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「マチネの終わりに」 平野啓一郎

2017-06-17 | 読書


 

先月、アウシュビッツの虐殺の本を何冊も読んで気分悪くなったので、リハビリのつもりで買って読んだ。

恋愛小説です。人の愛の深さに深く感動しました。ギタリストの槙野と、クロアチア人映画監督と日本人の間に生まれたジャーナリスト小峰洋子の、五年にわたる愛の顛末。

舞台は東京の、コンサートの夜の打ち上げ会場から始まり、パリ、ニューヨーク、イラクなどなどワールドワイド。

偶然出会って意気投合した二人が、一度は結婚するまでの決意をするが、様々な偶然が重なり、それぞれ別の人と結婚する。しかし、またまた運命の糸に導かれるようにして再会する。二人はこの後、今度こそ本当に人生を共にするのではないだろうか。よかったあーーと読者に思わせたところで小説は終わる。

それにしても槙野の女マネージャー早苗である。槙野が忘れた携帯をタクシー会社に取りに行き、槙野に成り代わって洋子に別れの偽メールを送ったり、その携帯を自分の不注意で水没させ、自分の携帯に残っていたアドレス宛に送るよう頼まれたメールは削除するし、これって犯罪?そして、槙野と結婚してしまう。

槙野とその周辺への献身的な態度は悪いことではないが、恋愛のためなら何してもいいわけではあるまい。愛し合っている者同士を策略を使って別れさせるのは最悪と思う。

それが悪いと自覚しているのなら、結婚して子供までできるようになってからわざわざ懺悔することもなかろう。悪人に徹するなら、墓場まで持って行ってほしいもの。

人の心はとどめがたし。好きになるのも嫌いになるのも仕方のないこと。人が人を思うこと以上に尊いものはこの世にはない。早苗の愛は結局報われず、それもまた残酷なことではあるけれど。

 


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