ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(フィクストインカムの専門家)

「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
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証券会社が破たんしたら、私の米国債はどうなる?

2017年06月30日 | 米国債への投資

  定年退職さんの疑問とPuffinさんの懸念への回答です。

  定年退職さんへのコメント欄で私は「記事と我々の米国債投資は、全く関係がない」と申し上げていました。そして日銀の件が一段落したら回答します、としていたのですが、その前にPuffinさんのご指摘の点とともにずいぶんと勘違いをされている方が多いようですので、今回説明をさせていただきます。

  何人かの方々の間で日銀問題への不安から資産の海外逃避という話題に発展しています。このブログは脱税指南でもない限り(笑)、そうした議論は大いに歓迎します。特にPuffinさんのように様々な試行錯誤をされている方の経験談は、多くの読者の方の参考にもなると思いますので、大歓迎です。

  仙台の読者さん、ご指摘をいただき、ありがとうございます。税務申告は大変な作業ですね。

 

  さて今回の記事では読者の方が不安を感じている2つの問題に、私なりの説明をさせていただくことにしました。

1つ目はファンドマネージャーの言う米国債バブル崩壊

2つ目は日本の証券会社経由の米国債投資の安全性問題

 

  まず定年退職さんが引用されていた債券ファンドマネージャーに関するブルームバーグの記事への勘違いから、説明をします。

>ハッセンスタブ氏は2015年から一貫して米国債に弱気
投資は「薄氷の上を歩いているようなもの」、安全資産でなくなる
フランクリン・テンプルトンで債券を担当する花形マネジャーのマイケル・ハッセンスタブ氏は米国債が世界最大級のバブルのただ中にあると指摘し、米国債に安全を求めている投資家は利回り上昇で大幅な損失に見舞われるだろうと警告した。

こうした記事を書いている記者にも知識不足の感がありますが、「安全資産でなくなる」というのは全くの間違った表現で、正しくは単に「価格下落の恐れがある」です。

  ファンドマネージャーは私がよく言う「株やさんちの・・・」と同じで、売らんがため、または自分の投資にちょうちんを点けさせるためのニュースを意図的に流します。それをポジショントークと言います。彼のポジションは債券のショート・ポジション、つまり空売りポジションと思えるコメントです。バブルだと言っているのは、アメリカ政府が日本政府のように借金まみれだとうことではありません。ただ米国債が高く買われすぎて、金利が低すぎるという指摘です。ですので彼は、それが暴落すれば大儲けできるポジションを取っているのでしょう。

 

  そもそも私が提唱しているストレスフリーの米国債投資「償還までの持ち切り投資」です。それは十分にご理解いただいていると思います。途中の価格の上下など、全く関係がありません。

  それに対して債券ファンドの投資法は、市場価格の上下動をとらえたバクチです。四半期毎に評価を受けるファンドは、価格が上昇しようが下落しようが、あらゆる手段を尽くしてパフォーマンスを上げなければなりません。その人たちにとって債券を保有しているとき、金利の急上昇による価格の暴落は最大の惨事です。彼が言っているのはそのことです。米国債のデフォルトリスクが上昇して安全性が損なわれると言う警鐘ではありません。それをブルームバーグの記者が勘違いしているのです。

  我々が買った債券の償還までの利回りは、買った時点で確定しているので、保有の途中や最後で金利が急上昇していようが急低下しようが、影響はゼロです。彼の言うような暴落が起こったら「ヤッター、チャンスだ!」と言って米国債をみんなで爆買いしましょう(爆)。

  これが「全く関係がない」と私が言っていることの説明です。

  定年退職さん、ご理解いただけましたでしょうか。「債券型投信」のことは私の著書の240ページからも説明がありますので、それも参考にしてください。

 

  次はPuffinさんからのコメントです。米国債の名義は証券会社などのため、所有権は主張できない。だから危険を感じるという部分です。

  名義と投資資産の安全性はもちろん全く関係がありません。日本で証券会社を通じて様々な投資をされている方は、ご自分の投資した証券が証券会社のふところにあるのではなく、それとは全く別に、いわゆる「分別管理」されていることをご存知ですよね。証券会社の破綻には影響を受けません。それは株であろうが債券であろうが変わりません。同じことが海外株にも海外債券にも言えます。証券会社のリスクとは完全に切り離されています。

Puffinさんの文を引用します。

>日本の証券会社で外国株式を購入しても、その所有者は証券会社になっており、個人投資家は資金提供者に過ぎず、配当を証券会社が受け取ったものを投資家に渡すだけで、名義や議決権は証券会社のものだと。
あまりにびっくりしたので、口座を持っている店頭・ネット証券会社に次々と同じ質問をしたら、すべて同じ答えでした。

もちろんそのとおりです。債券も同じです。しかし次の文章、

>つまり、何か大きな金融恐慌が生じて証券会社が傾いた時には、「道連れ」ということになります。

いいえ、そうはなりません。

理由は先ほど申し上げたとおり分別管理されているからで、山一證券などに預けられていた金融資産はすべて引き継いだ別の証券会社の管理になりました。山一の破たん処理の材料になったりしていません。

  分別管理は証券投資管理の基本中の基本です。

  投信なども、販売窓口の証券会社や運用会社が倒産したり詐欺行為を働いたりしても大丈夫なように、別途信託され管理されています。そうすることで、設立が簡単な投資顧問会社などが詐欺行為の温床にならないよう、システムが確立しています。

  ご心配であればみなさんが米国債を買っている証券会社に、「おたくが破産したらどうなるの?」と聞いてみてください。Puffinさんの質問は書かれていらっしゃるように、「名義は誰なの」という質問ですので、回答はもちろん「証券会社です」と答えがかえってきます。

  以上、どうも多くのみなさんが勘違いされているようなので、解説しました。

 

  では日本の財政が傾いて、政府が個人資産の凍結や召し上げをしたらどうなるか。

  個人資産のしばしの凍結はまだしも、資産の召し上げはない、と私は見ています。日本と言う国の自殺行為になるからです。そんな国に住み続けたいと思いますか?

  そもそも、日本の実体経済、つまり日々経済活動を続けている日本企業全体は全く問題がありません。また個人も実に堅実に生活していて、借金まみれではありません。ひたすら大問題を抱えているのは政府・日銀だけです。財政は実質破たん状態ですし、国が直接かかわる年金・福祉・医療などは大問題を抱えています。

  その政府が自分の失態をすべて国民にかぶせるなどという暴挙はできない。第二次大戦後の混乱期ですら、そんなことはしなかったと私は理解しています。それが私の見通す資産召し上げはない理由です。

  もし資産の召し上げなどしたら非常に影響が大きく、日本の健全なる実体経済までがとてつもない悪影響を受けるので、実行される確率はほとんどありません。日本の金融システム全体が凍結状態となり、企業も個人も即刻身動きできなくなります。

  それより自然発生的、あるいは意図的に起こる円安・インフレによる解決のほうがはるかに影響度は小さいため、意図するかしないかわかりませんが、そちらの方向へ向かうと思います。

  このあたりのことは、また別途私の考えをじっくり述べる機会を設けましょう。

  にもかかわらず、何人の方かが書いていらしたように、海外に資産を移したり、移住を検討されるのを私は反対まではしません。どうも怪しい、住みにくいと感じている日本に住み続ける必要はないでしょう。

  昨日も好天の中、知人のニュースキャスターの先輩とゴルフに行き、帰りにとても安くておいしいお寿司屋さんで、たらふく寿司を食べました。日本大すきな私は、日本に住み続けます(笑)。

 今回は以上です

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34 コメント

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Unknown (Owls)
2017-06-30 18:48:04
こんにちは

いつも為になるお話ありがとうございます

私も直接的な財産召し上げはないと考えています
よく終戦直後の事を引き合いに出される方がいますが、
あれはアメリカ占領下における出来事です
日本政府独自の政策ではなくGHQの政策なのです
また、GHQが認めない政策など実行できません
なにせ日本の法律の上にGHQが存在したのです

アメリカは日本の戦争指導階層である
財閥や地主、華族といった階層の人たちの
経済的弱体化及び解体を目指していました
単なる破綻処理ではありません
財閥解体や農地解放といった政策の一環です
そうした政策の巻き添えを食った一般国民もいただけです

ただ、日本の経済的弱体化を目指したものの
東欧や中国などが共産化していくのを脅威に感じ、
日本を経済的復興させた方が得策ということで
方針が転換していったのです

それと、強力な円安・インフレというのは
最強の資産税、財産召し上げじゃないでしょうか?

大多数の国民が長年コツコツ貯めていた預金を
あっという間に大幅に価値を減じさせてしまうのです
こんなに簡単で強力な資産召し上げ方法はありません(笑)
破たんは不可避。しかし・・・ (Jake Jack)
2017-06-30 20:37:24
財政破たんは時間の問題だと私は思います。しかし、その後の未来は意外と明るいような気がします。
そもそも、ここまで日本が追い詰められたのは、国民に危機感がなかったからだと思います。
財政破たんは、日本の大改革のいいきっかけになると思います。
分別管理 (救われた投資家)
2017-07-01 00:26:46
私も早くコメントするべきでした。
山一証券、三洋証券、南証券と破綻経験者ですが、資産は全額守られております。
分別管理も承知しており、銀行のMMFを購入するならば証券会社のMMFを他人に推奨しおります。

私は母親の扶養の為、海外への移住が不可能でしたが、林先生の米国債投資に出会い、画期的な打開策により、日本で安心して資産の90%以上を米国債に投資しております。

直近ではラダー式の個人年金の為の米国債購入も完了しておりますので、余剰金でゼロクーポン債ではなく利付債を購入して、利息収入により生活に余裕も生まれております。

特に面白いと思った利付債は2028年の償還の米国債ですが、5.25%の利息ですが、購入価格が額面に対して130を越えますので、償還時に損をします。元本分の減少を利息でもらうのに何故、人気があるかというと相続対策に向いている為です。
タワーマンションの様に資産の圧縮が可能です。
私の場合は妻への相続対策と同時に同年償還のゼロクーポン債の利益が相殺されるので節税になります。
資産運用 (定年退職)
2017-07-01 06:58:34
林先生、ご指導本当にありがとうございます。
新しい世界に目一杯チャレンジするのは、自分自身わくわく感と安心感が入り混じり、正直不安も隠せないところでした。

先生の適宜適切な説明とご指導は、こんな私には本当に凄く頼もしく、安堵感で一杯になります。
 ストレスフリーの米国債は「持ち切り投資」であることは、今まで勉強してきまして、十分理解しています。価格変動についても気にしないでいいことも理解しています。

今後は、債券ファンドバクチには、一切見むきをせず、地道に国債の利子を老後資産にあてて、楽しみたいと考えています。
儲け主義のブログには目をくれず、寝て暮らせるようにします。

30年物の米国債(3.0パーセント)の購入に向け待機中ですが、100を切れば飛びつきたいのですが、まだまだ難しいですね。
出来れば利率ももう少し上がった既発債が市場に出てくればと待っていますが、先生の以前のご指導に、トランプ政権の実情を睨んで「1年以内の分散投資」という内容がありましたので、待ちきれない内に、購入することになりそうです。

それともう一つ、役所時代に長年積み立てていました財形貯蓄が、昨年満期(530万)になり、年に2回、30万(計60万)が入ってきています。
10年確定ですので、70歳迄貰えば終わりになります。これも解約して、30年国債に移行しようかと思っていますが、どうでしょうか?

昨年から、会社が進めていた企業年金1600万に続いての解約国債移転計画です。(笑)
残すところは、スミセイの年金760万のみになりそうです。これだけは、終身で月5万入りますので続行します。

先生、今後ともよろしくお願いします。
著者何度も読み返しています。私にとって一番の教科書です。
今、思うこと (Puffin)
2017-07-01 10:04:48
意図は無かったのですが、お騒がせしてしまいました。

分別管理については理解しております。
ただ、日本経済そのものの破綻の際には、混乱が長期化して資産の回収に時間がかかった場合が問題だと思います。その時にリタイアしていて流動性資産が少ないとか、私が既に亡く家内が一人残された状態が一番心配です。
また、日本国債暴落が発生すれば、かなりの数の銀行が同時破綻することが予想されます。その際に預金保険機構は果たして機能するのか?したとしても、その上限はたった一千万。証券会社から資金を引き出す際には必ず銀行を介する必要があるのが、最大の弱点だと思います。

米国の銀行にチェッキングアカウントを開いてデビットカードを作ったことで、非常時の日々の生活費も自由に賄う事が可能になりました。証券会社との資金のやり取りも、ACHを使う利便性は日本には無い優れた制度です。米国債の購入も、日本での購入よりも安く購入ができるので、纏まった取引ではとても大きな差が出ました。

口座開設で一番厄介だったのは、日本との制度の違いでしょうか。日本には無い「共同口座」とか、証券会社の場合には取引出来る投資対象毎に必要な書類がいくつも必要だったり、投資対象についての理解力テストの様なものを受けさせられたり。全てが英語でのやり取りで、その全てを十分に理解した、との署名が必要です。

米国での証券口座開設の元々の目的は、別名「恐怖指数」Vix指数の先物の上場投資証券ETN(現物株に連動する上場投資信託ETF同様、指数に連動する上場商品)のカラ売り、がやりたかったからでした。その過程の中で、米国での米国債の売買の実態を知り、米国での投資に軸足を移すことにしました。
私が信用していないのは、日本の証券会社や銀行ではなく、現在の政権を握っている日本国政府そのものです。日本には愛着も感じておりますが、その政府がこの先も今の政権政党のままならば、いずれ見切りをつけることになりそうです。今の与党2つとその補完勢力の維新には、この37年間を通じて一度も投票したことはなく、今後も無いでしょう、多分「地球最後の日」まで(笑)。

税金処理については元々十分理解していたので、全ての資金の流れは克明に記録しております。長期投資に限ってなので、現在はbuy & hold onlyで含み益がひたすら積み上がるのみの状態で、日本の税務当局とのやり取りはだいぶ遠い先になります。

他にも同様に米国での投資をされておられる方々がいたのを知り、心強い限りです。

林先生のお話の腰を折る形になってしまいました。申し訳ありません。いよいよ佳境に差し掛かるお話の展開、楽しみにしております。
Jake Jackさんへ (林 敬一)
2017-07-01 17:26:14
>財政破たんは、日本の大改革のいいきっかけになると思います。

是非、そうなってほしいですね。大改革はせざるをえませんからね。

定年退職さんへ (林 敬一)
2017-07-01 17:31:31
ご理解いただいたようで、よかったです。

>今後は、債券ファンドバクチには、一切見むきをせず、地道に国債の利子を老後資産にあてて、楽しみたいと考えています。 儲け主義のブログには目をくれず、寝て暮らせるようにします。

そうですね、楽してエンジョイできるようにしましょう。

>それともう一つ、役所時代に長年積み立てていました財形貯蓄が、昨年満期(530万)になり、年に2回、30万(計60万)が入ってきています。
10年確定ですので、70歳迄貰えば終わりになります。これも解約して、30年国債に移行しようかと思っていますが、どうでしょうか?

あまり一気にもっていくよりも、アメリカの長期金利がポンと跳ね上がることがあれば、そのタイミングを狙う手もあると思います。

なかなかチャンスは回ってこないかもしれませんが。
Puffinさんへ (林 敬一)
2017-07-01 17:33:37
>意図は無かったのですが、お騒がせしてしまいました。
林先生のお話の腰を折る形になってしまいました。申し訳ありません。

どういたしまして。

おかげさまでみなさんが、破たんが起こるとどうなるかについて、大変興味を持たれていることが、よくわかりました。

アメリカの口座を持つメリットを詳しく説明していただき、ありがとうございます。

これもみなさんによい情報になったと思いますので、私からもお礼を申し上げます。

>日本の証券会社や銀行ではなく、現在の政権を握っている日本国政府そのものです。日本には愛着も感じておりますが、その政府がこの先も今の政権政党のままならば、いずれ見切りをつけることになりそうです。

全く同感です。

いつも申し上げますが、「日本は大すきですが、こんな政権と心中するつもりは全くありません。」キッパリ!
救われた投資家さんへ (林 敬一)
2017-07-01 17:36:35
>山一証券、三洋証券、南証券と破綻経験者ですが、資産は全額守られております。

うーん、さすが投資経験豊富な救われた投資家ですね。

>特に面白いと思った利付債は2028年の償還の米国債ですが、5.25%の利息ですが、購入価格が額面に対して130を越えますので、償還時に損をします。元本分の減少を利息でもらうのに何故、人気があるかというと相続対策に向いている為です。
私の場合は妻への相続対策と同時に同年償還のゼロクーポン債の利益が相殺されるので節税になります。

償還益と償還損の相殺、節税効果抜群ですね。

私は高齢の方へ、「元本など忘れて、できる限り長期債の高金利をエンジョイせよ」とアドバイスすることがありましたが、相続まで考慮しての節税策は思いつきませんでした。

日本人は元本を使えない人がほとんどなので、ゼロクーポン債に半分投資するより、その分も含めて全部クーポン付きにして2倍の金利をエンジョイせよ、がアドバイスでした(笑)。
Unknown (Unknown)
2017-07-01 18:18:31
林先生 すみません。😅

救われた投資家さんの
>特に面白いと思った利付債は2028年の償還の米国債ですが、5.25%の利息ですが、購入価格が額面に対して130を越えますので、償還時に損をします。元本分の減少を利息でもらうのに何故、人気があるかというと相続対策に向いている為です。
私の場合は妻への相続対策と同時に同年償還のゼロクーポン債の利益が相殺されるので節税になります。

償還益と償還損の相殺、節税効果抜群ですね。

この説明が理解出来ません。申し訳ありませんが分かりやすく説明頂けませんか。

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