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国際秩序の行方

2017年06月20日 | 研究活動
ヘンリー・キッシンジャーは、歴史学と(国際)政治学を見事に融合させた、偉大な学者であり実務家でしょう。90歳を越えるキッシンジャーは、今でも精力的に執筆活動を行っており、新著『国際秩序』(伏見威蕃訳、日本経済新聞出版社、2016年〔原著2014年〕)も、読み応えのある刺激的な良書でした。

本書の主旨は明確です。すなわち、国際秩序の基盤となりうるのは、主権国家からなるウェストファリア体制である、ということです。そして、国際秩序は正統性と力から成り立っており、これら二つの要因をいかに均衡させるかが、秩序を左右するのです。



もちろん、こうした主張は、グローバル化が進む今日においては、あくまでも主権国家が主役とする言説は、とても保守的なものに見えます。また、キッシンジャーの議論は、かれが国際秩序のモデルとする「ヨーロッパ協調」への郷愁ともとらえられるでしょう。だからといって、ウェストファリア方式に代わるものがあるかと問われれば、答えは「ノー」と言わざるを得ないでしょう。

現在の国際秩序は、さまざまな挑戦を受けています。ほころびを見せているのです。これにどう対応するかが、今後の世界の行方を左右することになります。このことについて、キッシンジャーは、以下の処方箋を提示しています。

「国際システムの再建は…最大の難問である。…地域間の抗争が、かつての国家間の抗争よりもひどい衰弱をもたらすおそれがある。現代の世界秩序の探求には、さまざまな地域『内』の秩序の概念を確立する統一のとれた戦略が求められる。そして、その地域秩序を結びつけて、ひとつの秩序にする。…過激な運動の勝利は…世界その他の地域にとって脅威となる。…私たちの時代は、重大な見通しに直面しているのだから、惨禍に呑み込まれる前に必要な行動をとらなければならない」(420-423ページ)。

卓見です。こうしたスケールの大きな分析と地に足のついた提言をできる研究者は、はたして世界に何人いるでしょうか。キッシンジャーは、秩序再建の戦略を明らかにはしていませんが、おそらくアメリカのリーダーシップにもとづき、価値を共有する主要国による「ウェストファリア体制の現代化」戦略の構築とその実践ということになるのでしょう。



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