2月22日は、白バラで知られるゾフィー・ショルの命日であった。ナチに抵抗しビラをまいた若きミュンヘン大学生の彼女は、兄を含めた仲間と共にこの日処刑された。21歳の若さであった。数年前にリリースされた映画の中で、処刑前の最後の面会の時に、母親の「もう逢えないのか」という言葉に、彼女は「天国で逢いましょう」と答えた。二人の子供を失う親の苦しみを思っての精一杯の発言だったのだろう。映画ではなかったが、この時サンドイッチだったかの差し入れを母親が持参し、兄は、もう数時間で命が亡くなる人間には不要だ、と口にしなかったが、ゾフィーは、お腹がすいているから頂く、といって美味しそうに食べた、という。最後の記憶にとどめたかったのだろう。うつむき加減に、くわえたばこの痩せた姿が、象徴的な写真として残るが、果たしてそれが実像だったのか。アウシュビッツに処刑された政治犯の写真が複数展示されている。その中に笑っている顔が少なくない。出来得る精一杯の最後の抵抗である。平和な時代であれば落とさなくてもよい命、そしてその先人たちの礎の上に我々は存在する。別件になるが、2度ほどお世話になった住居のオーナーは、亡くなった妻のことを「天国で神のそばにいるのだから良いのだ」と話していた。キリストの深い教えがそこに感じられた。キリスト教といえば、異例のパパベネディクトの引退により、カソリック総本山では、コンクラーベがまた行われる。高齢で身体の不調を圧して尽くしてきたその姿に、信者ならずとも心からの敬意をおくりたい。