画家 田中恵子のアトリエ通信

田中恵子の鎌倉七里ヶ浜アトリエより、絵画制作や日々の徒然などを投稿します。「続 九段坂のちょっとおかしな入院ライフ」も…

「グリーントルマリンの森 変奏曲」の技法について

2017年03月20日 | テンペラと油彩古典技法

「グリーントルマリンの森 変奏曲」の技法について

テンペラを併用した古典技法については、前回述べました。

「グリーントルマリンの森 変奏曲」シリーズは、
昨年1月から、鎌倉七里ヶ浜アトリエでは油彩のみの習作に取り組み、
スタジオでは、4月からテンペラを併用した小品の制作を始めました。
テンペラを併用して、10年以上、静物画を描いてきましたが、
風景画の場合どうするべきか?という、課題に取り組みました。

印象派以降の、近年の油彩の表現は、
不透明に盛り上げて描く方法が主流の様ですし、
油絵とはそういうものだと思っている方も多いことでしょう。
でも、その描き方は印象派以降で、産業革命により油の具が工業生産されるようになって以降、
百数十年のことなのです。

ルネサンス時代から400年近くは油彩に限っても、古典的な技法でした。
今の油絵とどう違うかを簡単には述べると、
絵の具の調合とメデュームの調合が違います。
また、表現方法が、近代は不透明に絵の具を使い(盛り上げるなど)、塗り重ねはあまりしません。
一方、古典技法では、半透明と透明で薄く塗り重ねることによって、
色彩、存在感、空気感を表現します。

市販の油絵具は不透明の盛り上げた表現に向いた調合になっています。
これでは、古典的な油彩技法には向きません。
そこで、市販の絵の具に混ぜると古典的な技法に向く様なメデュームを自作して、描きます。
要するに平滑に塗り重ねに向いた絵の具になるようなメデュームの調合をします。
これは、通常、油彩とテンペラの混合技法でいつも使っているメデュームです。
処方は、田中恵子公式サイト
http://www.studio-clipper.net/
「テンペラと油彩の混合技法について」を参照してください。

昨年秋に、師に相談して調合を変え、
より私が求める表現に向いたメデュームにヴァージョンアップしました。

古典技法をやっていると、
油彩を、不透明、半透明、透明、自由に使いこなすことができます。
これを利用して、「グリーントルマリンの森 変奏曲」シリーズを描きました。

静物画は物が近くにあります。
でも、このシリーズは私が構成したものですが、風景です。
静物は、物までの距離が3~5メートルですが、
森までの距離は、最低でも20~30メートルあります。

テンペラは存在感の表現に向いていて、近くに見えます。
森までは距離があるので、
テンペラを併用した今回の1作目は、
油彩を重ねることによって距離感を作りました。
それ以降は、油彩のみで描きました。

絵の具の種類と使い方による距離感を、分かりやすく便宜的に書いておきます。
一番近い=テンペラ(不透明)
やや近い=油彩不透明
やや遠い=油彩半透明(ある程度の空気感を感じる)
遠い=油彩透明(空気感・水を感じる)

油彩を不透明、半透明、透明に使い分けることによって、
森の存在感と森までの距離感(空気)を表現し、
水の表現は透明のグレーズを使用しました。
画面は当然平滑で、絵の具層は、多いところで5層くらいです。

今回出品のはじめの2作と前回の1作は、
板に、古典的な吸湿性下地を塗っています。
鎌倉七里ヶ浜アトリエで制作した8作品は、
上質な細目のキャンヴァスを使用しました。

完成作品はギャラリーへ
http://www.studio-clipper.net/gallery2.html

田中恵子公式ホームページ 
http://www.studio-clipper.net

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