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アメリカ経済 アップデート その2

2017年04月04日 | アメリカアップデート

  アメリカ経済の現状の続きです。前回は、経済指標のなかでも雇用が絶好調で、賃金上昇率も堅調なため、それがFRBによる利上げを後押ししたと指摘しました。そして経済の総合評価であるGDP成長率も16年の平均はおよそ2%と順調で、今年度も同程度が見込まれている。また、バブル崩壊の兆しをサブプライム・オートローンに見出そうとしている人もいるが、規模からみてたいしたことにならないと結論付けました。

  では他にリスクがあるとしたらどこなのかを見ていきましょう。

  経済に内在するリスクより、政治的、あるいは地政学上のリスクのほうがが大きいと私は見ています。経済に内在するリスクは、単なる景気循環の域を出ないとみておけば間違いないでしょう。09年からの景気拡大が8年にも及ぶため、そろそろ息切れしても当然です。

  昨日発表されたアメリカの製造業景況指数や自動車販売などの経済指標も、若干スローダウンの兆しを示していました。もっとも、たった1か月、あるいは1四半期の指標で景気の方向を判断するのは危険です。これまでも数年の間にいくどとなくそうした局面がありました。アメリカ国債への投資を考えている方にとって、景気のスローダウンなど深刻に考える必要はありません。金利低下からドルが安く買える、という程度の話ですので。

  一方、地政学上のリスクともいえるトランプ大統領の存在は、無視できません。

  週末のNHKスペシャルでは、「シリーズ・資本主義の未来、マネー・ワールド」で、トランプの保護主義的政策が歴史的にみてグローバル資本主義の未来を変えうるか、というテーマに取り組んでいました。

  これまでもこのシリーズは興味あるテーマを提供してくれていました。今回もご覧になった方がいらっしゃると思います。なにより私が興味深く見るポイントは、世界の経済学者や歴史学者の長期展望です。

  彼らの一貫した対立点はグローバリゼーション、是か非かです。是とする方はグローバリゼーションこそが今日の世界の繁栄を築いたという立場で今後もそれを支持し、非の方はそれが格差を生んだのだから、これ以上のグローバリゼーションは阻止すべきだ、あるいは資本主義に限界が来たという立場です。限界説の代表は今回も歴史学者のエマニュエル・トッドでした。

  今回はそこにトランプが保護主義という一石を投じようとしているため、いったい資本主義の将来はどうなるか。つまり新たなブレークスルーとなるのか、はたまた破たんへの端緒となるのかを経済学者などが論じていました。日本の経済学者3人のうち2人は、トランプ政策は矛盾だらけで破滅への道だとして批判的。1人は功を奏する可能性ありということで対立させていました。

トランプ政策を論じる場合、いつものことながらトランプ政策の反対者は矛盾を突いた論理的説明をしますが、賛同者は矛盾を突かれてもまともには返答できずに逃げます。今回も同様で、賛同者は理路整然とした説明はできませんでした。その図式はトランプ政権を周辺で支える人たちも同じで、説明に窮すると逃げの一手のため、議論がしっかりとは噛み合いません。

  ではトランプの経済政策がうまくいかない場合、いったアメリカ経済はどうなるのか、私の考えを述べていきます。

  結論はもちろん「全然問題なし」です。というよりも、理不尽極まりない保護主義政策など実行できない、というのが私の見方です。

  トランプが勝利して以来、株価は金融やエネルギー関連を中心に大きく上昇しました。その理由は彼の政策の重点が偏っているからです。

  金融株が上昇したのは、「規制緩和」を推し進めるから。エネルギー関連株が上昇したのはシェールなどへの規制緩和、プラス環境破壊政策を推進すると宣言しているからです。

  その反面、ハイテクのナスダック銘柄は出遅れました。彼が製造業にばかり力点を置き、ハイテクを支える海外からの人材受け入れを拒否する政策を打ち出したからです。

  ところが、このところの株価反落局面では、その巻き返しが起こっていて、アップルなどのハイテク銘柄が史上最高値を更新する中、金融やエネルギー関連株は反落しています。理由はもちろんトランプが最も声高に主張していた政策の実現がどんどん遠のいて、政権の力量に赤信号がともったからです。

  友人が「アメリカ議会を見ていると、3権分立が機能している」と言っていましたが、全くそのとおりで、いくら大統領と取り巻きが吠えても、議会を自由にはたぐれません。支持率も3割台と、すでにレームダック化に片足を突っ込んでいるのが現状でしょう。

  では何故彼の例えば保護主義など実現できないと言い切れるのか。

  保護主義のさえたるものは国境税など物価に直結する保護主義政策です。アメリカのスーパーに置いてあるものの7割が中国などからの輸入品です。よく引き合いに出されるウォールマートストアに限れば、中国などからの輸入品は販売品の8割に達します。それに30%や40%の関税をかけた場合、もろに物価が上昇し、低所得層を直撃します。いや中間所得層も直撃するはずです。

  アメリカは大統領選挙の2年後には中間選挙があり、そこで選挙民から見放されれば議員は落選します。選挙民は各議員がどの法律に賛成・反対したのか、一目でわかるようになっています。そのため議員にしてみればトランプ支持より選挙での勝利を優先します。ですのでトランプのオバマケアの代替案など、党や大統領に逆らって真っ向から反対するのです。日本の政党のように党議拘束などありません。

  保護主義的政策をいくら連発したところで、選挙民を窮乏化させることなど議員には絶対にできないのです。

つづく

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3 コメント

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Unknown (一読者)
2017-04-05 21:42:32
でも、これまで30年にわたり、80%の米国民が結果的に窮乏化する政策を実施してきたのではないでしょうか? 
一読者さんへ (林 敬一)
2017-04-06 16:11:08
>これまで30年にわたり、80%の米国民が結果的に窮乏化する政策を実施

データの出所、あるいは根拠を明らかにしていただけますか。
Unknown (Owls)
2017-04-06 18:53:45
順調に行けば今年中に
FRBがバランスシート縮小をするとのこと
アメリカの金融正常化が軌道に乗ると
世の中がだいぶ変わるのでしょうねえ

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