川天使空間

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福島の花さかじいさん 森川成美・文 佼成出版社

2017-03-06 05:52:44 | 自然観察
森川成美さまの、初ノンフィクション。
「阿部一郎〜開墾した山を花見山公園に〜」と副題がついています。
カバーの見開きにはこうあります。

 「福島市の『花見山公園』には、春になると何十万人もの人がおとずれます。
  阿部一郎さんが丹精こめて花を育ててきた花見山公園は、実は阿部家の敷地内にある私有地です。
  美しい花々を見たい、という人々の声にこたえ、
  だれでも自由に花を愛でられるよう、阿部家が無料開放しているのです」

無料開放している花の公園に、どんな物語があるのだろうと本を開きました。

 ・・山の頂上からふもとまで、見事なまでのピンクでした。
 おもしろいように濃淡がついています。
 ・・美しい。でもそれだけではない、もっとちがう「なにか」があります。
 「ふしぎなものを見た」…そんな気持ちがしました。

花の山を目の前に見たような、もっと知りたい、と思いました。
文章の魔法です。

世界恐慌のあおりを受けて、借金を背負ってしまった阿部家。
養蚕のための桑畑も手放してしまった阿部家は、福島市へ桔梗やオミナエシなど山の花を売りに行きます。
幼い一郎さんは母と一緒に花束を背負い、一時間もかけて町へ通いました。
なんとか借金を返したものの、家の正面の雑木の山しか土地がありません。
そこで花を育てて売りに出ることにしたのです。

しかし、種から花を育てようとして失敗の連続でした。
それでも貧しさの中でも節約して、一郎さんは農学校に通わせてもらうことに。
農業の基本を学んだ一郎さんは、お父さんの伊勢治郎さんと一緒に、生け花に使う花木中心に栽培を始めます。
山を本格的に開墾することになりますが、当時は土木機器なんてありません。
約5ヘクタールの山を、毎日毎日、手作業で開墾して行くのは並大抵のことではありませんでした。
一郎さんは、農業高校で校長先生に教えられた「どんなときでも『なにくそ』とがんばる信農魂でがんばりました。

そして木を植えても、それが花を咲かせるまで何年もかかります。
一郎さんはひたすら、がんばりました。
「十年後、二十年後には、この山はどんなに美しくなるだろう」と花に覆われる山の夢を考えながら。

贅沢は敵とされた太平洋戦争時代にも、花を求める人がいました。
戦争が終わって、花木栽培が軌道に乗るとともに、花の山も見事になっていきました。
季節毎に、レンギョウ、ハクモクレン、サクラ、モモ、ツツジ、ボタン、バラと咲き誇りました。

お父さんの伊勢治郎さんは、地区のためにもがんばりました。
拡声器を山に立てて音楽やラジオ番組を流したり、農繁期には臨時の保育所を設けたりしました。
その思いが「公園」に繋がるのです。
山の中に入って花を見せてくださいと言ってくる人が増え、
「こんなきれいな花をわれわれ家族だけで見るのは、もったいないなあ」と、ついに開放することにしたのです。

一郎さんは、おじいさんのことばを思い出していました。
「食べて子孫を残すだけなら、すずめにもできる。
 でも人は、それ以上のことをしなけりゃならない。人として生まれたかぎりはな」
「それ以上のこと」をやろうと思ったのです。

昭和三十四年、四月、阿部家の山は「花見山公園」として一般に開放されることになりました。
伊勢治郎さんは、山に休憩所や展望台だけでなく、池や茶室まで作りました。
一郎さんは突然雨が降ってきても大丈夫なように傘を準備し、足腰の弱い人のためにつえを用意しました。
新しく水洗トイレを作ったりもしました。

その後、写真家の秋山庄太郎さんが「この世の桃源郷」と紹介したこともあり、花見山公園は全国に知れ渡ります。
訪れる人は年間30万人を超えるほどになり、個人の山だということも知らない人も多く、個人で運営するには限界となりました。
そこで福島市が動き、現在は「花見山環境振興協議会」が管理する形になっています。

東日本大震災で、花見山の花木は無事でしたが、道はひび割れ、ガラスが割れました。
それでも道を整備し、花の根を休めるために一年休園しすぐ再開。
一郎さんは再開後まもなく九十三歳で亡くなりましたが、最後まで花の手入れをしていたとのことです。

いまは息子の一夫さん夫妻が、花の山を守っています。
家のすぐ脇を花見客が通るそんな生活を続けるのは覚悟のいること。
でも、「花は人を招く」という心を持った阿部さん一家の心は、訪れた人の心をも和ませてくれるのだと思います。

これまで森川成美さまのフィクションを読ませていただいてきました。
でも、ノンフィクション、いい!
抑制のある文章が、しんみりとした読後感になっています。

森川さま、ますますのご活躍を!

いい本を読むと、いい文章が書ける。
読まなければ書けない。
もっとたくさん読みたいな。
今日もびよよよ〜〜ん (*^ __ ^*)
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