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トランプのアメリカ

2017年01月12日 | トランプのアメリカ

  今回は先週ユーラシアグループが発表した恒例の世界の10大リスクについて書くつもりだったのですが、昨晩のトランプの初インタビューがあまりにも面白い結果だったので、今回もトランプ関するコメント記事にしました。

 

  午前1時から眠い目をこすりながらCNNを見ていましたが、会見のあまりのひどさにすぐにパッチリと目が覚めました。77分の会見中きわだったのが以下のポイントでした。

・ロシアのハッキングなどない、とあれほど繰り返していたトランプが、「あった」とあっさり認めた

・ロシアのハッキングに関する未公認文書をCNNが根拠もなく報道したと非難し、CNNと全面戦争になった。CNNは会社として報道の事実を否定している。

・CNNをウソツキ呼ばわりして一方的に非難し、CNNのキャスターの質問を遮り、「お前らウソツキ報道に回答はしない」と完全拒否した。その後このキャスターはトランプの報道官になるスパイサー氏から、「トランプの会見には出入り禁止にするぞ」と脅しをうけたことを明らかにした

  今後のCNNとトランプの争いは見ものです。

・会見全般を通して経済政策や外交方針などに関してきちんとした政策など示さず、ひたすら「GM、フォード、クライスラーはオレ様の言うとおりになった」などという、いつものオレ様トークに終始した

・自分のビジネスと大統領職の利益相反については、顧問弁護士に20分もの大演説をさせ、問題がないとお墨付きを得たように見せた

  以上が私の勝手な印象です。

  大統領が報道に対して暴言を吐き続ける、それこそが一昨日メリル・ストリープが声をつまらせながら言った、権力者が立場を利用して他人をいたぶる」そのものでした。

  そして報道官候補からCNNへの脅しは、私が独裁者の典型的資質としてあげた「報道の自由を奪う」姿勢そのもので、とてもアメリカで起きているとは思えません。

  政権内部の支離滅裂ぶりは彼のみにとどまらず、閣僚候補の上院での委員会答弁でも噴出しています。閣僚候補は就任するために上院の承認が必要のため、ヒアリングでは真剣勝負をしています。

トランプと閣僚候補との齟齬をあげておきます。

・貿易政策で最大のポイントであるTPPに関して、プーチンとの親密ぶりを指摘されている国務長官候補ティラーソン氏は、「TPPに反対しない」とのたまわっています。一方、トランプは相変わらず完全に反対したままです。

・前日に行われた法務長官候補であるセッションズ氏は、トランプの「イスラム教徒入国禁止」について反対の立場を委員会で表明しました。それはいいのですが、彼自身は「人種差別主義者」のレッテルを張られている問題ありの人物です。

  とまあ、予想されたことではありますが、大統領候補がこれまでとは正反対の答弁を臆面もなく繰り出し、閣僚候補が彼と正反対の方針を表明しています。そして、今後何人もの閣僚の適格性を問うヒアリングにおいても同様なことが積み重ねられます。

  TPPですら重要閣僚候補から正反対の意見が出ています。私はそうした朝令暮改かつ支離滅裂なトランプ自身と政権内部の動向を予想して、「金融市場予想に反映させるのは意味がない」と申し上げていますが、まさに毎日のようにそれが目の前で展開されているのです。

  おかげでこの日のNY株式市場は、彼の言葉を反映しながら荒れ狂っていました。金融市場関係者の方々には再度、「お気の毒様」とだけ申し上げておきます(笑)。

  次回は世界の10大リスクに関する私のコメントです。

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