経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・消費ついに動く

2016年12月04日 | 経済(主なもの)
 10月の経済指標は、消費が大きく伸びていることを示唆する内容だった。景気は一つの節目を迎えたと言って良いだろう。7-9月期に続き、今期は、消費を中心に代え、2%成長を達成できるかが焦点となる。そうなって初めて、経済は起動したことになり、自立成長が始まる。この間、何か新しい政策がなされたわけではない。そう、不作為という大功績によって、成長が実現しつつあるのだ。

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 10月の商業動態の小売業は、前月比+2.6と大きく伸びた。財の物価指数で除しても+1.2で、実質でも十分に大きい。また、鉱工業指数の消費財出荷は、前月比+3.7となり、これに伴い、生産が+1.0になった上、在庫が-7.2の大幅減となった。鉱工業は全体としても好調で、出荷が+2.1、生産が+0.1、在庫が-2.3となり、11,12月の生産予測指数も+4.5、-0.6と高い。単純に予測どおりなら、鉱工業の10-12月期の前期比は+3.7にもなる。鉱工業の全産業に占める比率は2割程でしかないが、成長を強く牽引しよう。

 消費を裏打ちする雇用状況については、10月の労働力調査で、男性の就業者数は4か月ぶり、雇用者数は5か月ぶりに今年最多を更新した。女性の就業者数はトレンドより若干少なかったものの、雇用者数は引き続き今年最多を更新した。また、10月の職業紹介の新規求人倍率は2.09と5か月ぶりに更新を果たした。パートは頭打ちでも、「フル」が着実に積み増している。この分なら、来週公表の毎勤の賃金も大丈夫だろう。雇用は好調が持続して来たけれど、この4か月程は足踏みがあったことは心得ておきたい。こうした動きが消費に陰りを与えた可能性もあるからだ。少なくとも、消費を悪天候にばかり結び付けるのは、考え物である。

 他方、10月の家計調査は供給側とは食い違う内容であった。二人世帯の実質消費支出(除く住居等)は前月比-1.5も低下した。ただし、世帯人員や世帯主年齢を調整した消費水準指数は-0.5にとどまっており、加えて、勤労者世帯の実質実収入は-0.3で、消費性向が70.9とかなり低いことからすれば、フレ過ぎと考えられる。消費性向の低さは、伸びる力を秘めていることも意味する。こうした数か月もの消費性向の低下は、2006年の7-9月頃以来10年ぶりで、珍しいが過去になかったわけではない。その際は一時的なもので済んでいる。

(図)



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 今回の景気回復の局面を振り返ると、4-6月期は住宅と公共がGDPを持ち上げ、7-9月期は輸出が主導した。そして、10-12月期に消費が伸びれば、追加的需要から所得と消費へ波及するという自然な形の景気回復となる。住宅の回復は、消費増税の反動減からの戻りであり、公共に至っては、緊縮が底を打っただけだ。純輸出の緩やかな回復は、輸入の減退によるところが大きい。

 つまり、何かをしたから良くなったというものではなく、敢えて言えば、余計なことをしなかったから回復したとなる。もし、民主党政権の計画どおりなら、ゼロ成長状態だった2015年10月に消費再増税をしていたはずだし、2017年4月への延期後であっても、未だ消費増税前より家計消費が8兆円も少ないまま、更に4.6兆円兆円も抜く事態に突入していただろう。回復はおろか、地獄へ落ちかねなかったわけだ。

 逆に言えば、自然体であれば、日本経済は成長するということでもある。改革好きの皆様には、力の抜ける現実だろう。成長の原動力は、個々の企業、一人ひとりの創意・工夫の膨大な営みの積み上げである。所得を吸い上げ、売上を取り上げるという将来不安を煽る政策をすれば、どのような負の創意・工夫がなされるか、よくよく考えるべきだ。「カネを留保するにしくはなし」と思わせてはダメなのである。


(今日までの日経)
 個人消費の把握、需給両方の統計活用を 内閣府が分析結果。米失業率9年ぶり低水準 雇用増11月17.8万人 月内利上げ強まる。 日経平均が年初来高値 OPEC、8年ぶり減産合意で。予算案 揺らぐ国債減 税収、7年ぶり下方修正。
コメント (11)
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