歳を過ぎて完全引退の時期になったのに合わせて、若者の就業者数が増している。就業者数は横ばいでも、中身は若者に入れ替わっており、それが消費を高めているのかもしれない。家計調査でも、実収入の中身は、世帯主より配偶者や他の世帯員の収入の方が伸びており、それが消費性向を高めていることが考えられる。

 そして、設備投資の状況を探るのに、鉱工業生産の資本財出荷を見ると、回復しつつあるのが分かる。結局、「設備投資増→雇用増→所得増→消費増」のルートにおいて、それぞれの兆しはあるということだ。設備投資を削るような厳しい経営が一服し、採用や就職のメドが立ち、働き出すのに物要りとなった。そんなイメージである。

 注目すべきは、「底を打つと急速に良くなる」という現象だ。設備投資で見られることは、分かっていたが、雇用や消費でも言えるのかもしれない。この1-3月期の家計調査の結果は、非常に特異なものである。特異なデータからは新たな知見が生まれるものだ。単に「マインドが良くなったから」で済ましていては、貴重なものを見逃してしまうように思う。

※今回、消費が伸びた要因に「設備修繕・維持」があり、1,2月の悪天候で工事できなかった反動ともされているが、太陽光パネルの駆け込み需要もあったと考えている。数ある成長戦略の中で、効き目があるのは、これくらいではないか。その割にフォローされていない。

(今日の日経)
 一時金5.4%増、主要企業。賃上げ率1.8%どまり。住宅回復が地方に波及、駆け込み購入。民間、2.8%成長予測、1-3月期年率、消費が押し上げ。国債利回り、じわり上昇。経済教室・コンピューターが仕事奪う・新井紀子。

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1 コメント

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筆者のプロフィールが知りたい (通りすがり)
2013-05-02 12:56:20
筆者のプロフィールが知りたいですが、どこかに載っていますか? 見つけられなかったので。。。。。
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