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塚原勝美

「パソコン通信」とは何だったのか

2005年09月27日 | Weblog
「パソコン通信」とは何だったのか (1/3)【IT_Media記事】Niftyか懐かしいネ。
http://www.asyura2.com/0411/it07/msg/419.html
投稿者 クエスチョン 日時 2005 年 2 月

2005/02/21 12:07 更新

小寺信良:
「パソコン通信」とは何だったのか (1/3)【IT_Media記事】Niftyか懐かしいネ。
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0502/21/news012.html

ニフティが2006年3月末でパソコン通信サービス「NIFTY-Serve」を終了するという。モデム接続によるテキストベースのサービスが終わるのは時代の変遷として致し方ないが、“あの時”のコミュニティのあり方には、今も学ぶべき点は色々あるのではないだろうか?


 読者の中で、「商用BBS」と言って通じる人がどれぐらいいるのだろうか。だが40歳前後の人たちには、限りなく懐かしい響きなのである。今でもたまに集まって酒を飲む古くからのパソコン関係の仲間内では、寄ると触ると「やっぱりモデムはクーリエ」だの「bpsで言うな、ボーで言え」だのパソコン通信の話で盛り上がる。

 ちなみにクーリエを作っていたU.S. Robotics社は3Comに買収されて今はないが、アイザック・アシモフの『われはロボット』に登場する社名であったことから、最近映画「アイロボット」で久々にその名前を聞くことになった。

 話が脱線したが、正確には懐かしいという感情とも微妙に違うようだ。かつての不自由な通信インフラにかけた時間と労力と青春とお金を考えると、なんであんなに必死だったのか、己のバカさ加減に笑ってしまう、というのが率直なところかもしれない。

 ニフティがパソコン通信サービス終了というニュースを聞いて、パソコン史の中でまた一つ時代が終わったことを実感する。

商用BBSの趨勢

 現在、一般ユーザーにとって「パソコンを使う」と言うことは、ほぼインターネットを利用するということと同義語になっている。今やパソコンの存在意義が、ネットからやってくるコンテンツや情報の処理機となっているのだ。知ることや誰かに連絡することが主たる目的であり、昔のパソコンの使い方から比べると、使い方が全然違っている。

 インターネットが普及する以前、パソコンとはどんなアプリケーションを使うかで、その存在がどのようにでも化ける魔法の箱だった。個人所有のパソコンに対して、ワープロソフトを買うのは文章を書く必要がある人で、エクセルや1-2-3を買うのは会計業務をやる必要がある人だ。MacとPerformerは音楽をやる人の定番だったし、グラフィッカーはPhotoshopとIllustratorを持っていて当然だった。

 だが、ただひたすらパソコンをコミュニケーションのためだけ使おうという人は、存在しなかった。まったくいなかったわけでもないだろうが、真っ当に考えればコストが全然合わなかったのである。

 そんなパソコンユーザーの一部が、自分のパソコンの貴重なリソースを割いて、“パソコン通信”という場に集まった。当然それぞれパソコンに対して目的があり、専門家たちの情報交換の場となる。そんな背景から、全国レベルで展開する商用BBSには「その道のプロ」が集うこととなった。

秩序と倫理

 NIFTY-Serveには、「フォーラム」というテーマ別に分けられたコミュニティの単位があった。専門フォーラム内の会議室は、もっぱら同業者間の談笑と、シリアスな質疑応答に分けられていた。

 当時パソコンに関する情報源といえば、パソコン誌を手当たり次第に読み漁るか、ショップの常連客から話を聞くぐらいしかなかったわけだが、それではパソコンそのものに関する情報しか得られない。自分の専門分野にパソコンを組み入れる際の特殊な疑問は、同業者に聞くほかなかったのである。

 そこは匿名の世界ではあったが、礼節には厳しい社会であった。知るものと知らざるものの差は、限りなく大きかった。今ならちょっとした調べ物ならググれば済むことだが、当時は困ったことがあっても、他に調べる手段がなかったのである。

 当時の知識の多くは、個人が膨大な時間を費やした検証結果であったり、長い経験による蓄積によるものであった。それをタダで同業他者に教えるわけである。実社会と同じように、そこにはホトケサマのような人たちばかりがいるわけではない。必然的に「人にモノを訪ねるにゃそれなりの言い方ってもんがあるんだよ」ってことを、イヤと言うほど教わることになる。

 「氏ね」や「逝ってよし」のようなコミュニティ固有の罵倒語は、まだ発明されていない。商用BBSでは誹謗中傷は禁止されているため、フォーラム内で直接ヒドいことを言われることはない。その代わり、よってたかって理路整然と長文の説教を食らう。


小寺信良:
「パソコン通信」とは何だったのか (2/3)
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0502/21/news012_2.html


 双方の意見が相容れない場合は喧嘩も起こるわけだが、文章を綴るしかやり返す方法がない特殊な社会では、先にキレたほうが負けである。うかつに仲裁に入ると、今度はやり合っている当事者全員を相手に論を展開する必要がある。いずれにしろ、完全に相手を論破したときのみ、事態が収拾する。

 従ってNIFTY-Serveのような商用BBSには、優れた論客が多かった。単に理屈っぽいだけでは、コンセンサスは得られない。いかに観客に自分の論を読ませ、納得させるか。適度にフックする単語をちりばめつつ、軟硬自在に態度を使い分け、しかも論旨を外さないばかりか、思いがけない結論に着地してみせるテクニックが必要なのである。

 通常の書き込み文章であっても、恐るべき才能を発揮する人も少なくなかった。

 普通の文章に見えて、実は左端を縦に読むと別のメッセージが現われることもあったのだ。あるいはタダの文章に見せかけながら、全体を遠くから眺めてると、句読点の位置がきれいに斜めに並んでいるというような技も見られた。文字だけの世界でありながら、隠れた「技と芸」があったのである。

 一介のテレビ屋風情にしか過ぎなかった筆者が、こうしてモノカキの端くれとして文章で糊口を凌ぐことができるようになったのも、これら先人のテクニックを目の当たりにしながら、揉まれてきたからである。

仮想世界の闇

 2ちゃんねる発の書籍が出版され、世間から珍しがられているが、商用BBSから発信された書籍は古くから存在した。2ちゃんねる書籍が特殊なのは、本当の著作者が不明なまま著作物として成り立っているというところだ。

 NIFTYで教え上手な人は、やがて出版社が目を付ける。2ちゃんねるのような完全匿名ではなくIDが固定なので、書き込みの本人にメールで直接コンタクトを取ることが可能だった。こうして一部の人間は、本業を持ちながら専門誌でライターを兼業していくことになる。

 筆者のモノカキとしてのデビューは、某フォーラムで海外製CGソフトの操作方法を解説した書き込みを整理して出版しないか、という話からであった。それはすでに書いたものを出版するわけで、こちらとしては手間もない。

 最初の本が大きな失敗もなくそこそこ売れれば、次第に月刊誌や別の出版社から執筆の話が舞い込んでくる。当時は、特定専門分野の書き手が少なかったのだ。こうなってくると、半匿名の社会でも仲間内から次第に正体がバレて、フォーラムでも一目置かれるようになる。

 だが、そこで勘違いする輩も出てくる。本を出したり専門誌に書くことにステータスを感じた者が、専門家でもないのにそこで仕入れた知識を頼りに、自作の解説書を出版社に持ち込むようになる。しまいには本業を辞めてまで、それに没頭する者も現われた。

 ステータスといったって、あくまでも商用BBSの一フォーラムという、ものすごく狭い仮想の人間関係でのみ通用するだけである。実際にそれでギャラが上がったり、クレジットカードがゴールドになるわけでもない。ネット上のステータスを重視するあまり、そちらのほうを生活のメインに据えて、リアルな人生から逸脱してしまうのである。

 最近の例では、寝屋川市の小学校教職員殺傷事件容疑者の少年と、いわゆる「ゲーム脳」との関係が取りざたされている。ゲーム脳という定義には疑問の余地があるものの、極端にバーチャルなものに没頭しすぎて、大の大人でも現実と仮想世界との折り合いが付けられなくなった例は、パソコン通信の時代から珍しくはなかった。

 一度そういう人を見るに見かねて、簡単なアニメーションの仕事を発注したことがある。だが仕事の打ち合わせをしようにも、すぐにネット上のうわさ話に脱線してしまい、仕事の会話が成り立たない。むりやり必要なことを飲み込ませて帰したのだが、案の定、アニメーションは人の話を断片的にしか聞いていないモノができあがってきた。

 少なくとも本人が通常の社会活動を行なう能力を失ってしまった以上、一般社会的なアプローチでは、助けたくても助けようがない。

「インターネット」は「ネット」じゃない?

 インターネットが台頭してきたころ、NIFTY-Serveで知り合った友人の多くはいち早く自前のサイトで掲示板を立ち上げた。最初は挨拶がてら覗きに行ったものだが、筆者にはあちこちに散らばったそれらのサイトを手動で巡回するのが、ひどく面倒に思われ、次第に足が遠のいていった。


小寺信良:
「パソコン通信」とは何だったのか (3/3)
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0502/21/news012_3.html


 NIFTY-Serveのような、テキストベースのログにしか過ぎないコミュニティに、人々がなぜあれほどまでに没頭できたのかと言えば、優秀な巡回ツールがあったからである。Windowsでは「NifTerm」、Macでは「ComNifty」+「魔法のナイフ」+「NIFTY-J ぞーさん」+「茄子R」という組み合わせが定番であった。

 これらのツールを使えば、自分が登録しているフォーラムや会議室を自動的に巡回して、ログを収集してくれる。当時商用BBSには時間単位で接続料がかかり、その他にNTTの通話料がかかる。定額やパケットフリーという考え方は、存在しなかった。だから極力オンラインに時間をかけないため、マクロによる自動巡回を行なうわけである。

 収集されたログはしょせん縦に延々とつながったテキストに過ぎないのだが、これがログブラウザにかかると、フォーラムや会議室ごとに分けれ、同じテーマの発言群はスレッドとしてきれいに整理された。

 従ってどんなに活発に議論が進行しても、話の流れを見失うことはなかったし、発言に対する返信を間違うこともなかった。そのツール上で再現される仮想現実は、ものすごく整理整頓された世界だったのである。それによってオフラインでじっくり読んで考え、返事をするというスタイルが定着した。同時にそれが発言の質にもつながっていた。

 誰かに教えられて、初めて2ちゃんねるを見たときには、衝撃を受けた。あまりにも生ログそのまんまという作りに驚いたこともあったが、なによりもあからさまな罵詈雑言を、文字としてこれだけ大量に見たのは初めてだったのである。

 2ちゃんねるを最初に「便所の落書き」と表したのは、元アスキー取締役の西和彦氏だったか。それを連想したロジックは、分かる気がする。それまで罵詈雑言を文字として記したものに遭遇するチャンスは、そこぐらいしかなかったからだ。

 あまりにもリアルタイムで若過ぎるWebの匿名掲示板は、パソコン通信者にとって存在できる場所ではなかった。ネットワークが、モデムの先からEthernetの先を意味するようになった頃、パソコン通信世代のユーザーは、インターネットの世界でコミュニティ難民となった。

安心のための垣根

 そんな難民にとって、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)の存在が、インターネット上のNIFTY-Serveに見えたことは想像に難くない。インターネットとはそもそも垣根が取り払われた存在だが、そのなかに改めて垣根を作ったという意味で、画期的であった。

 コミュニケーションのスタイルはずいぶん違うが、プライバシーを守りつつ適度な匿名性を持ち、その気になれば個人を特定できるという安全性が、NIFTY-Serveのモデルとよく似ている。筆者はずいぶん前にNifyを退会しているが、SNSでNIFTY-Serve時代の多くの友人たちと邂逅を果たした。

 ニフティがISP業務に乗り出したときに、まさにこの仕組みを実行することができたら、ネットの世界もずいぶん様変わりしたことだろう。NIFTY-Serveのシステムオペレーター(シスオペ)たちも、パソコン通信からインターネットへのスムーズな移行に関してずいぶんアイデアを出したし、メンバーに協力を仰げば、知財も十分足りたはずだ。今でもそこに留まって頑張っている仲間もいる。

 だが、結局それが実現されることはなかった。パソコン通信最大のコミュニティの上に「神」として君臨した奢りがなかっただろうか。

 モデム接続によるテキストベースのサービスが終わることに関しては、インフラの変遷で致し方ないことだろう。だがニフティ最大の失敗は、せっかく構築されたコミュニティの崩壊を食い止める効果的な手を打たなかったことだ。

 今ではフリーで1Gバイト以上のディスク容量を提供するサービスが目立ってきている。タダでリソースをバラまけば、人は集まってくる。だが人がそこに留まり続けるには、それなりの理由がある。そして人が去るのにも、また理由がある。サービス業者は、次の手まで考えているだろうか。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。


関連記事

さよなら「GO」コマンド ニフティ、パソコン通信サービスを終了
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0502/16/news053.html

「NIFTY-Serve」として1987年から続いてきたパソコン通信サービス。2006年3月末で終了が決まった。
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0502/21/news012_3.html

小寺信良氏のその他のコラム
http://www.itmedia.co.jp/anchordesk/kodera.html

関連リンク
ニフティの告知
http://www.nifty.com/support/tty/

[小寺信良,ITmedia]


参考

http://e-words.jp/w/E382BDE383BCE382B7E383A3E383ABE3838DE38383E38388E383AFE383BCE382ADE383B3E382B0E382B5E382A4E38388.htmlソーシャルネットワーキングサイト 【SNS】
読み方 : ソーシャルネットワーキング
別名 : Social Networking Site

 参加者が互いに友人を紹介しあって、新たな友人関係を広げることを目的に開設されたコミュニティ型のWebサイト。誰でも自由に参加できるサービスと、「既存の参加者からの招待がないと参加できない」というシステムになっているサービスがある。

 自分のプロフィールや写真を公開する機能や、新しくできた「友人」を登録するアドレス帳、友人に別の友人を紹介する機能、サイト内の友人のみ閲覧できる日記帳、友人間でのメッセージ交換に使う掲示板やカレンダーなどの機能が提供される。

 有料のサービスもあるが、多くは無料のサービスとなっており、サイト内に掲載される広告や、友人に本やCDなどの商品を推薦する機能を設け、そこから上がる売上の一部を紹介料として徴収するという収益モデルになっている。

 2003年頃相次いで誕生し、検索エンジン大手のGoogle社が「Orkut」というソーシャルネットワーキングサイトを開設したことで話題になった。


キーワード
パソコン通信 2ちゃんねる ソーシャルネットワーキング テキストベース システムオペレーター サービス業 バラエティ 検索エンジン アドレス帳 匿名掲示板
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