<昔からの疑問>
高校数学というより,遡れば小学校の算数で教わる錐の体積がなぜ「柱の体積の三分の一」なのかを,できれば小学生にもわかるように説明できないか,というのがずっと自分としての課題であった。というよりも,実際には,自分が「なるほど,そういうことだったのか」と腑に落ちるような直観的な説明を求めていると言う方が正確であろうか。
この問題は,自然数の2乗(平方数)の和の公式を直観的に理解したいという,見かけ上は別の動機とも密接な関連がある。
たて,よこ,高さがすべて 1 であるような 1×1×1 のブロック(もしくはセル)をたくさん用意し,平面上に
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のように n×n の正方形状に並べ,それらをピラミッド状に積み上げる。そんな図形的イメージに基づいて,どうにか平方数の和の公式が明らかであることを理解できないか,と思うのである。
<すでに誰かが考えていたというよくある話>
あれこれ考えていて,ふと Roger B. Nelsen 氏の "Proof Without Words", "Proof Without Words 2" という,MAA (Mathematical Association of America) から出版されている素晴らしい2冊の本のことを思い出した。果たして,"Proof Without Words" の p.77 に,Man-Keung Siu 氏の考案による,公式の成り立ちを3つのピラミッドの組み合わせで示した図版が載っている。それを見ると,ピラミッドはいわば四角錐であり,それらを3つ上手く組み合わせるとほぼ直方体になるという,四角錐の体積の公式の由来も理解できる。
それ以外にも,並べられた数式をじっと眺めるだけで公式の成り立ちがすぐにわかるような図版があり,すでに私の試みは海外の多くの人々の手で見事に成し遂げられていることが判明した。
とはいえ,自分なりに考えた,PWWとPWW2.0のいずれにも載っていない(気がする)証明を,せっかくなので紹介したいと思う。ただし,それらの説明が本当に理解してもらえる相手は,数学が得意な高校生以上ということになるような,そんなクオリテイーであることをあらかじめ断っておく。
<その一>
平方数の和を,和の計算がしやすそうな別の形に分割するというのがひとつの方向性である。そうした和の崩し方のひとつとして,ピラミッドの絵をじっと見て次のような切り分け方を見出した。しかしながら,その図を用いて解説するのはここでは(技術的に・・・)難しいので,数式を用いて説明する。
予備知識として,各平方数は奇数の和で表せる,という事実が必要である。
12=1,
22=1+3,
32=1+3+5,
52=1+3+5+7,
...,
n2=1+3+5+7+...+(2n-1)
さて,この左辺をすべて足したものが平方数の和である。一方,右辺に目を向けると,縦に並んだ数ごとに和をとることにすれば
1 は n 個,
3 は n-1 個,
5 は n-2 個,
...,
2n-1 は 1 個あるので,
という等式が成り立つことがわかる。この右辺を変形すると
となるので,上に述べた奇数の和は平方数であることを再び用い,さらに 1+2+...+n=n(n+1)/2 であることは知っているものとすれば,
となり,これから直ちに
Σk2=n(n+1)(2n+1)/6
が得られる。なお,この説明の仕方によると,右辺の因数のうち,2n+1 の成り立ちが
2(n-1)+3
であったということになる。
かつて高校でこの公式を習ったとき,当時の数学教師が
「n かける n+1,そしてこの二つを足した 2n+1 をかける」
といった説明をしていたのが強く印象に残っているのだが,2n+1=n+(n+1) という,なんとなく台形の面積の公式を彷彿とさせるような計算が自然と現れるような説明はできないものか,というのが私の中では未解決な課題である。
<予告>
さて,3つのピラミッドをうまく分割したものを組み合わせて直方体に近い立体を作る,という,上に述べたものとは別の方向性で編み出したもう一つの解説は,稿を改めることとする。図版を自分で作成してブログに載せるのは私の技量を超えているので,またもや数式の技巧的な変形に頼った説明になってしまいそうだが,その点はご海容を乞う次第である。
高校数学というより,遡れば小学校の算数で教わる錐の体積がなぜ「柱の体積の三分の一」なのかを,できれば小学生にもわかるように説明できないか,というのがずっと自分としての課題であった。というよりも,実際には,自分が「なるほど,そういうことだったのか」と腑に落ちるような直観的な説明を求めていると言う方が正確であろうか。
この問題は,自然数の2乗(平方数)の和の公式を直観的に理解したいという,見かけ上は別の動機とも密接な関連がある。
たて,よこ,高さがすべて 1 であるような 1×1×1 のブロック(もしくはセル)をたくさん用意し,平面上に
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のように n×n の正方形状に並べ,それらをピラミッド状に積み上げる。そんな図形的イメージに基づいて,どうにか平方数の和の公式が明らかであることを理解できないか,と思うのである。
<すでに誰かが考えていたというよくある話>
あれこれ考えていて,ふと Roger B. Nelsen 氏の "Proof Without Words", "Proof Without Words 2" という,MAA (Mathematical Association of America) から出版されている素晴らしい2冊の本のことを思い出した。果たして,"Proof Without Words" の p.77 に,Man-Keung Siu 氏の考案による,公式の成り立ちを3つのピラミッドの組み合わせで示した図版が載っている。それを見ると,ピラミッドはいわば四角錐であり,それらを3つ上手く組み合わせるとほぼ直方体になるという,四角錐の体積の公式の由来も理解できる。
それ以外にも,並べられた数式をじっと眺めるだけで公式の成り立ちがすぐにわかるような図版があり,すでに私の試みは海外の多くの人々の手で見事に成し遂げられていることが判明した。
とはいえ,自分なりに考えた,PWWとPWW2.0のいずれにも載っていない(気がする)証明を,せっかくなので紹介したいと思う。ただし,それらの説明が本当に理解してもらえる相手は,数学が得意な高校生以上ということになるような,そんなクオリテイーであることをあらかじめ断っておく。
<その一>
平方数の和を,和の計算がしやすそうな別の形に分割するというのがひとつの方向性である。そうした和の崩し方のひとつとして,ピラミッドの絵をじっと見て次のような切り分け方を見出した。しかしながら,その図を用いて解説するのはここでは(技術的に・・・)難しいので,数式を用いて説明する。
予備知識として,各平方数は奇数の和で表せる,という事実が必要である。
12=1,
22=1+3,
32=1+3+5,
52=1+3+5+7,
...,
n2=1+3+5+7+...+(2n-1)
さて,この左辺をすべて足したものが平方数の和である。一方,右辺に目を向けると,縦に並んだ数ごとに和をとることにすれば
1 は n 個,
3 は n-1 個,
5 は n-2 個,
...,
2n-1 は 1 個あるので,
という等式が成り立つことがわかる。この右辺を変形すると
となるので,上に述べた奇数の和は平方数であることを再び用い,さらに 1+2+...+n=n(n+1)/2 であることは知っているものとすれば,
となり,これから直ちに
Σk2=n(n+1)(2n+1)/6
が得られる。なお,この説明の仕方によると,右辺の因数のうち,2n+1 の成り立ちが
2(n-1)+3
であったということになる。
かつて高校でこの公式を習ったとき,当時の数学教師が
「n かける n+1,そしてこの二つを足した 2n+1 をかける」
といった説明をしていたのが強く印象に残っているのだが,2n+1=n+(n+1) という,なんとなく台形の面積の公式を彷彿とさせるような計算が自然と現れるような説明はできないものか,というのが私の中では未解決な課題である。
<予告>
さて,3つのピラミッドをうまく分割したものを組み合わせて直方体に近い立体を作る,という,上に述べたものとは別の方向性で編み出したもう一つの解説は,稿を改めることとする。図版を自分で作成してブログに載せるのは私の技量を超えているので,またもや数式の技巧的な変形に頼った説明になってしまいそうだが,その点はご海容を乞う次第である。