with クロワッサン

北ドイツの風をお届け☆
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白か黒か

2012-12-26 01:13:50 | フースバル
スタジアムの治安強化コンセプトに反対するアクションが始まって、4試合目。
12月16日にヴェーザーシュタディオンでニュルンベルク戦が行われました。

その4日前・運命の12月12日には、コンセプトがDFL会議で可決されていました。



選手入場のときに掲げられたのは、お墓。





「2012年12月12日、ファン文化は死んだ」

コンセプトの可決・来季からの施行によって、ウルトラスの活動が殺されてしまった、
というわけです。



そして、この試合でもアクションが続けられる、はず、でした。


キックオフから1分も経たないうちに、ゴール裏以外の場所から応援が始まります。
その応援に対して「黙れ!」とブーイングするウルトラスたち。

いったん静かになったと思ったら、また別の場所から応援が。

アクションが始まってもう4試合目、それにテレビニュースでもばんばん取り上げられているので、
知らないわけはない。明らかに、「わざと」アクションをぶち壊そうとしている応援です。

アクションを続けたいウルトラスは、味方のファンに対して敵意をむき出しに。


ウルトラスとその他の座り席のファンによる「仲間割れ」はこのあとも続き、
結局12分すぎから始まるカウントダウンは、ゴール裏以外のファンが始めた大合唱で
かき消されてしまうほどでした。


ニュルンベルクのファンブロックでは、12分12秒で発炎筒が。







隣りに座った若いお兄さんが、
『彼らがどういうアクションをしているか、知っていますか?』
と英語で話しかけてきました。

どうやら旅行がてらの観戦だと思われたようです。
親切で話好きの、ドイツ人らしい!
そのあとすぐにブレーメンに住んでいること、毎試合観にきているからアクションは知っている
ことを伝え、気になったので何故こんな「仲間割れ」のようなことになったのかを聞いてみました。

そのお兄さんもアクション中に応援が始まったことは予想外だったそうだけど、
「一般的な」ファンは、ウルトラスの過激すぎる行動にうんざりしているからだと
言っていました。


試合中の声援が過激ならまだしも、発炎筒、モノを投げる、それに試合後の暴動。

となりのお兄さんや私のような「一般的な」ファンは、最近のスタジアムとその周辺の治安を考えると
ウルトラスに対する規制はある程度仕方がないというか、必要な部分もあると感じています。


ブレーメンでは、おととしのNordderby(ノルト・ダービー、北ドイツ対決)で
試合後、出口が警察によって封鎖されたことに怒ったHSVファン達が、出口が開放されると同時に
大パニックを引き起こし、意識不明者を含む多数のケガ人・逮捕者を出す大惨事がありました。

当時、警察の封鎖が本当に正しい措置だったのか、疑問視する声もたくさん聞かれました。
試合後のHSVファンとWerderファンの鉢合わせを防ぐ為の封鎖によって、結果的に別の暴動が
引き起こされてしまったのだから、改善は絶対に必要です。
だけど、封鎖がなぜあったのかといえば、もともとノルト・ダービーで毎年のように
両ファン同士の対立が絶えないからです。

私も過去の観戦(の帰り道)で、間近で殴り合いがはじまったこともあるし、前から花火が飛んできて
逃げまどったこともあります。
試合中の応援に関係ないところでのウルトラスの暴動に一般的なファンが巻き込まれていることは、
まぎれもない事実。


そういうことを思い出すと、今回のアクションを単純に
「ドイツのウルトラスは熱いな!」とか
「沈黙の抗議・・・カッコイイ!」とは思えませんでした。



「Ohne Stimme keine Stimmung -声援なくして、試合は盛り上がらない」

いや、おっしゃる通りです。

だけど隣りのお兄さんも言っていたけれど、いつも満員のヴェーザー・シュタディオンの雰囲気を
支えているのは、何もウルトラスだけではない。
むしろ、熱狂的なウルトラスが少ない分、座り席のファンの声があってこそあの包み込むような応援が
出来上がるのです。

レヴァークーゼン戦とニュルンベルク戦で取った席はたまたま同じ南サイドで隣りどおしのブロック
だったのだけど、そのあたりは年配のファンが多く、年間シートを持っている人もたくさんいました。
おじいちゃん、おばあちゃんと言ってもいいような年の人も大勢います。
もう何年も、何十年もWerderを応援し続けている人達。

こういうファンの人達が、ウルトラスを規制するコンセプトによってより厳しい入場チェックを
受けたり、そのためにさらに高くなったチケット代を払わなければならないとしたら、それは本当に
ばかげたことです。



今回あのコンセプトができるにあたって、ファンとの対話がなされず(ファンの代理人が
会議に出席することが許されずに)草案がまとめられ採決に至ったこと、
(しかし、ある項目には「コンセプトを受け入れないファンクラブに対しては、チームはチケットを
売ってはならない」と書かれているので、一方的な決定でも来季からは従わなければなりません)
そして中心となって推し進めた人物が内務大臣のHans-Peter Friedrich氏であることから
「政治によるサッカー介入は許しがたい」と非難されていること。

たしかに、批判されるべき所はたくさんあります。


だけど、白か黒かと、ハッキリつけられる問題ではないのだなあ・・・と
ニュルンベルク戦のヴェーザー・シュタディオンの空気を見て、感じた私。







前半の最終戦だったので、試合後は選手達がファンとタッチをしながらはけていきました。

Werderは12位で折り返し。
決していい成績ではないけれど、平均年齢が22歳という若い新しいチームが奮闘している姿に
「数年前までの輝かしい成績は、一度忘れよう。
 いい時も悪い時も応援し続けるのがファンというものだ」
と言うWerderファンが私は好きです。



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