たまごネコは夢を見る

kazaのフリゲ制作ブログ

文章の変遷を追ってみようの巻

2017-08-05 19:54:07 | その他
最近文章の書き方的な話をツイッターでしたり、とある方の作品を読んだり、
一番古い作品を引っ張り出してくる機会があったので、
たまにはこういう話題もいいんじゃないかと。

自分が最初に書こうとした長編小説で「Recollection Travelers」というのがあります。
書こうとした、という表記でわかるかもしれませんが、完成はしませんでした。

まあ長編といっても実質的には短編集のような形で、
当時キノの旅がめっちゃ流行っていて自分もかなりハマっていたので、
訪れた街やサーカス小屋を舞台として一話完結するような感じでした。

初めて書こうとした長編だったので思い入れが強かったのか、
ことあるごとに続きを書こうと企んだ結果(=ことあるごとに続きを書けてない)、
その都度何度もプロローグを書き直してるんですよね。

古くは2003年から、一番新しいので2010年まで(それでももう7年も前だが)。

なので、文章の比較をしてみようというのが今回のお題です。

では早速、一番古いものから。

----------------------------------------------------------------

   プロローグ「月光」

―――そうして僕は、漆黒の夜空に浮かぶ赤い赤い大きな月を見上げた。
それはまるで血の色のようで。
どことなく怪しげに、妖しげに、アヤシゲニ。
だが絶対的な、圧倒的な存在感を持ってして、僕らにひとつの終わりを与えようとしていた。
たん、と弾けるようなステップが地を震わす。
導くように広げられた腕が花を散らす。
ふわりと舞う花が彼女を一層幻想的に魅せる。
深く生い茂る森林の中心の、空から見たらそこだけぽっかりと穴が開いているように見えるであろう、綺麗な草花に彩られた地で。
彼女はただ月の光に濡れるように、憂いを帯びた瞳で、誓いの舞を踊っていた。
音などないのに、呼吸が唄っていて。
観客などいないのに、木々がざわめいて。
記憶などないのに―――彼女は泣いていた。
僕は。
僕らは。
結局何かを、誰かを代償にして、ここに存在してしまった。
手を伸ばそうとして後ずさり。
触れようとして傷つけ。
抱きしめようとして、壊してしまった。
儚さに理由などない。
壊れた破片を修復することなどできない。
僕は悔いている。
悔いていると、思う。
悔いていると、思い込んでいる。
悔いていると―――嘯いている。
ふらふらと。
揺れるように、僕は彼女に向かって歩き出す。
それはつまり。
いまさら僕は足掻き始めようとしている、ということを意味している。
本当に、いまさらだ。
ずるいと思うだろうか。
僕が壊して壊して壊して。
それ以上壊せないというぐらいまでに壊しきった、誰かは。あるいは彼女は。
本当に壊れてしまったのは、きっと、僕なのだろうけれど―――。

「クリス」

呼びかけられた。
いつの間にか彼女の舞は終わっていたようで、僕は彼女の前でただ立ち尽くしていた。
嘘だ、と思った。
本当に壊れてしまったのは彼女で、僕はまだ壊れていない。
僕はまだ、何もしていないのだから。
何も、してこなかったのだから。
手を伸ばした。
ゆっくりと、彼女の頬に触れる。
ひんやりと、心地よい冷たさが伝わってきた。
彼女が微笑む。
僕も微笑む。
ぎこちなく、どこか不自然に。
悲しいと思うのは、一体何なんだろうか。
悲しいと思ったのは、一体何だったんだろうか。
どことなく滑らかに、彼女の手は僕を伝い、背後から抱きしめる形になった。
それは。
本当に。
優しすぎて―――。

「う、ぁ、あ・・・・・・」

思わず声が漏れ、僕はそれを必死に押さえ込む。
幸せなんて。
優しさなんて。
僕には、もう、手の届かない遥か先にあるものでしかないというのに―――。
心が捻じれて、もうどうしようもできなくて。
それでも尚、僕は僕を許さない。
もっと苦しめ。
もっともがけ。
もっと絶望しろ。
今度こそ僕は、僕自身を―――。
黒い衝動が心の中を蛇のように蠢いた。
嘲笑する大きな闇が僕を喰らった。
罪悪感という名の十字架が、僕を戒めた。

「もう、いいよね、クリス・・・・・・」

甘い声が耳元に吹きかけられた。
そろそろ、始まりが近い。
彼女の言う通りだ。
もう、いい加減にしないと、いけない。
僕は僕を、完成させなければいけない。

「いいよ」

僕は告げた。
低く、深く。
救いを打ち消すように、闇色で染め上げて。

―――そうして僕は、漆黒の夜空に浮かぶ赤い赤い月を見上げた。

そんな僕を見て、彼女は少し、ほんの少しだけ可笑しそうに笑って。



僕の首筋に―――かぶりついた。



生まれて初めて僕が得た―――終わりだった。

痛覚は、なかった。
麻痺しているのか。
もとから何も感じないのか。
頭からつま先まで、全身が凍えるような錯覚を感じた。
神経が研ぎ澄まされ、思考が真っ白になっていく。
それはある意味、快楽にも似ていて。
ぴりぴりと、電流のように僕を犯していく。
身動きひとつとれない。
身動きひとつ―――とろうとは思えない。
壊れてしまいそうで壊れてしまいそうで壊れてしまいそうで壊れてしまいそうで壊れてしまいそうで、
狂ってしまいそうで狂ってしまいそうで狂ってしまいそうで狂ってしまいそうで狂ってしまいそうで、

壊れそうなぐらいに、狂おしくて―――。

ごくんと。
僕の血が彼女の喉を通り過ぎていった。

「ありがとう、クリス」

食い込まれた歯が抜かれ、ぺろりと、彼女の舌が僕の傷跡を艶かしく、舐めた。
再び小さな電流が流れて僕の体を僅かに震わし、彼女はくすくすと小さく笑った。
終わらない始まりが、訪れた。
赤い月が堕ちようとしていた。
僕は僕自身を見た。
何も変わらない―――自分がいた。
もはや変わることなどできない、自分が完成した。
それこそが、僕が望んだ贖罪。
僕のせいで吸血鬼になってしまった彼女に科して欲しかった、罪の刻印。
不老不死という名の、永遠という名の―――最低最悪最凶の絶望。
僕には、お似合いの罰だろう。

「いこうか、サラ」

僕は呟いた。

「どこへ?」

彼女が問うた。

「決まってるよ。そんなことは、とっくのとうに、考えるまでもなく、ずっと前から決まっていたことなんだよ」

償いでもなく。
逃避でもなく。
ただ、そう―――追憶。
僕がしてきた全てを、再びなぞろう。
僕が辿ってきた道を、再び歩もう。
それこそ何回でも、何百回でも、何千回でもいいさ。
傷跡をずっと、ぐるぐるぐるぐると、回り続けるんだ。
この傷跡が、絶対に治らないように。
時や僕自身が、傷跡を癒してしまわないように。
逃げ道を全て潰して。
吸血鬼との契約によって永遠を科して。
僕は。
ようやく。
ゆっくりと。
終わらない地獄への螺旋階段を、上り始めた―――。

----------------------------------------------------------------

西尾維新の影響を受けていた頃なので、短い文章と言葉の入れ替えが印象的です。
あと最低最悪最凶とかって中二的なワードも……(*/ω\*)
「-」も今より一回に使う数が多いし(今は「--」で二回)、
「・・・」も三点リーダーじゃなかったりしますね。

続いて、2007年。

----------------------------------------------------------------

   プロローグ「月光」

 よくわからないな、僕の心なんて。
 そう思った瞬間、彼女が僕の背に抱きついた。しっかりと腕を巻きつけ、きつく抱きしめ、それから言った。

「もういいよね、クリス? 何だか少し、疲れちゃった……」

 真っ黒な夜だ。星は無い。真っ赤な月だけが輝いている。まるで血の色みたいな光が、森に囲まれた草原に降り注いでいる。
 僕は、ゆっくりと呼吸をした。鼓動が強く喚いていた。まるで心臓を取り払おうとするかのように、僕の指は胸の辺りを覆っている服を握り締め皺を作った。
 けれど、痛みは取れない。罪は消えない。過去も終わったりはしない。未来は、続くんだ。いい意味でも悪い意味でも、僕らが生きる限り、どこまでも。
 だから僕は告げた。低く、深く、僕の弱さを闇色で塗り潰して。

「……いいよ」

 掌を、ぎゅっと握り締める。冷たい風がさーっと流れ、草原に波を作る。黒い前髪が揺れ、僕の視界も揺れた。目を大きく見開き、深く息をするように、そっと宙を見上げる。




 これは、一度終わった物語だ。
 そして、これからまた始める為の物語だ。
 だからこれは始まりでも終わりでもない。狭間の中で、罪を想う物語だ。




 僕は漆黒の夜空に浮かぶ、赤い赤い月を見上げた。禍々しくも無垢な、真ん丸い月を。
 それは僕と彼女を照らし、包み込んでいた。僕らは血で包まれていた。そんな生き方をしてきた。
 ――でも。
 もう、そんなことはごめんだと、そう思う。
 僕は真っ赤な月を睨むように見つめる。
 そんな僕を見て彼女は少し、ほんの少しだけ可笑しそうに笑った。もしかしたら、泣いていたのかもしれない。笑い声と泣き声は、時折よく似て聞こえ、分別がつかない時がある。

「もう、いいんだよね?」
「うん」
「じゃあ、いくよ?」
「……うん」
「――頂きます」

 そう囁いて彼女は僕の首筋にかぶりついた。痛みが瞬間的に走り、そして――消えた。

「――ッ!」

 頭からつま先まで、全身が急激に凍えていく。痛みが無くなり、快楽も無くなり、ただただ思考が真っ白になっていく。びりびりと電流のように、何かが僕の中を駆け巡っていく。
 血のような、そうじゃないような。
 けれど全身に回っていく。毒のように、僕の全身を犯していく。
 全身が、冷たい。全ては、無だ。波のように死が押し寄せ、引いて、押し寄せ、引いていく。僕らには赤い月明かりだけが、ただただ降り注いでいる。
 ――これが。
 僕は思った。
 ――これが、永遠を生きるということなんだ。
 ……ごくん、と。
 彼女が僕の血を飲み干した。
 僕は激痛にも似た快楽から解放され、反動で前へと倒れ伏しそうになった。けれど彼女はまだ僕を抱きとめていて、だから僕は倒れない。
 一言だけ、囁かれた。

「ありがとう、クリス」

 僕は、何も言わない。自分の感覚がまだ戻ってきていない。かろうじて立っていることだけを知覚していた。それ以外はよく、わからない。
 ぺろりと彼女の舌が艶かしく僕の体を這った。舐められたのは彼女の鋭く尖った歯が刺さっていた部分で、未だに流れ出していた血がそれによって綺麗に拭き取られる。再び小さな電流が全身を駆け巡って体が震え、そんな僕を見て彼女はくすくすと笑った。感覚が徐々に戻ってきて、自分の体が恐ろしく冷たく感じられる。
 月明かりが終わったのは、そんな瞬間だった。
 遠い遠い彼方の山に沈みゆく赤い月。落ちて堕ちて、陽が沈むのを再び待つのだろう。
 空はまだ陽の昇りを待っていて、薄暗い闇が世界にはびこっていた。彼女の温もりが冷たいと感じられなくなった僕の体を、僕はゆっくりと見た。

「……」

 何も、変わらない。ただ自分が人間では無くなったという感覚だけが強く心を支配していた。恐ろしく生気が感じられない僕は、全てを喪失してしまったのか、あるいは全てを得てしまったのか。

「これで、もう、死なないんだね……」

 小さく呟く。牢獄の中からの、初めての感想だった。悲しいのとは違う、けれど妙に胸が苦しくなる感覚があった。

「行こうか、サラ」

 僕は呟いた。優しく、少し笑うかのように、軽い口調だ。

「どこへ?」

 サラが楽しそうに聞き返す。
 僕は肩を竦めて、さも当然といった口調で答えた。

「決まってるよ。そんなことは、とっくのとうに、考えるまでもなく、ずっと前から決まっていたことなんだよ」

 償いなんかじゃなくて、逃避なんかでもなくて。ただ、そう――追憶。
 僕がしてきた全てを、再びなぞろう。僕が辿ってきた道を再び歩み戻ろう。それこそ何回でも、何百回でも、何千回でもいい。傷痕を抉るようにずっと、傷痕が治らないようにしっかりと、ぐるぐるぐるぐると回り続けていくんだ。
 始まりの地まで行けば、また何か少し、変わるかもしれない。



 彼岸花が、風に撫でられて揺れている。赤い月明かりが消えて、だから純粋にとても綺麗だった。
 僕は彼女の手を引いてすぐさまその場を立ち去った。僕がいるべきは彼岸では無く、現実という名の此岸なのだから。

----------------------------------------------------------------

かなり普通の文体になりましたね。
短い文章と言葉遊びはなくなりましたが、代わりに風景描写が増え、状況は想像しやすくなった気はします。

最後に2010年。

----------------------------------------------------------------

   プロローグ「月光」

始まりの場所はあまりにも遠く、終わりの場所はやけに綺麗だった。
「もういいよね、クリス。何だか少し、待ちくたびれちゃった」
草の匂いがひっそりと鼻先をくすぐって、夜の闇の中に月光が降り注いでいた。赤い、紅い、月光だ。血の色みたいなそれに照らされて、彼女の髪は美しい金色に妖艶さを加えていた。それが奇麗だと思う僕がいて、それから悲しいと思う僕もいて、考えるのが嫌になる僕がいて、君から目を離せない僕がいて――。
……よく、わからないな、自分の心なんて。
そう思った瞬間、彼女が僕に抱きついてきた。しっかりと腕をからめ、ぎゅっと力を込め、それから言葉を囁く。
「もう、いいよね?」
念を押すようでもあり、不安を湛えた波のようでもある。
僕は呼吸をする。鼓動が強く喚いている。それを取り払おうとするかのように、僕の指は無意識に身につけているシャツの胸の辺りを強く握り締め、深い皺を作り出す。
けれど、痛みは取れない。罪は消えない。心も失われない。過去は過ぎゆくも残り続ける。未来は、目の前にあり続ける。いい意味でも悪い意味でも、僕らが生き続ける限り、どこまでも。
だから僕は告げた。赤い草原を見回した。そこに満開に咲く、彼岸花の群れに一瞬魅せられた。
「いいよ」
低く、深く、僕の弱さを、どうか塗り潰せるように。この孤独な闇色で、塗り潰してしまえるように。


これは、一度終わった物語だ。
 そして、これからまた始める為の物語だ。
 だからこれは始まりでも終わりでもない。狭間の中で、罪を想う物語だ。


「ありがとう、クリス」
ほんの少しだけおかしそうに笑って、彼女はそう言った。まるで泣いているようだった。泣き声と笑い声の区別が、僕には時々、よく分からなくなる……。
「それじゃあ――いただきます」
そうして彼女の鋭く尖った白い歯が僕の首筋にくいこみ――。
その瞬間、全身に電流が走った。
頭から爪先まで、全身が急速に凍えていくのが分かった。駆け回っていた痛みが失われていき、ただただ思考が真っ白になっていく。涙が零れ落ちそうになった。僕は堪えた。
泣いていい訳が無い。泣いていい理由が見つからない。ただ感情だけが深く沈み込んでいく。体の奥底で、緩やかに波打っている。
どれぐらいの時間が流れただろう。永遠のようでもあったが、一瞬でもあったかのような時が過ぎ去り、ごくんと彼女の喉が鳴った。
「ありがとう、クリス」
耳元で、一言だけ囁かれた。
僕は、何も答えない。まだ自分の感覚が戻りきっていない。何も変わらないようで、確かに自分が損なわれてしまったかのような寂しさを感じる。恐ろしく生気が感じられない自分に生理的な嫌悪さえ抱きかけない程、“生きていない”ということは本当に――物悲しい。
「……これで、もう、永遠を生きていくことになったんだね」
僕がそう呟いた瞬間、月明かりが終わった。
遠く、彼方の山からゆっくりと昇りだそうとする太陽。その眩しさに思わず目を細めると、彼女が僕の横に立って僕の手にその細い指先を絡めた。
「行こ」
「そうだね。行こう」
「どこへ?」
サラが楽しそうに聞き返す。自分で行こうと言った癖に。
僕は肩を竦め、さも当然といった口調で答える。
「決まってるよ。そんなことは、とっくのとうに、考えるまでもなく、ずっと前から決まっていたことなんだよ」
償いなんかじゃなくて、逃避なんかでもなくて、ただ、そう――追憶。
僕がしてきた全てを、再びなぞってみよう。僕が辿ってきた道程を今度は逆側から歩いてみよう。それこそ何回でも、何十回でも、何百回でもいい。傷痕を抉るようにずっと、傷痕が治らないようにしっかりと、ぐるぐると回り続けるんだ。
始まりの地まで行けば、また少し、何かが変わるかもしれないと、そう祈りながら。

----------------------------------------------------------------

2010は2007とそんな変わらない気がする。が、何となく2007の方が今見るといい感じはする(たまに違和感のある表現あるけど)。
ただ、2010にはプロローグを短くしたいという意図を感じる。そういうことを考えていた時期だったのは覚えている。
2003は風景描写が少なすぎる感じですが、今の自分には書くことのできない表現なんかもあってドキッとしたり。
あと文章が短い分、リズム感は面白いなと思いますね。
ただ、このリズム感でずっと10万文字とか読まされたら疲れるかも?
あと書ける物語の方向性が限定されそう。そうでもないかな? わからん。

比べてみるとわかりますが、やはり得るものがあり失うものがあります。
2003が一番不出来かというと意外とそうでもなくて、
2003の文体が一番いいという人もいれば、2007の方が、あるいは2010の方がいいという人もいるんじゃないかなと。

ちなみに今書いたらそもそもこのプロローグは書かない気がする(ぁ

導入としては弱いかな、という印象。確かにキャラクターにとっては重要なシーンなんだろうけど、
背景がわからないので置いてけぼり感もなくもない。プロロ読んだだけで何かお腹いっぱいになりそう。
これだったらプロローグ削ってさらっとストーリーに入った方が物語の運びはいいかもしれない。
あるいは重さを感じない程度に文章を削ってさらっと終わらせるか。

わからんけど・x・

そんな感じで新旧文章比較でした。昔の文章出すのは恥ずかしいネ。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 7/31日は「猫になりたい」の日! | トップ | ふぁんびょるどんまるげし »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

その他」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL