長谷川泰子。中也の熱烈な信者でこの女性の名を知らぬ者はいないであろう。彼女の『ゆきてかへらぬ』に拠れば表現座の女優時代、稽古場に居るとき中也がダダの詩を見せたのが出逢いの始まりである、らしい。泰子は中也の3歳年上で劇団が解散して途方に暮れている時、「それなら僕の部屋に来ればいい」と中也が助け船を出してふたりは同棲生活に入った。大正13年4月のことであった。
中原中也『ゆきてかへらぬ』
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(2005・2)
マリリン・モンロー関連の著作を紐解く。死する二週間前からの彼女の行動を仔細に調べ、その死に関する私見を述べた上で、大胆に謎とされるその死に関する検証を行っている。分厚い本だが、モンローの祖国でも出版され静かなムーブメントを興しているのだという。
時代を席巻した国民的英雄、この類いに関しては、各年代、ジャンルを問わず、様々な憶測が有り、わけてもその死に関してはまことしやか . . . 本文を読む
中也は未だ僕に呟いてきます。「雲の間に月はいて それな汽笛を耳にすると 悄然として身をすくめ 月はその時空にいた それから何年経ったことか 汽笛の湯気を茫然と 眼で追いかなしくなっていた あの頃の俺はいまいづこ ……頑是ない歌より」あれは、そう確か僕が中学生の頃、十代の頃でした。学校の図書館の四隅の本棚にその本はひっそりと、さも僕が手にし易いように置かれていましたっけ。中原中也「在りし日の歌」 . . . 本文を読む
筆者宛て個人メールを多く賜り、格別に気を良くしておりますので(笑)、今一度、放哉を取り上げたいと思います。
咳をしても一人
ようやくあまりに有名な一句が満を持して(笑)登場。放哉の晩年、小豆島で暮らしていた頃に編んだ句とされる。西光寺というお寺の奥の居所で彼は寝泊まりし、酒に溺れながら41という若さでその生涯を閉じるのですけれど、この一句の解釈がただたんに周囲に誰もいなかったから . . . 本文を読む
前回が大変好評なので、気をよくして(笑)今回は【尾崎放哉 partⅡ】と題しての私なりの選集です。
休め田に星うつる夜の暖かさ
これは田植え前の水を張った状態の田んぼに夜の星が映り煌めいているといった情景なのでしょう。こういう情景は見る側の想いひとつで幾様にも解釈が生まれるはずで、私はやはり放哉特有の寂しさが感じられてせつなさを思わせるのですけれどいかがなものでしょうか?
雪 . . . 本文を読む
雨が滴るこんな夜は、中也の詩で独り言
2005・8記述
湖 上
ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう。
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。
沖に出たらば暗いでせう、
櫂から滴垂る水の音は
昵懇しいものに聞こえませう、
――あなたの言葉の杜切れ間を。
月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るで . . . 本文を読む
『一度(ひとたび)生を享け、滅せぬもののあるべきか』Chapter【桶狭間の合戦】
2005・3記述
座して『敦盛』を舞う。
思へばこの世は常の住み家にあらず。
草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし。
きんこくに花を詠じ、栄花は先つて無常の風に誘はるる。
南楼の月を弄ぶ輩も月に先つて有為の雲にかくれり。
人間五十年、下天のうちを比ぶれば夢幻の如くなり。
一度生を . . . 本文を読む
※2006・3記述
ふと、明治の代の歌人全集を紐解いていたところ、
この方の名が眼に留まった。
尾崎翠、
【おさき みどり、
1896年(明治29年)12月20日 - 1971年(昭和46年)7月8日】
明治の代から昭和にかけて生きたひとで、
私は学生時分、このひとの『初恋』を読み、
さやかな感銘を受けた記憶がある。
作家特有の、全身の総毛が粟立つかのような
眠る . . . 本文を読む
昨日はどこにもありません
【三好達治】
昨日はどこにもありません
あちらの箪笥のひき出しにも
こちらの机の引き出しにも
昨日はどこにもありません
それは昨日の写真でしょうか
そこにあなたの立っている
そこにあなたの笑っている
それは昨日の写真でしょうか
いいえ
昨日はありません
今日を打つのは今日の時計
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2006・7記述
ゆっくりと12月のあかりが灯りはじめ
慌ただしく踊る街を誰もが好きになる
僕は走り 閉店まぎわ 君の欲しがった椅子を買った
荷物抱え 電車のなか ひとりで幸せだった
いつまでも 手をつないでいられるような気がしていた
何もかもがきらめいて がむしゃらに夢を追いかけた
喜びも悲しみも全部 分かちあう日がくること
想って微笑みあっている
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「人生にはたった二つの生き方があるだけだ。
一つは奇跡などないかのような生き方、
もうひとつは、まるですべてが奇跡であるかのような生き方だ。」
たとえばこんな、ドイツの偉大なる物理学者、アルベルト・アインシュタインの言葉。
この場合の“奇跡”とは人生における二度とは巡ってこない時を指し、
『一期一会』という四字熟語も示す通り、人間関係の大切さをも表した言葉だと従えたい。 . . . 本文を読む
写真はスペイン、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路。写真出典はWikpediaから。“サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダへ向かう道”として1993年、ユネスコ『世界遺産』に登録されたとある。僕はこのような長く遥かに続いている道の写真が好きで、スマホのキセカエにしてみたりPCの壁紙にしてみたり、普段よく眺めていたりするわけです。我が息子、駅伝部の次男坊が「俺、こういう道を黙々と走ってみたい . . . 本文を読む
“人間とは、努力をする限り迷う生き物である。”
たとえばこんな、
ドイツの著名なる“文豪”
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの言葉。
世に名高き『ファウスト』第一部【天上の序曲】の中で
ゲーテはそう記している。
またゲーテは
「恋にも迷いにも縁遠くなった人間は、墓に埋められてしまうがいい」とも記し、
他者を愛する想いを忘れたり、
何かを思い詰め迷うことを嫌がる人間は . . . 本文を読む
2005・4 筆者覚書補遺文
文芸評論家・江藤淳氏の自殺を知ったのは、
氏の遺稿集を馴染みの本屋さんで見かけたときのことでした。
確か、それは99年、夏でしたね。
氏の著作には学生時分、大変、お世話になりました。
私にとって文芸批評家と言えば、
小林秀雄氏と江藤淳氏、
このお二方が“双璧のひと”でしたね。
分けても氏が慶應義塾在籍の折の
『夏目漱石論』には慧眼を享け、
当時 . . . 本文を読む
(初出:2007・9“魂暴風”popular request column)
空前のスカイ・ハイブームを生み出した“仮面貴族”ミル・マスカラス人気への嫉妬心からだったのか!?、或いは女子プロ人気に対する敵愾(てきがい)心もその影ではあったかも知れぬ。とにかくひとつひとつのシリーズを好評のうちに終わらせねばならぬ。時の新日本プロレスは『流星仮面』マスクド・スーパースターの売り出しにかかった。 . . . 本文を読む