sugiyukumamani

ただ かぜがふいているだけ・・・。  
  

石榴(ざくろ)

2008-11-29 | 季節
    ひやひやと日のさしてゐる石榴かな  安住敦

 秋になると球形の大きな実が熟すと厚い果実が裂け、淡紅色の

種子がのぞく。食べると甘酸っぱい。

 ペルシャからインド北西部にかけての地域が原産地とされている。

わが国には平安末期から鎌倉初期に渡来したものと思われる。

漢名は安石榴(あんせきりゅう)、『和名抄』には「石榴 和名佐久呂

(わめい・さくろ)とある。

銀杏(いちょう)

2008-11-26 | 季節
 銀杏紅葉(いちょうもみじ) イチョウ科の落葉高木。中国原産で神社や
並木などに植栽される。成長が遅く、植えてから孫の代にならなければ実が
ならないので公孫樹と名づけられたという。
 葉は害虫除けになるので、昔から本のしおりに用いた。種子は種皮を
取り除いて食用とする。肉質の外種皮には接触皮膚炎を誘発する物質が
含まれているので、素手で触らないようにする。
 
 秋、一枚残らず黄葉し、また落葉する様は壮観である。

    街路樹の夜も落ち葉をいそぐなり      高野素十

     

 

南天の実

2008-11-24 | 季節
    南天の実に惨たりし日を憶ふ   沢木欣一
    (なんてんのみのさんたりしひをおもう)

 南天は、本州関東以西、四国、九州の日の当たる疎林に自生しているが、
広く庭木として栽培されている常緑潅木。「難を転じる」として鬼門の方角
に植える習慣がある。
 『和漢三才図絵』の「庭に植えると火災を避けることができ甚(はなはだ)
験がある」とあるのも縁起かつぎによるものと思われる。

 葉と実を薬用にする。葉は防腐作用があるので、今でも配り物や贈答にする
魚や赤飯の上に南天をのせる風習がある。
 果実は南天実(なんてんじつ)と称し、咳(せき)止めの民間薬として
広く用いられる。

     

葱(ねぎ)

2008-11-22 | 季節
    葱白く洗いたてたるさむさかな  松尾芭蕉

 葱は中国西部あるいはシベリアが原産といわれるユリ科の多年草。古くから
いたるところで栽培され、利用法は多い。これからの寒い季節の鍋料理になど
はに欠かせない野菜である。

 「葱を捨てたりや/ しおれて枯れた/ 捨てりや葱でも/ しおれて枯れる
お天道さま見て/ 俺(おら)泣いた」野口雨情の代表作の一つである。
言葉の技法もないし、難しい字句もないが、それだけに一層、捨てられた葱、
それに象徴されるものに寄せる雨情の思いが胸を突く。

 幼いころに聞いた、童謡「あの町 この町」を思い出していただきたい。
作詞・野口雨情、作曲・中山晋平のこの童謡は、大正3年1月、
童謡雑誌『コドモノクニ』に掲載、翌年4月には『金の星童謡曲譜集』に
収められ以来、歌い継がれている。
 
「あの町 この町 日が暮れる 日が暮れる 今きたこの道 かえりゃんせ
かえりゃんせ」 の歌詞からイメージされるような「もっと遊んでいたい」との
願いはいつの時代の子供も変わりはない。
 野口雨情は明治15年、茨城県・磯原町(現・北茨城市)に生まれる。生家は
かって水戸藩主の御休息所として「観海亭(かんかいてい)」と称された
廻船問屋で現在では「磯浜御殿」ともいわれたほどの名家だった。だが、
父の死とともにその名家も衰退してゆく。以後、家督を継ぎ、
山林管理などの仕事をする。

 雨情には「波浮の港」、「十五夜お月さん」、「七つの子」などの作品が
あるが、自ら鋤・鍬(すき・くわ)を手にして、山刀を腰にして山林で働いた人
の生活観、土のにおい、村に生きる人々の深い祈りがあるーといわれる。
 雨情のその思いは「私はわが茨城の風土をして、童謡啓蒙に貢献せし如く、
民謡の啓蒙にも貢献せしめたい切なる希望を有するの」大正14年頃の
茨城『常総新聞』に掲載された「茨城の風土と民謡」にも伺える。

秋の夕暮れ

2008-11-20 | 季節
  さびしさに 宿をたち出でて ながむれば
            いづこも同じ 秋の夕暮れ  良暹法師

 (さびしさにやどをいでてながむればいずこもおなじあきのゆうぐれ)
                        りょうぜんほうし
 秋の寂しさに誘われる思い、現代人でも、多少のデリカシーをもっている人なら
この歌の気分に似たものを誰しも経験しているのではないだろうか。秋の夕暮れ、
一人部屋に閉じこもっていて、なにかそこはかとない寂しさに胸をしめつけられる
ような気分になることがある。
 その思いをまぎらわそうと、外出してみるが、心の楽しみといったようなものは
なく、一人夕暮れの街をゆく。

 もっとも、デリカシーもない、詩心のない人もいるから、それはそれで
いいのだろう。でも、そんなに日々なんの屈託もなく、「明日もあるでよー」と
気ままに生きられたらいいのですが・・。

 作者は天台宗の僧侶で、比叡山の西麓、京都の北にある大原の里に住んでいた。
だから、大原の辺りの山里の寂しい風景である。大原の辺りの秋の夕暮れを思い
うかべれば共感できる歌だろう。(画像はイメージです)

     

   

 

鍋物

2008-11-19 | 季節
 朝夕の冷え込みが厳しい。上空の寒気の影響だそうだ。
熱燗や鍋物が恋いしくなる。

  又例の寄鍋にでもいたすべし   高浜虚子

 鍋物 鍋料理ともいう、鍋のまま食卓にのせて煮ながら食べる料理の総称、
日本料理には、その種類は多いが、西洋料理ではこれにあたるものは
少ないようだ。
 ブイヤベースは、地中海沿岸の海産物に恵まれた地方で発達したもので、
魚介類を2~5種類取り合わせ魚のスープで煮るものでオリーブ油や香辛料で
魚類の臭みを消すが野菜はあまりくわえない。

 一方、日本の寄せ鍋はいろんな具を寄せ集めて作るので、複雑な味が楽しめる。
楽しみ鍋とも云われる。山盛りの海の幸、山の幸、野の幸、豆腐、鶏肉など、
をとりあわせ、煮えたそばから、つつきあって食べる。季節の芳醇な味覚を満喫
できる。
 余談だが、古くは、天然の貝殻が鍋として使われていたようだ。大きな帆立貝を
鍋にする秋田のしょつる鍋、アワビの貝殻を使う島根の鴨の貝焼きなどに、今も
その形が残る。

草枯る(くさかる)

2008-11-18 | 季節
 草々の呼びかわしつつ枯れてゆく 相生垣瓜人

枯草・草枯る・草枯れ  枯れている山野の草、庭の草を総称していう言葉。
一年草の草は、冬の来る前に次代の種をつけて枯れてしまう。また、多年草の
草も生長を止めて、休眠期に入り、地上部は枯れて地下部栄養を蓄えて来年に
備える。
 草枯れは枯れ草の広がっているさまである。草が枯れはじめるまえはおおむね
降霜が契機になる。木々が紅葉し、枯れ草が風にそよぐようになると、秋の終わり
であり、やがて冬の訪れである。
   

あき深き

2008-11-17 | 季節
 秋深し・秋深む・秋さぶ
すべてのものが冬へ移ろうとする秋の静けさをいう。深秋はもう秋の終わりに
近い。一年の中で最も自然の気配が身にしみて感じられる時である。

秋深き隣は何をする人ぞ  松尾芭蕉

 元禄7年(1694年)、9月27日、芭蕉は芝伯亭(しはくてい)の俳会に
でる予定であったが、身体の調子が悪く出られそうになかったので、当日か
前日にこの句を芝伯亭におくった。このとき、芭蕉は西堀東に入ル本町の
之道亭(しどうてい)にいた。
 「なにをする人ぞ」というのはどんな職業の人だろうという意になるが
その職業を詮索しているわけでなく「どんな人だろう」と床(ゆか)しがって
いるのである。床しがらせるようなものが隣の気配に感じられたのであろう。
 *床しい 上品だ・貴品がある・奥ゆかしいの意。

"Very Good''

2008-11-14 | 
「我輩(わがはい)は猫である。名前はまだない。どこで生まれたかとんと
見当がつかぬ・・・」で知られる『我輩は猫である』を夏目漱石(本名・金之助)
が俳誌『ホトトギス』に発表し好評を得たのは1905年であった。

 『ホトトギス』といえば正岡子規が創刊した俳誌だが、夏目漱石が文学を志す
ようになったのは正岡子規との親交がきっかけとか。
 漱石も子規もどちらも慶応3年(1867)の生まれ、明治17年に東京大学予備門
(明治19年に第一高等中学校と改称された東大教養学部の前身)に入学した。
つまり、二人は同級生。

 翌18年、子規は英語と数学で学年試験に落第、漱石は翌19年に病気で、
学年試験が受けられず。やはり落第。そういうわけで二人は親友になる。
明治22年の子規の日記には、友人の名が書き並べられその上に「良友」「少友」
「酒友」などの形容詞がつけてあったが、夏目金之助の上には「畏友」と書かか
れてあった。
 漱石は自作の漢文を子規に見てもらって「千万年一人ノミ」と褒められ、英文
を見てもらったら、英語が不得意な子規は”very good ”と批評して
返したそうだ。

石蕗の花(つわぶきのはな)

2008-11-13 | 季節
   さびしさの眼の行く方や石蕗の花     大島蓼太
   (さびしさのめのいくほうやつわのはな) おおしまりょうた

 庭のすみなどにひっそりと咲く、寂しさの眼の焦点として
ふと心にとまる花。

 北日本を除く海岸沿いに自生するキク科の多年草である。長い柄を持つ
葉は丸い腎臓形で、厚く深緑色をしており、光沢がある。秋に花茎を伸ばし
鮮やかな黄色の頭状花をつける。

 《薬効》 民間薬として葉茎を煎じて飲めば魚毒を消すとして魚の中毒に
  用いる。化膿や湿疹には、葉を火であぶり柔らかくしてもみ患部に貼る。
  葉には強い殺菌効果があることが判明している。