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外貨建て資産比率をどう考えるか・・・運用下手さん、トモンガさんへ

2014年11月15日 | 2014年の資産運用
  円安は117円に迫るところまで来ています。私は120円程度を一つの節目と見ていることを以前お伝えしていますが、それに近づいてきてしまいました。節目とはそこまで行くということではなく、それを越えると大変なことになる可能性が強いという意味で申し上げています。


  さて、運用下手さんから「外貨建て資産の比率をどうすべきか」というご質問をいただきました。またトモンガさんより以下の質問もいただいていますので、こちらの本文で回答をさせていただきます。

>これから、かってのような円高は、ありえないのでしょうか?(自分でも半分、答えが分かっている気がします)。と同時に今からでもドル転遅くないのでしょうか?やっぱ何よりも、すべて円建てで考えてしまう考え方を変えなきゃいけないのでしょうか?

  トモンガさんへの回答は、「超円高には戻らないので今からでも遅くはない。すべてを円建てで考えると道を誤る」です。

  では運用下手さんのご質問にあった外貨建て比率をどうすべきかについて私の考え方を述べます。運用下手さんのプロフィール登録を見返しますと、40才代でかなりの金融資産をお持ちですね。そして今後それらのかなりの部分は住宅資金だとのことでした。

 私は著書の第1章で「自分の資産の棚卸をしよう」という提案をしています。その目的は、みなさんの本当の資産内容は手もとの金融資産だけではなく、社債保有に該当する将来に渡る給与国債保有に該当する将来に渡る年金収入も含める必要があるからです。

  「金融資産の何割を外貨で保有するべきか」などという単純なお話はファイナンシャルプランナーのおばちゃん達におまかせします。みなさんはせっかくこのブログで「本当のフィクスト・インカム考え方」に出会っていますので、それに基づく考え方を勉強していただきたいと思います。それは、

  「給与や年金などかなり確度の高い、しかも積もり積もれば莫大な円建て収入・資産があるのに、金融資産のみの3分の1だとか半分だとかを外貨建てにしても、今後に備えたことにはならない」というのが私の考え方です。(年金がどの程度安全かのお話は棚上げします。)

  簡便法としては、ご自分の将来の給与所得の総計、年金収入の総計を計算してみてください。それを現時点の金融資産に加算した上で合計額を出し、そのうちどれだけを外貨で保有すべきかを考えるのが妥当だと思います。私の主張は「当座の必要資金を残して、すべてを外貨にすべき」なのですが、例えば3分の1を外貨としても、多分保有する金融資産のすべてになってしまう方が多いと思います。すでに持家のある方ならなおさらです。

  給与・年金額の計算は単純合計ではなく、本来であれば私の著書にある「擬似国債」、「擬似社債」の考え方でいくべきですが、それは著書を参考にしてください。

  本当のフィックストインカムの考え方で資産を棚卸すると、普通のサラリーマンの方の円資産への偏りは大きすぎるということが理解できるでしょう。数値を大事にしている論旨であれば、当然こうした結論が導けるのです。

  とは言え、私の本をお読みいただいた方から「金融資産の適正な外貨比率は」との単純な質問はよく受けますし、個人的に相談されることが多いのも事実です。そして「必要資金を除いてすべてを外貨にしたところで、大した比率にはならない」と申し上げても、そこまで思い切った外貨シフトはなかなかできないことも理解できます。なんだかんださんから大胆な外貨シフトで成功しているというお話をいただきましたが、それでもそこまでは踏み切れないでしょう。
  
  それでも私は上記のように数値の裏付けを持つ持論を再度提示させていただきます。私の著書は3年前に出版されていて、原稿は4年前に書かれたものです。その時点と今現在を比べると何が違ってきたか、今一度確認してみてください。それは、

・米国債とドルに対する信頼は一段と増した

・円に対す疑念は一段と深まってきている


ドルへの投資の抵抗感は、3・4年前よりはるかに小さいはずです。

  円が再度力強く円高に進むことは長いトレンドで見ても、比較的短い視点でみても非常に考えづらいことです。何故なら

まず短い視点から考えれば、

・アベノミクスの失敗はすでに本人が認めた

・日銀のバズーカ砲は真上に向けて発射され、落ちるのは自分の頭上


さらに長期的視点に立てば、

・日本は財政破綻の大激震に向け、着々と歩みを進めている

・ホテルカリフォルニアからチェックアウトしつつあるアメリカ優位の展望を覆す材料はない


  目先の円ドル相場に目をつぶることができれば、長期的にはドルシフトは間違いなく成功すると思います。

  以上がとても大雑把かつ繰り返しのお話しではありますが、すべて数字に基づいて考える私に見えている将来です。

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19 コメント

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Unknown (しこ)
2014-11-15 12:42:39
林さま

お世話になります。
今、米ドルMMFをドルコストで3万円分せっていしますが、ちょっと早めにドル転してみようと思いました。
また株式は現金化しはじめました。

とはいえ不安もありますが、えいやとやってみようと思います。

ありがとうございました!
返事、ありがとうございます。 (トモンガ)
2014-11-15 15:46:14
今、再度『証券会社が売りたがらない米国債を買え!』を前に読んでから、だいぶ時間が経っているので読んでいる最中です。
私のような自己紹介もしないで質問した失礼な人間に返答を頂きまして感謝しています。
私は、このブログで拝見している人達の中で所得、資産とも少ない方の部類に入ると思います。

東北の田舎の会社員で38歳です。妻、子2人と65歳迄支払う住宅ローンを組んでいます。年収は370万程です。
円預金で300万くらい、日本株は少々やっていて、ほとんどプラスで処分し少し利益を出してやめました。
それで次に米国株を運用費100万くらいで始めました。今んとこマイナスは、ありませんが含み損は、あります。いつ下落するかとストレスを感じ、なんとかプラスで処分して辞めようと思っています。
この林様のブログを毎日チェックしています。
ちょっとですが、このブログで話題になった米国リート為替ヘッジ無し(毎月分配型じゃない)投資信託とTLT(米国債20年超ETF)に投資し利益を上げています。
これからもブログの拝見を楽しみと同時に、応援しております。ありがとうございます。
都心の再開発は動き出している (ただの個人投資家)
2014-11-15 17:05:45
景気が良くなるのを見越してか?カネ余りでか?都心部の不動産再開発は最近動き出している!銀座松坂屋跡地も大規模再開発工事が進行している!
なんかバブルの時のスクラップアンドビルドのような光景ですね~
スーツケース持った中国人の旅行客のすごいことすごいこと
いったいどうなるんだろ~(^-^)
Unknown (Owls)
2014-11-15 19:42:15
こんにちは。

計算したら、私は金融資産の8割強が外貨を含む
海外ものへの投資になってます。結果的には今の
円安には対応できました。1㌦80円を切る円高の時に
多く投資していたのが奏功しました。

ただ、海外株や海外REITへの投資比率が高く、
リスクの取り過ぎと感じて、どうしたものかと思ってたら、
このブログに上手い具合に昨年辿り着きました。

私は以前から日本国債の安全性に大きな疑念を持ってました。
いずれは円と日本国債の過大評価は修正されると考えていました。
ただ、日銀が国債に大量買取に動くのは予想以上に早かったです。
貿易・経常収支の悪化も予想以上のスピードで進行しました。
以前から日本の先行きには相当悲観的でしたが、
相当な悲観を越えたレベルの悪化になっています。

最近はドルは目先円高になろうと安心を買う保険だと割り切ってます。
政府・日銀の暴走ぶりをみると、あながち間違った感覚でもないでしょう。
最近は円は安全通貨で無くなったという見方もチラホラ出てきているようです。
少しでも手持ちのドルを増やすのは有意義なことです。
Unknown (目白のおっちょこちょい)
2014-11-15 22:20:40
林さん、こんばんは。

10月中旬までのドル転で資産の88%を外貨にシフトすることが出来ました。おかげさまで差益が400万程出ています。

今まで貯めてきた資産は保全できてにっこり・・・としてはいるのですが、今後の事を考えると、どよーんとしてしまいます。
定年までまだ半分も来ていませんので、現時点で円安で資産評価額が増えるよりも今後の日本経済が安定していてくれる方がどれだけうれしいか!
それが難しそうだからドル転してるんですが・・・なんだか複雑な気持ちです。
ただの個人投資家さんへ (林 敬一)
2014-11-16 16:00:29
都心だけは今後も再開発が進行すると思いますし、不動産価格は多少堅調に推移するでしょう。しかしそれがオフィスビルであれば近隣の中小ビルが空室になり、マンションであれば近郊に空き家が増加します。総需要は減っているので、しょせん「一極集中の近隣窮乏化」にすぎません。

それが証拠に最近できて大きな話題になった大開発虎ノ門ヒルズのテナント名を見たら、知っている企業名は皆無でした。

中国人旅行客、大いに歓迎してあげましょう。都心デパートの売上、ひいては日本の小売売上の数字を押し上げてくれていますので。

Owlsさんへ (林 敬一)
2014-11-16 16:01:44

>1㌦80円を切る円高の時に多く投資していたのが奏功しました。

それは幸いでしたね。

>ドルは目先円高になろうと安心を買う保険だと割り切ってます

その考えに賛成です。Owls保険!
目白のおっちょこちょいさんへ (林 敬一)
2014-11-16 16:02:42
>10月中旬までのドル転で資産の88%を外貨にシフトすることが出来ました。おかげさまで差益が400万程出ています。

円安傾向が進行する中での決断、功を奏してなによりです。今後円高に振れてもそれはOwls保険に加入と割り切りましょう(笑)

>現時点で円安で資産評価額が増えるよりも今後の日本経済が安定していてくれる方がどれだけうれしいか!

ほんとにそれがもっとも重要なのに、むしろそれをぶち壊していくが今の政権運営ですね。

Unknown (Owls)
2014-11-16 16:38:03
こんにちは。

どうやら消費税10%への引き上げはどうやら先送り。
これは与野党ともに同じだと思われます。

さて、日銀が国債を大量に買い取ってるとはいえ、
消費税をアップして財政再建もするという約束が
ある程度は日本国債の信用になっていたと思います。

それが政府はいとも簡単に約束を反故にしてしまった。
それが国内外の金融機関が今まで通り、円と日本国債は安全資産とみなすか?
私も増税は嫌ですが、消費税を先送りしたところで継続的経済成長の保証などありません。
少々消費を下支えしたところで、構造的な要因の低成長は解決しないはずです。

私が心配してるのは、以前には版で押したように、
円と日本国債は安全と言ってた日本の金融機関の
アナリスト達が第二次緩和から増税延期について
先行きの懸念を言い出したことです。ことあるごとに
また円高になると脅しつけていた人達が、最近は
だいぶ様子が違うことです。

立場上、公然とは政府や日銀を批判したりはしないでしょう。
しかし、最近のエコノミストやアナリストのコメントを見ると、
なにやら以前と違う不信感が滲み出ています。

そろそろ制御不能の円安もあり得ない話ではなくなってきたかもしれません。
林様、ありがとうございます。 (運用下手)
2014-11-16 22:39:34
林様、ご整理下さりましてお礼申し上げます。

貴書を拝読すればおのずと分かることをご質問差し上げてしまいました。トモンガ様同様、私ももう1度読み直します。

早速、資産を管理しているEXCEL表に、ドル建の総額表示を追加しました。また、「今からでも遅くはない」とのお言葉を胸に、今は半分弱の外貨比率を、ひとまず3分の2目標にドル買い進めます。

引き続きよろしくお願い致します。

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