映画俳優「小林桂樹」さん

映画俳優、小林桂樹(こばやしけいじゅ)さんが

テレビドラマに出演でスタジオに来られました



東宝映画の喜劇、社長シリーズで

主役の森繁久弥(もりしげひさや)さんの

真面目で頑なな秘書役の小林さんが

好きでした。このシリーズはかなり

長い間、回を重ねて制作されました



今井正監督の「ここに泉あり」で毎日映画コンクールの

助演男優賞を得ています

スタジオに来られた小林桂樹さんは

にこやかでスタッフに気を遣って

スタジオの雰囲気を盛り上げておられました



火曜サスペンス劇場（日本テレビ）

「弁護士・朝日岳之助(たけのすけ)」シリーズの

朝日岳之助 役の

小林桂樹さんが好きでした。

このシリーズの原作者が姉小路祐(あねこうじゆう)で

この作家の推理小説も好きでした。

テレビドラマのプレビュー

映画俳優さんがテレビドラマに

初めて出演されて驚かれるのは

スタジオのあちこちの映像モニターに

録画の画面が刻々と映し出されていることです



ＡＤさんが

「まもなく本番いきます…」

「本番５秒前、４、３、２…」

と叫んで手を振り下ろします

テレビではこの合図を

「Q(キュー)を出す」といっています



ＮＧもなく無事本番を終えると

ディレクターはスタジオのトークバックで

「いまの録画シーンのプレビューを行います…」と

スタジオ中の映像モニターに撮ったばかりのシーンが

映し出されます



映画では撮り終わったシーンは

粗編(あらへん)されたフィルムを

試写室で見て確認するのは

約一週間後になります

それがテレビでは撮り終わって

ビデオテープを巻き戻せば

すぐプレビュー(試写)できるのです

…　…　…

初めての映画俳優さんは

ビックリして感激なさいます。

スタジオの映像モニター

テレビスタジオには

テレビカメラでとらえた映像を

映し出す映像モニターがあちこちに

置かれています




映像モニターは長い間、ブラウン管式でした

大きくてで３２インチぐらいでした

ブラウン管式なので大きな箱です

スタジオのあちらこちらに動かせるように

キャスターがついていました



スタジオ・サブ(副調整室)の

マスター・モニター(マスモニ)は

明るさも色も正確で基準になる

モニターです



テレビドラマは数シーンずつ分割して撮ります

撮り終わったビデオをすぐその場で再生します

ＡＤさんが

「いまのシーンのプレビューを始めます…」と

叫ぶと、

スタジオ内の

俳優さん、スタッフは

あちこちのモニター前に集まります

俳優「緒形拳」さん

テレビドラマ「豆腐屋の四季」の

緒形拳（おがたけん）さんは

島田正吾（しまだしょうご）
、
辰巳柳太郎（たつみりゅうたろう）主役の

新国劇（しんこくげき）のホープでした



緒形拳さんはドラマで熱血青年のイメージで

新人、林隆三や

ベテラン、淡島千景、藤原釜足、

中原早苗それに若手、紀比呂子、川口晶

の中で熱演されました



この「豆腐屋の四季」は尻上がりの視聴率で

２クール、約半年続きました

Ａスタジオに豆腐屋のセットが半年間

建ちっぱなしになりました

…　…　…

ドラマ撮りのない日に薄暗いスタジオの

見慣れた豆腐屋のセットにやって来ると

いまにも緒形拳さん、淡島千景さん、

藤原釜足さん、中原早苗さんが

フレームインしてくるような

錯覚をおぼえました



プロデューサーの山内久司さんは

いつもドラマの

配役にぴったりの俳優さんを集めてくる

キャスティングの名人でした

テレビドラマ「豆腐屋の四季」

モノクロのテレビドラマに

「豆腐屋の四季」がありました

…　…　…

松下竜一の原作を脚色、

学歴もなく経済的にもめぐまれないが、

豆腐屋という仕事をこよなく愛する若い男と

それを囲む家族の物語でした。



豆腐屋の若い男に緒形拳(おがたけん)さんが

脇役は淡島千景(あわしまちかげ)、

藤原釜足(ふじわらかまたり)

中原早苗(なかはらさなえ)、紀比呂子(きのひろこ)

川口晶(かわぐちあきら)、林隆三(はやしりゅうぞう)



林隆三さんはこのドラマが

テレビ初出演だったようです

ライブハウスに飛び入りで

唄を…そしてピアノは玄人裸足でした

…　…　…

川口晶さんは女優、三益愛子(みますあいこ)さんの娘で

俳優、川口浩の妹です。

川口晶さんは緒形拳さんを相手にすばらしい

演技でした。

俳優「奈良岡朋子」さん

ベテラン女優の

奈良岡朋子(ならおかともこ)さんが

出演する、ドラマ台本を読みました

…　…　…

それまで何回もテレビドラマで

彼女を観ています

橋田壽賀子(はしだすがこ)の

東芝日曜劇場によく出られて

また、テレビに限らず映画の話題作にも

出演されていました

ジャンヌ・モローなど洋画の

声の吹き替えも担当されていました



彼女は宇野重吉(うのじゅうきち)、

滝沢修(たきざわおさむ)、大滝秀治(おおたきひでじ)

などの劇団民藝(みんげい)の創設に参加されました



石原裕次郎に尊敬され、

美空ひばりはじめ、池内淳子

黒柳徹子、岸本加世子、草笛光子

若尾文子など大物芸能人と

プライベートでも親交が深くとあります



テレビスタジオに

奈良岡朋子さんは１人でこられて

付き人はいませんでした

…　…　…

癖のある大物女優さんの多いなか

奈良岡さんはセットの待ち時間に

１人静かにスタジオで台本を読んでいて

ＡＤさんからは

「まったく手のかからない

大物女優さんだ」

と評判の俳優さんでした

映画俳優「長門裕之」さん

長門裕之さんは連続ドラマで

何度も来られました

時代劇も現代物も器用にこなす

俳優さんでした。

…　…　…

晩年の南田洋子さんで

ご苦労されました



映画の男優、女優さんには

演技の勉強をしながら身の回りの

世話をする付け人（付き人）さんがいます

…　…　…

テレビスタジオの出番待ちに

セットの片隅で俳優さんの

時間つぶしの世間話に付き合ったりしています



テレビ映画「暴れん坊将軍」の松平健さんは

かつて勝新太郎の付け人をしていたと聞きましたが

その時代の松平さんを私は知りません



長門裕之さんの付け人さんは

カメラ・リハーサルの長門さんのシーンを

コンパクトカメラ（銀塩フィルム時代）で

次々にスナップしていました

長門さんの注文なのでしょうか？



長門裕之さんのテレビ・ドラマ出演記録として

アルバムを作っておられたのでしょうか？

…　…　…

他のテレビ局でも撮っておられたのか

その付け人さんはテレビカメラの

邪魔にならないように身軽に動き回っていました

続・映画俳優「田村高廣」さん

あっちこっちのテレビ局で

ドラマにしょっちゅう出演される

脇役の俳優さんが

おられます。



ドラマにその俳優さんが

出演されると、スタジオの雰囲気が

明るくなって、しかもＮＧが少なく

ドラマ制作が楽しくなるのでしょう



スタッフに好かれる俳優さんの１人に

田村高廣さんも入るのでしょう

一時、どの局のドラマを観ても

田村さんはよく出演されていました



私が田村高廣さんを観た最後は

テレビドラマ「活動寫真の女」でした

このドラマで唯一カツドウ屋の雰囲気を

出しておられました。

…　…　…

映画俳優の長門裕之(ながとひろゆき)さんも

テレビドラマに来られました

映画俳優「田村高廣」さん

テレビドラマが生から

録画ドラマになったのと

「五社協定」が緩くなって

映画俳優さんが大勢

テレビドラマに進出されました



田村高廣(たむらたかひろ)さん

大卒後、サラリーマンから

彼の父親、阪東妻三郎(ばんどうつまさぶろう＝バンツマ)の

急逝で、松竹大船の木下恵介監督のすすめもあって

現代劇映画「女の園」でデビューします

…　…　…

この映画を観ているのですが

私の印象に残っていません

…　…　…

しかし山崎豊子原作の映画「白い巨塔」で

役名、里見脩二、医学部助教授の田村高廣と

もう１人、田宮二郎演ずる外科助教授が

印象的でした



その「田村高廣」さんが

テレビスタジオに現れました

彼の出演した映画の重厚な印象から

どんな俳優さんなのか興味がありました

…　…　…

ドライリハールに

田村さんはさわやかな笑顔での

登場でした

…　…　…

そのあと、カメラ・リハーサル

本番とわれわれスタッフに冗談を飛ばしながら

すばらしいスタジオ・マナーでした



この田村さんの普段着の雰囲気が

チラッとでもテレビに出れば

良いのにと思っていました

…　…　…

彼は、多くのテレビドラマや映画に出演して

数々の受賞をしています

続・嫁チャンポン

テレビ連ドラ「日本の嫁シリーズ」の

３番目「嫁チャンポン」のタイトル、

チャンポンは長崎名物の麺料理からでしょう

…　…　…

舞台は長崎で地元のＮＢＣ長崎ラジオ局

（テレビ・ラジオ兼営局）に

世話になったようでした



担当カメラマンに聞いた話です

大阪から遠路長崎へ大型中継車を運んで

長崎市内風景を録画したのち

長崎駅に列車を撮りにホームの外れに

カメラをセッティングしました



遠くから列車がホームに進入して来ます

列車はだんだん画面に大きく映り込んできます

カメラファインダーで列車のヘッド・マークを

見ると、なんと「さくら」とあります

…　…　…

当時、東京→長崎間の寝台特急に「さくら」が

走っていました。その「さくら」のヘッド・マークが

終着長崎駅のテレビカメラに向かってきたのでした

…　…　…

皮肉なことに「日本の嫁シリーズ」の提供スポンサーは

富士フイルムだったのでした



ヘッド・マーク「さくら」は同業、写真フィルム会社の

小西六写真(株)のちのコニカ（株）

のフィルム商品名でしたから、

せっかくのこのカットは没になりました