カヤ日記

活動する研究者、かやちゅ。@カヤニストの行動記録
カヤネズミの研究&保護活動や野生生物の保全に関する話題をつれづれに

『すぐそこに、カヤネズミ』が埼玉県推奨図書に選定されました

2016-12-25 | 論文・執筆記事・本

お知らせが遅くなりましたが、『すぐそこに、カヤネズミ』が、平成28年度埼玉県推奨図書に選定されました。
ありがとうございます。
埼玉県推奨図書は、「青少年健全育成条例に基づき、青少年の健全な育成を図るために、特に優良と認められる図書」が推奨されます。
県内の多くの子どもたちに読んで貰えるとうれしいです。

『すぐそこに、カヤネズミ』は、これまでに、下記の受賞・選定を受けました。
第63回産経児童出版文化賞・産経新聞社賞
宮崎県小学生読書感想文コンクール2016選定図書
平成28年度北海道青少年のための200冊選定図書

自分にとっての今年一年を漢字一文字で表すと「動」。
プロジェクト未来遺産2015登録伝達式に始まり、産経児童出版文化賞受賞、田んぼのカヤネズミの食性研究をまとめた「知ってる?田んぼのカヤネズミのくらし」の発行とその後の新聞(京都読売・しんぶん赤旗産経毎日)・ラジオTV(NHK)取材(この時のニュースは、全国のNHKニュースの視聴ランキングTOP10に入ったそうです!)、『すぐそこに、カヤネズミ』受賞記念講演、「ダーウィンが来た!」のダーウィンニュースへの出演、そしてカヤサミットと、大きなイベントが次々にあり、息つく間もなく一年が過ぎたように感じます。

来年はどんな年になるのかわかりませんが、カヤネズミや草地の生きものにとって良い年であるように願います。
カヤネズミへの関心が高まってきたためか、今年一年でカヤネットの会員数は15名ほど増えました。
一年でこれほどメンバーが増えたのは、カヤネット設立間もない2002年3月の「素敵な宇宙船地球号『カヤネズミ物語』」放送以来です。
ただ、もともとの会員数が少ないので、一緒に活動してくれる人がもっと増えて欲しいなと思います。
ネズミ年にはカヤネットの会員数が、3桁に乗ったら嬉しいなぁ。


新・よもやま図鑑「イタチ」

2016-12-18 | 論文・執筆記事・本

急に寒くなりましたね。
京都では、一昨日初めてみぞれが降りました。

公益社団法人大阪自然環境保全協会の機関誌「都市と自然」の連載企画「新・よもやま図鑑」で、イタチの記事を書きました。

畠佐代子. 2016. 新・よもやま図鑑120 イタチ.都市と自然41(9): 16.

今回の記事には、萬田悠二さんから、バンを狙うチョウセンイタチの写真をお借りしました。
残念ながら、都市近郊の河川敷では、外来種のチョウセンイタチばかりになり、ニホンイタチはすみかを追われています。

早いもので、年1回「新・よもやま図鑑」の哺乳類を担当して、今年で6年目になりました。
これまでに、ニホンリス ハタネズミ アカネズミ ヌートリア カヤネズミの記事を書きました。

原稿のテーマは執筆者にまかされていますが、
「干支の動物は入れない」(別の記事で干支シリーズがあるため)
「筆者がフィールドで出会った生きものについて書く」
「シカは外す」(獣害関連でさんざん記事になっているので)
というしばりがあるので、そろそろネタ切れになりかかっています(笑)

来年と再来年に、タヌキとキツネを書いて、お役ご免かなぁ。

なお、「都市と自然」は1部250円(送料60円)で購入できます。
12月号の目次はこちらからご覧いただけます。
興味をもたれた方はこちらからどうぞ。


北限のカヤネズミ

2016-12-14 | 研究日誌

先日、尚絅学院大学の鳥羽先生から、大学敷地内で「正体不明の小さなネズミを捕獲したので、同定して欲しい」と依頼があり、確認したところ、カヤネズミの亜成獣だった。

これまでの確実な生息北限の記録は、宮城県川崎町にある(→全国カヤマップ(宮城県))。
宮城県名取市に位置する尚絅学院大学は、川崎町の生息地点とほぼ同緯度にあり、今回の発見は、もう一つの生息北限地点の確認ということなる。
尚絅学院大学のホームページに、発見の経緯などが掲載されたので、ご一読下さい。

私自身が2000年に行った北限調査では、宮城県内は名取市の仙台空港予定地のほか、河北町・津山町の北上川沿い、涌谷町の旧北上川河川敷、南郷町の鳴瀬川河川敷などで巣を探したが、残念ながら発見には至らなかった(→北限調査紀行Part2(宮城編))。

カヤネズミの生息北限の謎については、ずっと気になっている。
今回の発見で、ひさしぶりに北限調査の旅に出たい気持ちがふつふつとわきあがってきた。

カヤネット北限調査隊の中では10年以上も前に盛り上がったネタだが、じつは、青森県の平虚空蔵貝塚および赤御堂貝塚から、カヤネズミの骨が出土したという記録がある(→青森県貝塚データーベース)。

平虚空蔵貝塚は馬淵川流域の丘陵、赤御堂貝塚は新井田川丘陵に位置する。
いずれも太平洋側で、岩手県にほど近い場所だ。
両地点が近接していること、また、発見場所の地形から、このあたりがカヤネズミの営巣地であってもおかしくない。

文献記録のみで現物(骨)を確認していないので、真偽のほどは確認できないが、もし発見が真実であれば、おそらく縄文期には、カヤネズミは本州全土に分布していたのではないかと考えている。

Googleのサテライト画像を見ると、馬淵川(リンク画像の右上から左下に向かって伸びる青い筋)の川筋を内陸沿いにたどると、いくつかの支流や丘陵地を経て北上川につながっている。
ところが、海岸沿いにはこうした地理的な連続性が見られない。

カヤネズミが青森に生息していた頃とは、当然植生の分布も変わっているだろうが、カヤネズミの太平洋側の北進は、海岸沿いではなく、むしろ内陸から分布を拡大したとも考えられる。

という推測(妄想?)を、とあるケモノ学会で雑談している時に某氏に披露したところ、「おもしれー!」と大うけだったが、しばらくして某雑誌に投稿されてしまった。
せっかくあたためていたテーマを断りなく記事にするんじゃねーよ(暴言)と思ったが、うかうかと話してしまった自分にも落ち度がある。

いずれこの話は北限調査の記録とともに雑誌に投稿しようと考えていたのだが、青森の記録の真偽が確認できないので、いまのところ推測でしかないし、とりあえずここに書いておこうと思う。


カヤサミット終了御礼

2016-12-10 | 事務局長備忘録

おかげさまで、第2回全国カヤ・サミットが無事終了しました。
午前のプレイベントは33名、午後のシンポジウムは、前回(85名)を超える、98名の参加があり、盛会となりました。
カヤネットからは私を含む6名が参加。石川、神奈川からもメンバーが駆けつけました。


午前の観察会は、博物館周辺のオギ原で行いました。
初めて野外でカヤネズミの巣を見る人も多く、みなさん興味津々。
最初にひとつ巣を観察したあと、20分ほど自由にオギ原を探してもらい、5~6個の巣が見つかりました。


その後、実物大のカヤストラップ作りにチャレンジ。
羊毛をカヤネズミサイズにチクチク針でついて成形します。


お手本は、本物のカヤネズミ。
本物をお手本にできるのは、博物館ならではですね。


午後のシンポジウムは、私、富山市ファミリーパークの森さん、琵琶湖博物館の澤邊さんから、研究者・動物園・博物館の立場からカヤネズミの保全について話題提供をしました。
質問もたくさん出て、なかなか盛り上がりました。

身近な自然にすむ生きものの保全には、地域の人たちの協力・理解が不可欠です。
そのことが、今回のシンポジウムで確認できたことは、よかったと思います。
今後、市民・研究者・博物館・動物園との連携を強めて、カヤネズミの保全の取り組みが進むことを期待します。


カヤネット設立15周年を記念して、カヤネット新聞第5号を発行し、サミット会場で配布しました。
編集長のKさんによる、カヤネズミにかけた秀逸な広告が、今回も好評でした(笑)
全文はこちらからどうぞ。

当日の様子がニュースで紹介されました。
カヤネズミの保護 呼びかける - NHK 関西 NEWS WEB(動画ニュースあり)
カヤネズミの生息域保全を 滋賀・草津で全国サミット - 京都新聞2016年12月5日
 *記事に「全国約5500カ所で生息している」とありますが、生息地点数ではなく、生息情報件数です。
・カヤネズミ保全に協力を 草津でサミット 生息地減少 絶滅危惧 - 読売新聞2016年12月8日

動画はすぐ消されてしまうようなので、お早めにどうぞ。