森友学園事件における国有地格安払い下げも、大阪府の「瑞穂の國小學院、認可適当」も、行政における順法精神の欠如を示しています。そして大阪府私学課も近畿財務局もうち揃って、森友学園関連の文書は無いと言います。印象的に言えば、両役所談合の結果でしょう。ここでも公文書保存の上で、違法行為があります。財務省理財局長は国会答弁で適法だと言っていますが。
安倍首相夫妻、稲田防衛相、松井大阪府知事が籠池泰典氏と人間関係の接点があります。そのあたりの人間関係が、国有地の大甘査定、小学校設置審査の大甘認定につながったのではないか――行政の不法行為に違いないと、疑惑を呼んでいます。
有力政治家や高級官僚らが法を軽視して情実行政を行ったという森友学園事件が、民主主義国家の法治主義に影を落としている時期に、法治原則を確認する明るい判決がありました。下の2本の新聞記事をご覧ください。
大阪地裁では、覚せい剤の取り締まりに関係する警察の容疑者逮捕について、警察の「違法」と判断しました。新聞記事を読めば、警察にとって無理もない事情もあるようです。しかし、裁判所もその事情を承知したうえで、捜査令状無しに逮捕した覚せい剤使用者を無罪放免にしました。
最高裁では、裁判所の捜査令状なしに行う警察のGPS捜査を違法と認める判決が出ました。
【毎日新聞 2017年3月24日】
大阪地裁判決
<覚せい剤取締法違反> 令状なし取り押さえ、無罪 「任意範囲超えた」
覚せい剤取締法違反(使用)の罪に問われた大阪府豊中市の男性(55)の判決公判で、大阪地裁は24日、無罪(求刑・懲役2年)を言い渡した。職務質問中だった大阪府警の警察官が逃走を図ろうとした男性に対し、強制捜査が可能な令状がないまま投げ飛ばすなどして取り押さえており、飯島健太郎裁判長は「任意捜査の範囲を超えた逮捕行為で違法。その過程で採取された尿に証拠能力は認められない」と述べた。
男性は昨年6月、大阪市生野区の店舗で覚醒剤を使用したとして起訴された。判決によると、男性は昨年6月16日未明、大阪市北区の路上で、府警曽根崎署員らから職務質問された。署員は任意の採尿を求めたが男性は拒否。男性は「心臓が悪い」と話したため、病院に搬送された。府警は強制採尿のため捜索差し押さえ令状の請求手続きを始めた。
だが、男性が急に病院の外に走り出したため、署員のうちの一人が男性を投げ飛ばしたり、首をつかんだりして取り押さえた。この段階で令状は現場に届いていなかった。男性はその後、令状に基づき採尿を受け、覚醒剤反応が出たため逮捕された。
飯島裁判長は「逃走防止の必要性は高く、一定程度の有形力の行使は許容される」と指摘したが、「警察官の行為は任意捜査の範囲を超え、令状主義の精神を没却する重大な違法があった」と判断した。
【毎日新聞 2017年3月16日】
最高裁上告審判決
<GPS捜査> 裁判所の令状なしは違法 最高裁が初判断
捜査対象者の車などに全地球測位システム(GPS)端末を付けて居場所を把握する捜査の違法性が争われた刑事裁判の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は15日、GPS捜査は強制捜査に当たり、裁判所の令状を取得せずに行った警察の捜査は刑事訴訟法に違反するとの初判断を示した。最高裁が警察の捜査手法を違法と認定するのは異例。
最高裁の全裁判官15人で構成する大法廷は、法律上重大な問題や憲法違反の有無を審理するが、今回は憲法判断は示さなかった。
上告審で弁護側は「GPS捜査はプライバシー侵害の危険を必ず伴い、令状が必要な強制捜査に当たる」と主張。捜査と関係ない位置情報も蓄積されるため、現行の検証令状を取得した場合でも許されないと強調し、「警察の捜査は憲法が定める令状主義や適正手続きの保障を無視している。厳格な要件を課す立法が必要だ」と訴えた。
これに対して検察側は「公道などを移動する車が対象で、プライバシー保護の必要性は高くなく任意捜査に当たる。検証令状を取得して実施した例もあり、現行法で対応が可能。憲法違反や憲法解釈の誤りはそもそも存在しない」と反論していた。
大法廷で審理されたのは、事務所荒らしを繰り返したなどとして窃盗罪に問われた大阪府の男(45)の公判。大阪府警は2013年5~12月、男と共犯者の車やバイク計19台にGPS端末を付けて位置情報を取得した。大法廷はGPS捜査を違法と認める一方で、捜査で得られた証拠を除いても被告の有罪は維持できるとして懲役5年6月とした1、2審判決を支持し、弁護側の上告を棄却した。