11月15日
深夜、特養の申し込み書を郵送すため、郵便局の本局で締め切り日の消印を押してもらって投函した帰りの出来事。
親父が倒れてからは、病院への行き帰りはほとんど親父の車を使っている。
バイクの方が早いが、大抵は何らかの荷物や書類などもあるので、そうしていた。
帰り道、コンビニに寄り、あと2.3分坂を下って行けば自宅と言う辺りで、
女の人が道路の片隅に座って手を上げている。
今迄もこういった事は何度か有った。
ダッシュボードの『自家用』と書かれたプレートに気付かず、
営業中のタクシーだと思って手を上げてくる人が何人かいた。
大抵の場合は、手のひらを左右に振って『ダメダメ』合図を出して、
自家用のプレートを指差しながら通り過ぎていた。
でも今では屋根の『個人』と書かれたカタツムリのマークも取り外しており、
最近はそういった事は全然無かった。
しかし今回は少し“妙”だ。
タクシーを拾うような場所ではない。
住宅街の外れの暗い道だし、人通りなどほとんど無い。
飲んだ帰りなのか、散歩中だったのか分からない、が、どうも動けないようだ。
『目が合った』
酔っ払いには見えない。
目が生きている。
遭難した登山者が、助けを求めている時のような目に近かった。
久々の人助け、“プチ紳士”の出番である。
狭い道だから通り過ぎた所に車を寄せて止める。
小走りで近づくと、黒っぽいトレーナーの上下を着た色白の年配の女性だった。
座るというより、動けなくてしゃがみ込んでいる感じで、
手には小さなバックと犬を連れていた。
聞けば、犬の散歩をしていて、転んでしまい動けなくなってしまったと言う。
「お金はお支払いしますから、家まで乗せていってくれませんか」
もちろんお金なんか貰うつもりも無い。
だいいち、そんな問題ではない。
お安い御用と家まで乗せてあげると伝えた。
しかし、どうも立つのも無理なようだ。
転んだ時に足から「ポキッ」と音がしたって言う。
『折れている』
私も骨折の経験者だから、まず間違いない。
財布も携帯も持たずに出てきたので、車が通るまで、
ここにしゃがんで待っていたらしい。
このまま、地べたに座らしておく訳には行かない、
取り合えず車に乗せて、送って上げる事にした。
病院にはご主人か、息子さんの車で行くつもりなんだろう。
歩けない人を車に乗せるのは、おやじの介護で慣れているので自身があった。
先にミニチュア・ダックスフンドを車に乗せるが2度共だめ、直ぐに“お母さん”の所に戻ってしまう。
しかた無いのでリードは
片ひざをついて
「私に抱きつくようにして首と肩に手を回してください」
初対面の異性で他人、だから遠慮がある。
それに怖さも有るので相手もなかなか体を預けてくる事が出来ない。
平均の身長だが、体重はかなり上回っている、その事も気にしている。
安易に考えていたのだが、実際は“親父”より難しくて重かった。
すこし無理をさせてしまった気がするが、何とか乗り込んでもらい家まで送る。
だが話を聞いてみるとここに来てももしょうがない、独り暮らしなので家には誰もいない。
ならば、このまま病院まで送ると伝えたが少し躊躇する。
気を使っているのが分かる。
けっこう重症そうだし、早く連れって行ったほうが良い。
S病院の夜間救急を利用した経験を話し納得してくれたようだ。
しかし、どうしても一度家に寄りたいと言う。
こういった状況だからお金や保険証は、後で大丈夫だと話すが、
「入れ歯が無いから」
「犬も家に連れて行かなければなんないから」と言う。
おやじの入院時を思い出した。
3月、倒れてS病院に行く時、携帯や着替え、腕時計などの身の回りの物を随分持ち込んで救急車に乗り込んだ。
いらない、後で持って行くから、持ち込めない物だから。
いくら言っても聞かないので、しかたなくその通りにしてようやく救急車の乗ったが、これが後々問題になってしまったのだ。
かなりの現金を隠し持っていたようで、後日、持って帰れと看護婦から電話で呼び出されてしまった。
「犬を家に連れて行かなければなんないから」
これだけなら、鍵を渡して貰って犬を家の中に入れれば済むだけの話である。
やはり持ち出したい物があるのだろう。
マンションの1階だが階段を使わなくてはならない。
リスクが大きい。
折れた足は痛くて地面に着ける事すら出来ないはずだ。
まして、うっかり体重でも掛けてしまえば大変だで、
それで開放骨折にでもなったら目も当てられない、緊急手術だ。
「入れ歯が無いから」は半分本当だろうが、おそらく、それを含めて、最低限の身だしなみグッズを持って行きたいのだろう。
『手を貸してくれている人』には言いづらい事だろうし。
それと、現金。
ついでが、保険証と携帯電話、手帳が入ったバッグ。こんなところだろうか。
女性はそういった事を非常に気にするものだ。
この人も日焼けの無い綺麗な肌をしている処を見るとお洒落さんなのだろう。
亡くなった母親も最後までそうだったから良くわかるのだ。
この時、救急車の話も出たが、経験上時間が掛かるのを知っているので、聞き流した。
深夜の救急は、とにかく時間が掛かる。
彼ら救急隊員の仕事の半分は、車内の無線や電話で受け入れの救急病院を探す事だ。
現場到着後、行き先が決まる迄、救急車はそこから動かないのだ。
だから時間が掛かる。
書きかけだった物を加筆、修正しました。
深夜、特養の申し込み書を郵送すため、郵便局の本局で締め切り日の消印を押してもらって投函した帰りの出来事。
親父が倒れてからは、病院への行き帰りはほとんど親父の車を使っている。
バイクの方が早いが、大抵は何らかの荷物や書類などもあるので、そうしていた。
帰り道、コンビニに寄り、あと2.3分坂を下って行けば自宅と言う辺りで、
女の人が道路の片隅に座って手を上げている。
今迄もこういった事は何度か有った。
ダッシュボードの『自家用』と書かれたプレートに気付かず、
営業中のタクシーだと思って手を上げてくる人が何人かいた。
大抵の場合は、手のひらを左右に振って『ダメダメ』合図を出して、
自家用のプレートを指差しながら通り過ぎていた。
でも今では屋根の『個人』と書かれたカタツムリのマークも取り外しており、
最近はそういった事は全然無かった。
しかし今回は少し“妙”だ。
タクシーを拾うような場所ではない。
住宅街の外れの暗い道だし、人通りなどほとんど無い。
飲んだ帰りなのか、散歩中だったのか分からない、が、どうも動けないようだ。
『目が合った』
酔っ払いには見えない。
目が生きている。
遭難した登山者が、助けを求めている時のような目に近かった。
久々の人助け、“プチ紳士”の出番である。
狭い道だから通り過ぎた所に車を寄せて止める。
小走りで近づくと、黒っぽいトレーナーの上下を着た色白の年配の女性だった。
座るというより、動けなくてしゃがみ込んでいる感じで、
手には小さなバックと犬を連れていた。
聞けば、犬の散歩をしていて、転んでしまい動けなくなってしまったと言う。
「お金はお支払いしますから、家まで乗せていってくれませんか」
もちろんお金なんか貰うつもりも無い。
だいいち、そんな問題ではない。
お安い御用と家まで乗せてあげると伝えた。
しかし、どうも立つのも無理なようだ。
転んだ時に足から「ポキッ」と音がしたって言う。
『折れている』
私も骨折の経験者だから、まず間違いない。
財布も携帯も持たずに出てきたので、車が通るまで、
ここにしゃがんで待っていたらしい。
このまま、地べたに座らしておく訳には行かない、
取り合えず車に乗せて、送って上げる事にした。
病院にはご主人か、息子さんの車で行くつもりなんだろう。
歩けない人を車に乗せるのは、おやじの介護で慣れているので自身があった。
先にミニチュア・ダックスフンドを車に乗せるが2度共だめ、直ぐに“お母さん”の所に戻ってしまう。
しかた無いのでリードは
片ひざをついて
「私に抱きつくようにして首と肩に手を回してください」
初対面の異性で他人、だから遠慮がある。
それに怖さも有るので相手もなかなか体を預けてくる事が出来ない。
平均の身長だが、体重はかなり上回っている、その事も気にしている。
安易に考えていたのだが、実際は“親父”より難しくて重かった。
すこし無理をさせてしまった気がするが、何とか乗り込んでもらい家まで送る。
だが話を聞いてみるとここに来てももしょうがない、独り暮らしなので家には誰もいない。
ならば、このまま病院まで送ると伝えたが少し躊躇する。
気を使っているのが分かる。
けっこう重症そうだし、早く連れって行ったほうが良い。
S病院の夜間救急を利用した経験を話し納得してくれたようだ。
しかし、どうしても一度家に寄りたいと言う。
こういった状況だからお金や保険証は、後で大丈夫だと話すが、
「入れ歯が無いから」
「犬も家に連れて行かなければなんないから」と言う。
おやじの入院時を思い出した。
3月、倒れてS病院に行く時、携帯や着替え、腕時計などの身の回りの物を随分持ち込んで救急車に乗り込んだ。
いらない、後で持って行くから、持ち込めない物だから。
いくら言っても聞かないので、しかたなくその通りにしてようやく救急車の乗ったが、これが後々問題になってしまったのだ。
かなりの現金を隠し持っていたようで、後日、持って帰れと看護婦から電話で呼び出されてしまった。
「犬を家に連れて行かなければなんないから」
これだけなら、鍵を渡して貰って犬を家の中に入れれば済むだけの話である。
やはり持ち出したい物があるのだろう。
マンションの1階だが階段を使わなくてはならない。
リスクが大きい。
折れた足は痛くて地面に着ける事すら出来ないはずだ。
まして、うっかり体重でも掛けてしまえば大変だで、
それで開放骨折にでもなったら目も当てられない、緊急手術だ。
「入れ歯が無いから」は半分本当だろうが、おそらく、それを含めて、最低限の身だしなみグッズを持って行きたいのだろう。
『手を貸してくれている人』には言いづらい事だろうし。
それと、現金。
ついでが、保険証と携帯電話、手帳が入ったバッグ。こんなところだろうか。
女性はそういった事を非常に気にするものだ。
この人も日焼けの無い綺麗な肌をしている処を見るとお洒落さんなのだろう。
亡くなった母親も最後までそうだったから良くわかるのだ。
この時、救急車の話も出たが、経験上時間が掛かるのを知っているので、聞き流した。
深夜の救急は、とにかく時間が掛かる。
彼ら救急隊員の仕事の半分は、車内の無線や電話で受け入れの救急病院を探す事だ。
現場到着後、行き先が決まる迄、救急車はそこから動かないのだ。
だから時間が掛かる。
書きかけだった物を加筆、修正しました。