ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

寶壽司 @名古屋市中区・大須 (2)

2024年02月07日 | 名古屋(中区 老舗)

大須商店街近辺を散策。昼呑み出来る店も沢山あったが、あまりピンとこず。この日選んだのは大須観音通り東口の「寶壽司(宝寿司)」。創業は明治35年(1902)。いかにも昔からの寿司屋然とした佇まい。暖簾をくぐるとなかなか賑わっていた。入口近くのテーブル席に腰掛け、品書きを眺める。漬け場では老主人も健在。その隣の若いのは息子さんかな。お願いしたのは「ちらし寿司・赤だし付」。「お酒」もぬる燗でつけてもらうことに。落ち着いた店内で出来上がりを待つ。外から聞こえてくるのは向かいのトルコアイス売場の例の”渡さないパフォーマンス”の喧騒のみ(笑)。

銘の入った蓋付きの重箱で「ちらし寿司」が届けられた。蓋を開けるとおぼろ(でんぶ)がまぶされた酢飯の上に、まぐろ、白身、海老、穴子、たこ、玉子が敷き詰められ、いくつかのタネの上にはツメが塗ってある。色からするとかつての名古屋名物「切寿司」にも使っているあのツメだろう。紅生姜とわさび添え。なぜか時間のかかった酒も袴を履いた徳利でやっと来た。次はこれ、次はこれとタネをつつきながら酒をいただく。例のツメは所謂”煮ツメ”とはちょっと違って、色も濃くて酸味もあるし、なんとなく味噌っぽい風味もあるもの。玉子や海老にのせてあるのだが、酒のつまみとしても面白い。自分は昨今流行りの海鮮丼とかには全く興味が無く、ふだん”ちらし”は”ばらちらし”がある時しか頼まないが、このクラシックなちらしはなかなかイイ感じだった。勘定してもらうと申し訳ない位の安さ。次はカウンター席に腰掛けさせてもらおうかな。(勘定は¥1,200)

以前の記事はこちら (1

 

 


 

↓ 白川公園の南、若宮通沿いにある「古民家cafe たとか」(建築詳細不明)。ビルとビルの間にひっそりと建つ。築70年というから戦後すぐ位の建築だろうか。2019年からカフェとして営業していたそうだが、現在は休業中みたい(未確認)。

 

 


 

 

 

大須 寶寿司

愛知県名古屋市中区大須2-17-7

 

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廣寿司本店 メイチカ店 @名古屋市中村区・名駅 (2)(※閉店)

2023年02月20日 | 名古屋(中村区・西区 老舗)

現在では”名古屋めし”なんて言われて話題に挙がったりすることも多い名古屋圏独自の食べ物。全国的に認知されたものもあって度々テレビ、雑誌などでも紹介されている。その中で、昔は名物と認知されていたはずけれどだんだん廃れ、今では話題にも挙がらなくなってしまったのが「切り寿司」。自分は小さい頃に食べた記憶があったのだが、最近は市内の寿司屋でも見かけることが無い。町場の寿司屋にはひょっとして残っているかもしれないが、自分の知っている有名な所では「東鮓本店」(注・広小路本店は新装開店のちすぐ閉店)、今回訪れた「廣寿司」、大須の「寶壽司」ぐらいか。久しぶりにあのちょっと変わった寿司を食べようかと名古屋駅の地下街「メイチカ」にあるこちらへ足を延ばした。

店はメイチカでも狭い改札前の通りから折れた広くなっている所にある。明治38年(1905)創業という長い歴史を持つが、メイチカ店は地下鉄東山線の開通と同時というから昭和32年(1957)の開店だそう。店に入ると先客が3組程。小さいテーブル席が12程あるが、やはり年配の客が多い様子。鰻を召し上がっている人が多い。品書きはランチ用のものを渡されたので載っていなかったが、店頭のショーケースにサンプルがあった「名物セット」と、「菊正宗・生酒」をお願いする。すぐに「菊正宗」の生貯蔵酒の一合瓶と付き出しの玉こんにゃくが届けられた。

先に酒に口を付けていると寿司桶に入った「名物セット」が運ばれた。赤出汁と高野豆腐の煮物の入った小鉢付き。桶の中は切寿司と、秋冬限定というさば寿司が半々で4切れづつ。どちらも押し寿司なので量は充分。切寿司は味が濃いのでさば寿司から。なかなか身の厚い鯖で、酢飯との間に”でんぶ(おぼろ)”が挟んである。酢締めの具合はほどほど。酢飯がやや甘めなのは古い名古屋の寿司屋らしい。途中で酒を挟みながら、次は目当ての切寿司。切寿司は穴子と角麩を使った押し寿司で、上から甘くてしょっぱい煮つめがたっぷりと塗ってある(←本来はハエ=ハヤを使い、穴子の煮汁でつめを作るのだとか)。半分は角麩だし、つめの味は濃いので穴子の風味はほとんど分からない。なぜこれが名古屋独自の味とされていたのか不思議と言えば不思議。酸味があるので口中は独特の風味で満たされる。酒と玉麩の浮いた赤出汁で口をリセットしつつ2種類の寿司を楽しんだ。飯の量は多いのでお腹もいっぱいに。(勘定は¥2,480)

以前の記事はこちら (1

<追記>今年に入って「メイチカ」が3月末に閉鎖されると報道された。リニア中央新幹線の開業(←出来るのか?)に向けての工事などの都合なのだとか。するとここにある「コンパル・メイチカ店」や「銀座ライオン・地下鉄名駅店」も無くなってしまうことに。特に執着する何かがある訳ではないが、小さい頃から何度も訪れた場所でもあるのでもう一度ぐらい行っておこうかな。

 

 


 

↓ 閉鎖が決まった「メイチカ」。現在入店しているのは18店舗。地下鉄の改札の目の前で人通りも多く、その名は名古屋の人なら誰でも知っているが、その割に範囲はそう広くない。

 

 

 


 

 

廣寿司本店 メイチカ店

愛知県名古屋市中村区名駅3-104-15 名古屋駅地下街メイチカ内

※メイチカ閉鎖により令和5年3月末を以って閉店しました

 

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廣寿司本店 @名古屋市中村区・名駅 (※閉店)

2017年05月29日 | 名古屋(中村区・西区 老舗)

最近は姿を見ることが少なくなってしまったかつての名古屋名物「切り寿司」。いわゆる押し寿司なのだが、古い店に僅かに残っているものの、作っている店を見ることは稀だ。そんな少ない店のひとつ、創業明治38年(1905)という「廣寿司本店」へ。店は迷宮と揶揄される名古屋駅地下街のひとう「メイチカ」にある。戦前にはたくさんの店舗があったらしいが戦火で消失し、昭和28年に柳橋に店を出したのだとか。現在はここともう1軒(名駅のうまいもん通り)かな。人通りの多い地下街だけれど、ここは少し外れた場所。店はこじんまりとして小さいテーブルが10卓程並んでいる。調理人は白衣にネクタイ、給仕の女性は2名ほど。外れた時間だったので先客はおらず、のんびりとした雰囲気だった。「切寿司」の4カン、それに菊正宗の「かん酒」を注文した。

先にかん酒が運ばれる。枝豆付き。キクマサの180ml瓶で燗をつけ、はかまを付けて猪口と一緒に出された。枝豆をつまみながら一杯やっていると「切寿司」が運ばれた。穴子と角麩が押されていて、たっぷりと”つめ”が塗られている。どの店で食べても甘いが、この店のつめは中でもかなり甘い(ように思う)。つめがかなり濃いため、穴子と角麩の区別がつかないほど。独特の酸味もあって他ではあまり味わえない味だろう。自分は興味があって切り寿司を食べ歩いているが、もう食べたことのある人の方が少ないかも。”絶滅危惧メシ”をいただきながらのんびり一杯やるのもオツなものだ。こちらさば寿司も名物らしいので、次は両方入った「名物セット」をいただいてみよう。(勘定は¥1,200程)

この後の記事はこちら (2

 

廣寿司本店 メイチカ店

愛知県名古屋市中村区名駅3-14-15

※メイチカ閉鎖により令和5年3月末を以って閉店しました

 

( 名古屋駅 名駅 めいえき メイチカ 名古屋地下街 名駅前メイチカ店 ひろずし ひろずしほんてん 広寿司 切り寿司 きりずし 名古屋名物 鯖寿司 )

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東鮓本店 @名古屋市中区・伏見 (※閉店)

2016年08月29日 | 名古屋(中区 老舗)

創業明治元年(1869)という名古屋きっての老舗、伏見の「東鮓本店」。ひと昔前は古体な店構えだったらしいが、通りに面している店舗は鮨屋とは思えない、なんともエキセントリックな建物になっている。屋根にはオブジェ(?)ののったこの変わった建物は調べてみてもあまり取り上げらておらず、設計が誰とかはよく分からなかった。こちらの鮨は昔、地下街にある店で食べたことがあるはずだが、本店に入るのは初めて。老舗ではあれど、自分の中ではファミリー向け安価路線のイメージを引きずってしまっていた。食品サンプルの並んだショーウインドーを眺めながら明るい店に入ると、意外にも(失礼)ほぼ満員の盛況。年輩の方や地元の家族連れが多く、しっかり根付いているのだろう。

こちらの江戸前握りは食品サンプルやメニューの写真などを見ても何となく想像がつく感じだが、目当てだったのは、名古屋の鮨としてもはや忘れ去られようとしている”切り寿司”。押し寿司だが、関西のものが伝わったのか、それとも名古屋独自のものなのかどうかは知らないのだが、甘めの寿司飯に穴子や角麩などがのり、しっかり甘いツメ(テリ)が塗られているものだ。幼少の頃は地下街のショーウインドーで食品サンプルのその姿を見たし、まだ何軒か名物として供しているがあるので食べてみたが、もう絶滅危惧の品目と言っていいんじゃないだろうか。入れ込みの大テーブルに座り、品書きから「切りすし取り合わせ」を注文する。

こちらは漬け場はどこにあるかも分からず、全て厨房内で調理するよう。しばらくして「切りすし」が運ばれた。穴子4つに、しば漬け4つという取り合わせ。全部穴子だと甘過ぎて辛いのでなかなかいい取り合わせ。穴子をつまんでみるが、ツメ(テリ)はしっかりと甘く、少し酸味も感じられて独特。他の店では真っ黒に近い濃い色の事が多いツメも、こちらの店では淡い色。次にしば漬けをいただくと口の中がいい案配に。しっかりと押してあるように見えてあまり硬くはなく、食べ易い。正直、食品サンプルやメニューの商業写真ではあまり旨そうに見えないこちらの寿司だが、しっかりと伝統の味は継承されているようす。次は握りもたべてみようかナ。中庭や古く風情のある別間もあり、たぶん昭和28年の建築というのはこの裏の日本建築を指すのだろう。格式の高さを残す老舗ではあるが、この夏を以って取り壊し、ビルを建てるらしい。建物や庭を含めた歴史こそ、この店が誇れるアイデンティティーだと思うのだが…。建物の維持って難しいナ。(勘定は¥930)

※平成28年8月を以って建て替えの為閉店しています

※新築なったビルに入店していましたが令和4年9月30日を以って閉店されました

 


 

 ↓ 本町通の中日病院の近くにある古色蒼然としたビル「坂文種報徳会ビル」(昭和6年・1931・建造)。このビルだけ荒れかたが酷いので将来的にリノヴェーションは望み薄だろうか。

↓ 伏見にある「伏見地下街(長者町地下街)」の入口。昭和32年(1957)の開業で、当時は繊維問屋ばかりの出店だったそうだ。2013年のアートイベントから何だかガンダム的なデザイン塗装が施され、地下の通りにもトリックアートが描かれたりしている。このところ面白そうな飲食店が相次いで開業している。

 

 


 

 

東鮓本店 広小路本店

愛知県名古屋市中区栄1-5-21

 

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大須 寶寿司 @名古屋市中区・大須

2014年06月04日 | 名古屋(中区 老舗)

Photo_6

日曜日の昼どき、大須観音の境内で行われていた骨董市をひやかし、老若男女がひしめくアーケード街へ。さすがに休日とあってどこの店も客が多く、とても賑やか。一時(と言っても20年以上前か…)は随分と寂れた印象を持ったこともあったけれど、最近の大須は飲食店に限らず路地の奥にまで様々な国籍の新しい店が出来ていて活気がある。近隣を歩いていて観光の案内板を読み、「大須」の地名のルーツが岐阜県にあることも初めて知った。さて、昼食を求めてうろうろするも、今日は大きな文字看板のある老舗の鮨屋「大須寶寿司(たからずし)」へ。

Photo_5

以前読んだムックで「切寿司」が紹介されていたので一度食べてみたかった。そういえば小さい頃、親に連れられて名駅の地下街を歩いていると寿司屋のショーケースのサンプルに通常の一人前の握り鮨に加えて「切寿司=押し寿司」があったような…(あいまいな記憶です)。もちろん自分でお金を払って鮨屋を巡るようになっても、基本は握り鮨ばかり食べているので、名古屋の古いお店で切寿司を食べた事はない。昔はどこにでも普通にあったと聞いた事があるが、今も品書きに加えているところは他にあるのかな。

店に入ろうとしたもののあいにく客でいっぱい。人気あるんだなぁ。しばらくしてカウンターに空きが出来たので座らせてもらい、「きり寿司」を注文。年輩の方が多いが、みな「ちらし寿司」を召し上がっていらっしゃる。そういえば表に”お値打ち”と看板が出てました。カウンターの中では黙々と主人が寿司を握っている。隣には若い衆も。しばらくして主人が古い木枠を用意したので、自分のきり寿司だろうな、と予想する。タネのケースで手元は見えないが、グッと体重をかける仕草が見えたので間違いない。すぐに主人から鮨桶に入った「きり寿司」が渡された。

※ ちなみにムックでは「切寿司」、店のショーケースでは(たしか)「きり寿司」と表記されていました

四角に近いきり寿司が7つほど。ちょっと大きさと量にひるむ。寿司の上にはたっぷりと焦げ茶色をしたたれが塗られている。見た目では分かりづらいが、上にのっている具は煮穴子と玉子のようです。まず一口で放り込む。甘めのたれと酢飯が一体となる。最初はいわゆる煮ツメかなと思ったのだが、味わった感じではまるで八丁味噌のような味わいと酸味も感じる(確証も自信もありません)。たれの味が甘く、濃いので、途中で生姜を口に入れたり、お茶を啜りながら食べていく。ひと桶丸々同じ味なので単調になるのは仕方がないが、酢飯それ自体は素朴で、他にないたれとの組み合わせを楽しんだ。

次々と客が訪れ混んではいても、店内の雰囲気はのんびり。テレビで流れている「NHKのど自慢」とそれに反応しているお客さんに日曜を感じながら下町のひと時を過ごす。他にない味だから、この寿司の発祥に興味が湧いてきたなぁ。(勘定は¥700)

この後の記事はこちら (2

「にこみのたから」(ご兄弟の店)の記事はこちら

 

大須寶寿司

愛知県名古屋市中区大須2-17-7

 

( 大須宝寿司 寶壽司 宝寿司 寶鮨 おおすたからずし 切り寿司 切寿司 きりずし 味噌にこみたから )

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