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観た映画の感想など

トウキョウソナタ

2008-10-29 | 新作
リストラで職を失った佐々木竜平は、そのことを家族に告げることができず、毎日同じ時間に家を出る。長男の貴はある日突然米軍に入りたいと言い出し、家を出てしまう。次男の健二は近所のピアノ教室の先生に惹かれ、反対する両親に内緒で教室に通いはじめる...

黒沢清監督による家族の崩壊と再生の物語。私は「ドッペルゲンガー」と「叫」を見ているが、今回はだいぶ趣きが違い、終わってみれば意外なほどフツウの作品だった。

家族の崩壊を描く前半は従来の作品と同じで、淡々とした展開の中に不気味さがあった。リストラされた竜平が公園へ行き、腰かける。近くには同じようにスーツ姿の男が何人か座っている。少したつとみんな立ち上がり、炊き出しの列に並ぶ。たまたま旧友が通りかかるが、彼もリストラ組。失業して三ヶ月も経つのに家族に言えず、頻繁に携帯電話の呼び出し音が鳴るように設定して多忙なビジネスマンを装っている。みんなが厳しい現実を隠して生きる様は悲しくもあり、可笑しくもある。

しかし龍平の家族はいったん崩壊してから再生へと向かう。壊れたまま終わるだろうと思っていたら退屈なハッピーエンドにたどり着いてしまった。監督は従来のファンを裏切って楽しもうとしたのだろうか。

公式サイト:http://tokyosonata.com/
評価:★★★★
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容疑者Xの献身

2008-10-13 | 新作
花岡靖子と娘の美里が、自宅に押しかけてきた元夫を殺してしまう。隣に住む数学者の石神はそれに気づき、二人を警察の追及から逃れさせようと知恵を絞る。警察には石神の大学時代の友人だった物理学者の湯川が協力し、石神が作り出した謎を解き明かそうとする。

犯人は最初から明かされていて、石神がどのように犯行をカムフラージュするのかが謎解きの中心。トリックは非常によくできていて、さすがに直木賞受賞作品が原作だけのことはある。石神がなぜ完璧なアリバイを作り出せるのか、最後まで分からなかった。

靖子と石神の関係の移り変わりも最高の人間ドラマになっていた。湯川役の福山雅治と刑事役の柴咲コウが主演だが、実際の中心は靖子役の松雪泰子と石神役の堤真一だ。この二人は素晴らしかった。


公式サイト:http://yougisha-x.com/
評価:★★★★★
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