カヤックと過ごす非日常

大人は水辺で子供に返ります。男は無邪気に、女はおバカに。水辺での出来事を通してそんな非日常を綴っていきます

837.びわ湖で花見 ― 亀たちの花見

2017年04月19日 | Weblog

先日、まだまだ見応えある名残の桜を追って、花見カヤックをした日。何度も漕いだ岸で、懐かしい物に会い、初めての事に気が付き、やっぱりびわ湖は「うみ」だと思った日の記録。

 

久しぶりの「チーム・気まま」。食べ歩きに行くことが度重なったこのチームだったが、久しぶりに本業?のびわ湖漕ぎに出る。

朝、濃い霧に覆われていたびわ湖。せっかくの花見なのだから、霧が晴れると良いね。でも、霧の中の桜も幻想的で、これも良いね。 そんなことを言っていたのだが、要するに、晴れても降っても霧であろうとも、それが一番よく似合っているその水辺なのだと納得する。それを、負け惜しみ、と思わないのが良い性分だ。

なのだが、漕ぎ出すころにはきれいに晴れた。晴れは晴れで申し分ない漕ぎ日和。晴れて良かったね、と言う自分の、何とまあ、ご都合主義かと感心する。

そんなこんなで、風のない、暖かく穏やかなびわ湖に漕ぎ出す。

4,5日前に満開を迎え、その後雨や風に見舞われたので、桜花は大して残っていないだろうと思っていたのだが、びわ湖の桜は律儀にも私たちを待っていてくれた。霧は晴れたが春霞みのとろけるような空。桜の淡い紅色はミルキーホワイトの空にほんのりと滲む。

 

 あるじ なしとて

 春を 忘れじ

 

 

 

 

 

 

漕ぎ出してじきにこんな所に来る。 昔のキャンプ場の跡。使われなくなって年月が経ち、今は草木に覆われてその影もない。それでも桜は今年も春を忘れず花を付ける。 ここは木々に囲こまれた静かな所。キャンプ場としては良い所だと思うのだが。 「自転車でビワイチ」を声高に叫ぶ昨今、「カヤックでビワイチ」の中継所として活用できるとキャンプツーリングのカヤックには大変ありがたい所だ。 口先ばかりで行動しないのが、私の悪いところだ。

岸から沖に目を転じればそこは うみ 。

 

 びわ湖に浮かぶ沖島

 二つに見えますが
 一つの続いた島です

 遠くからでも港の桜並木が
 よく見えます

 

 

 

 

覚えておいでだろうか。島の佃煮屋さんの大釜。何年か前までは「チーム・気まま」でカヤック漕いであの島まで佃煮を買いに行っていた。給食センターのような大釜で鮎やもろこやごりや、いろいろな佃煮を作っていた。近くのスーパーにも売っている佃煮だが、島の佃煮屋さんが、わざわざ島まで来てくれたから、とおまけにたくさん入れてくれた。それが嬉しくて、わざわざ30分漕いで買いに行った。 その店も何年か前に島から移り、もう沖島に行く楽しみがなくなった。と言って、長い間行かなかった。

しかし先月用があって定期船で久しぶりに行った島には新しく喫茶店ができていた。 今度ゆっくりコーヒーでも飲んで来よう。

 

岸に沿って行くといろいろな物と出会う。 これも久しぶりに会った物。

地籍を記すための図根点のようだ。以前見た時には620らしき数字が微かに読めた。「山」と言う文字は今もはっきりと見える。 山? ここは湖なのだが・・

海でも川でもびわ湖でも、そっと水辺を覗いて行くと人知れず日本の国土を示す標識が立っている。 猛り狂う大海原も暴れ逆巻くホワイトウォーターの川も、どれも日本の国土の一部ではあるが、それを目に見えて示すこんな小さな石杭は、穏やかな水辺でしか会うことができない。 日本国を表す小さな巨人なのだろう。

 

岸をかすめて行く時もあれば遠目に眺める岸もある。

びわ湖の隠れた花見所。 隠れた、とは言わないだろうか。テラスで寛ぐ客だけでなく、桜もだが夏の日の夕日も、冬の日の飛沫氷もカメラマンで賑わう所だ。 カヤックに乗り始めた頃は、ここは 「 私だけの秘密の名所 」 と言っていた。「 みんなの名所 」 であることを知らなかった頃の話だ。

 

花見をするのは人やカヤックだけではない。

 

 ビワガメさん

 お久しぶりですね
 お元気でしたか

 水は冷たくありませんか
 
 今年の桜もきれいですね

 

 

 

私の「ビワガメ」。今は水位が少し上がり、頭と背中を少し出す程度に沈んでいる。 今は最後の桜を楽しみ、来月にはシャガの花見を楽しむのだろう。 ビワガメは何も語らないが、私のびわ湖の歴史を大いに語る友人だ。 その友人に手を振って、先へと進む。

その先にも別の友人の亀。「カメジマ」さん。

「島」ではないのだが、湖面に浮かぶ島のように見えるので私が カメジマ と呼ぶ山。 今日はあそこでお昼にしよう。ではもう少し漕ごう。

車で通った時、この辺りの道には一面に花びらが降り敷いていたのだが、その割には枝にもたくさん残っていて、花見には申し分ない見応えだ。 この辺り、湖岸に下りやすいので、思わぬ所に釣り人がいる。桜ばかり見ていると危うく糸に引っかかる。ここはちょっと岸を離れよう。

 

ここを過ぎればじきに金比羅様。ちょっと上がってお参りして行こう。

 

 景勝地 松ヶ崎

 金比羅さまのおいでになる岸

 

 おや、カメジマさんも
 お花見ですか

 

 

 

 

金比羅さまの桜はその根元を桜色の絨毯にしていた。花びらは、枝にあっても地にあっても、それはそれで桜時(さくらどき)なのだろう。 

岸を行くと防波・消波の土手がある。ここに入ると静かなびわ湖が一段と静まり返り、内湖の佇まいだ。

人工的に木杭で作った所もあるが、干拓前の湖岸の自然の堤防もある。 この辺り、戦後の(戦後、などと言う言葉も死語となりつつあるが)食糧難の頃びわ湖を干拓して田畑を作ったと言う。あのカメジマの辺りも、その頃には湿地で本当に島になっていたとのこと。船で渡ったと古老に聞いた。

進むにつれ、遠くに見えていたカメジマは、もう島ではなくなる。島ではなくなったが、亀の背中一面が何やら白っぽい。何だろう。もしや・・

 

 遠くの桜を見ていた
 カメジマさん

 自分の背中を見たこと
 ありますか

 あなたの背中は
 桜が満開ですよ

 お花見をありがとう

 

 

やっぱり、桜だった。この時季にここを漕いだことは何度かあったのに、この山に、こんなに桜があったとは、気が付かなかった。 それとも、すっかり忘れているのだろうか。忘れたならそれはそれで良い事だ。見るたびに新鮮な感動があり、「初めて見た」と喜べるのだから。 それが進むと、ちょっと困りものだが・・

カメジマの桜を背に昼食とする。びわ湖に限らずだろうが、近年水辺のマナーが悪くなり遊んだ後のゴミの始末、岸辺のルールが目に余る事がある。そのせいで閉鎖された公園がある。 海で、入り江の奥に打ち寄せられている異国のペットボトルなど、かわいいものだと思えるのが残念だ。

 

日焼けを気にしながら太陽を楽しみ、さて、とまたパドルを握る。 じきにこんな所。

 

 龍神様、龍王様

 今日も穏やかなびわ湖を
 ありがとうございます

 玉子は持っていませんが
 気持だけ捧げます

 

 

 

 

龍神様と龍王さまのお社。民話・伝説は各地にあるが、歴史の古い近江の国にもいろいろな話がある。「俵の藤太」のムカデ退治は有名だが(と、湖南の人間はいうのだが)、ここ、筆ヶ崎の龍神様もその話につながっている。 大ムカデから平将門の乱まで、一晩では語りつくせない伝説と史実があるのがびわ湖だ。 いつ来てもきれいに掃除されているがこの日も落ち葉を焼く煙が立っていた。大事にお守りされている神様だ。人がいたので上がらなかったが私も湖上から手を合わせる。

 

川がびわ湖に注ぐ河口では沖に伸びる突堤を見ることがある。びわ湖の水位変化により突堤はすっかり姿を現す時もあれば、びわ湖に沈む時もある。そういう所にはたいてい何本かの木が生え、その生え方でそこがどこの何という川なのか、わかる。

今傾いている木も、何年か前にはっすっくと立ちあがりこの川の名詞として活躍していた。今は傾いても、やはりこの川、日野川の広報係だろう。 あの木とあの木の間が通れるはず。

こんな突堤をいくつか越えて、あと一漕ぎでゴールと言う辺りで一服する。

今漕いで来たのはあの山の向こうから。沖島も霞んで見える。こう見るとここは海と言っても間違いはないだろう。びわ湖の「湖」を「うみ」と言うのも頷ける。 

この岸に紫式部の歌碑がある。沖島を詠んだ歌と言うが実際に詠んだ場所は、ここだとか、いや別の所だとか、いろいろな説がある。 沖島はこの岸からも、隣町の岸からもみえるのだから、どこで詠んだ句かの論争は、この広いびわ湖では些細なことではないだろうか。

さて、と言って最後の漕ぎに出る。 じきに賑やかな岸となり、こんな橋が現れる。

 

 こんな橋を見ると 
 ゴッホを思い出すのです

 アルルの川を思い出します
 

 行ったことないけど・・

 

 

 

 

実際に動くものではないが、異国の風情があり楽しくなる。形骸化しているとは言っても、この形は想像の花を咲かせる。こんな橋が以前はびわ湖で3つあったのだが、今ではここだけになった。 この橋もまたびわ湖の岸のランドマーク。

この先に渡来神伝説の史跡「八ツ崎」がある。 この神様は大亀に乗ってびわ湖を渡っておいでになったとか。 やはりびわ湖は「亀」と縁が深いようだ。

 

15キロをのんびり漕いで無事ゴールした。 今回このコースにしたのはちょっと訳があった。相棒が、例の店に行きたいとの事。その希望にそってこの岸を漕ぎこの店に行く。

 

 びわ湖の鮒ずし

 店により樽により年により
 微妙な味の違いがあります

 

 

 

 

 

臭い物の西の横綱、と言われる鮒ずしだが、食わず嫌いの人が「あれは食べられない」と言っているだけではないだろうか。薔薇の香りとも、イチゴの匂いとも違うが酒飲みにはうける匂いだ。私のお勧めはクラッカーに酒粕のレアチーズケーキ(クリーム状)をぬり鮒ずしを乗せる。ワインに合う事、間違いなしだ。

 

桜が散り始めた日、ビワガメもカメジマも大亀も、そして「チーム・気まま」も、びわ湖で花見をした。 

また来年、このメンバーで花見をしよう。来年は、フナ も仲間に入れようか。

 

 

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