川本ちょっとメモ

★所感は、「手ざわり生活実感的」に目線を低く心がけています。
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2012年東京三鷹ビラ配り逮捕事件――警察による政治活動の自由並びに言論の自由への干渉

2016-09-04 21:27:24 | Weblog

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2012年東京三鷹ビラ配り逮捕事件――警察による政治活動の自由並びに言論の自由への干渉
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もう一度「2012年東京三鷹ビラ配り逮捕事件」について 民法テレビ電波と郵便受けの視点で
2016/11/12
警察は選挙で自民党の味方? 私のちょっとした見聞をご紹介します



2012年12月12日に掲載した記事を削除、改稿して再掲します。

地方生活では日常生活で他人地を通ることがあたりまえにある
我が家は中学校のすぐ近くで、家を出て坂を降りると小学校がある。車で行ってはいるけれど、徒歩圏内に病院がある。車かバスに乗っていけば、そう遠くないところに県立病院もある。大型食品スーパーが1キロ圏内に4つある。コンビニもドラッグストアもある。便利な住宅地域に私は住んでいます。

でも都会ではありません。地方都市と言えますが、大都市域住民から見れば、「いなか」ということになりましょうか。市街化調整区域があって、田んぼがあります。里山も残っています。

ときおり、運動のつもりで里山へ足をのばして歩くことがあります。里山にも田んぼにも里道(りどう)と呼ばれる細道があります。里道(りどう)は公共物ですが、細道が里道(りどう)であるかどうかは部外者にはわかりません。里山にはもちろん所有主がいますから、里山を歩くということは無断で人の所有地の中をうろついていることになります。

田んぼが重なっているところでは、幅2メートルくらいの農道が走っていることもあれば、畦道も縦横に走っています。特に春のよい天気の日には、自転車で走ったりします。これらの道にも里道(りどう)とそうでない道があって、通り抜けるわたしには判別できません。田んぼ仕事をしている人がいても、通り抜けるのを咎められることはありません。里道(りどう)なんかは少ないですから、大方は私有地の道を通り抜けているはずなのに。


団地内郵便受けビラ入れで逮捕(2012年東京・三鷹)
2012年12月11日付け毎日新聞(mainichi.jp)が伝えています。――都知事選 ビラ戸別配布で70歳容疑者を逮捕。男は8日午後0時半ごろ、団地の各戸のドアの郵便受けにビラを入れて回っていた。三鷹署によると、団地には「住人以外立ち入り禁止」と張り紙があった。男は氏名などを黙秘。住民が肩を痛めたと訴えたため10日に傷害容疑も付けて送検したという。

この記事から察するに、2012年12月8日正午前後、ビラ配り中に現行犯逮捕されたものと思われます。8日逮捕、10日肩が痛いという訴えによる傷害容疑を付け足した。おそらく肩が痛いと訴えた住民が8日当日に警察に通報し、警察が現場に駆けつけた。

警察の到着前に、この住民とビラ配布人70歳が口論になったかもしれません。そのときに「帰れ、帰らない」でもみあいになったかもしれません。そうであっても逮捕された人は70歳。訴えた人の年齢はわかりませんが、年下であるかもしれません。当事者住民が「痛いと言っている」だけの傷害容疑は、ビラ配り人の悪人イメージを広めるためのものと考えます。

「住人以外立ち入り禁止」張り紙のある各戸ドアの郵便受けに都知事選のビラ入れをしたから、という逮捕理由には問題があります。

<1>
集合住宅の場合、各戸占用面積の内側は当然、各戸の私的占有領域になるでしょう。すなわちドアの内側です。家人に無断でドアの内側に入ってビラを置いていけば、当然のこと、不法侵入になります。

<2>
集合住宅の場合、廊下や階段は入居者が自宅に出入りするために必要な入居者共用領域になります。この共用領域に向けて各戸ドアの郵便受けがあります。この場合通常の生活感覚では、共用領域は居住者以外の人が踏みこんで良い公共的空間です。

「住人以外立ち入り禁止」との張り紙があっても、電気ガス水道の検針係は立ち入りしているでしょう。郵便配達、新聞配達、宅配の人たちも立ち入りしているでしょう。そのほか飲食・美容などの日用生活関係のビラ入れをする人も立ち入りしているでしょう。立ち入りしてあたりまえの生活空間です。

これらの人たち全部を逮捕しないで、都知事選のビラ入れだけをターゲットに逮捕していることで、この逮捕事件の異常さがわかります。おそらく、都知事選がらみのビラはいろんな陣営が入れているはずですが、そのうちの特定の陣営のビラだけを対象にしたものと想像できます。

「不法侵入」を適用するには無理のある状況下で、選挙に関して、特定の陣営のビラ配り人を、警察が逮捕しました。

ですから、この事件は言論活動や、政治活動に対する「抑圧」または「弾圧」と表現してよい事件で、「民主主義的自由」を侵す事件です。


公共的空間の政治的自由
そこそこの規模の団地は公共空地がたくさん取ってあります。わたしが住んでいるところにも近くに団地があります。たくさんの5階建てが配置されています。団地から外の一般道路へ出入り口が3つあります。団地内には駐車場もありますから、車が徐行できる通路があります。原付スクーターや自転車が走ることができる道もあります。

この団地の中を通りぬけする人もあります。わたしも団地の中を見物して通り抜けたことがあります。水道・ガス・電気――検針する人も出入りします。新聞配達や郵便配達が、上の記事にあるドアのポストに入れていきます。

ドアの郵便受けは同居家族以外の人に向かって、いろいろな配布物を入れてくださいという意思表示です。ドアに設置された郵便受けは、居住者が広く外に開いた窓口という意義があります。これに「住人以外立ち入り禁止」を付するなら自己撞着というものです。

だから、自己撞着という矛盾する「住人以外立ち入り禁止」を付した住人は、警察への協力者なんでしょう。ドアの郵便受けは住民自身が外部に向かって開いている窓口ですから、ポスティングの目的なら、郵便受けまでは誰が立ち入っても良いはずです。



警察による法律の拡大適用(座りこみごぼう抜きの事例)

これまでに述べたところから、上の「東京三鷹ビラ配り逮捕事件」は、法律の過剰適用もしくは拡大適用と言えます。

いまの日本では見ることがありませんが、昔、学生デモの盛んなころには座りこみ学生をごぼう抜きして検挙する風景がよく見られました。あたりまえのようにごぼう抜きして警察に放り込むわけですが、それに適用されたのが道路交通法でした。道路上で立ち止まってはいけないというような条文があるのです。適用されたのは、道路交通法 / 第5章 道路の使用等 / 第1節 道路における禁止行為等 / 第76条4項2号です。

(禁止行為)
第76条
 何人も、信号機若しくは道路標識等又はこれらに類似する工作物若しくは物件をみだりに設置してはならない。
2 何人も、信号機又は道路標識等の効用を妨げるような工作物又は物件を設置してはならない。
3 何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。
4 何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
(1) 道賂において、酒に酔つて交通の妨害となるような程度にふらつくこと。
(2) 道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しゃがみ、又は立ちどまつていること。
(3) 交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。
(4) 石、ガラスびん、金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること。
(5) 前号に掲げるもののほか、道路において進行中の車両等から物件を投げること。
(6) 道路において進行中の自動車、トロリーバス又は路面電車に飛び乗り、若しくはこれらから飛び降り、又はこれらに外からつかまること。
(7) 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為


人気タレントの街歩きロケ撮影

道路で立ち止まってぶらぶらしていたり、話していたりすることは、繁華街では普通にあることです。人で混雑している場所では、すり抜けたり、よけて通り過ぎたりした経験は誰にでもあります。通行の邪魔になるからといって検挙することは、普通はありません。

近ごろでは、タレントの街歩き番組がいくつもあります。店の前で立ち止まって出演者同士でおしゃべりするシーンでは歩道を占領しています。その間、一般歩行者がそこを通れないことがよくあります。時によっては撮影スタッフのメンバーがその周囲で通行人止めをしている画面が入ることがあります。それでも彼らテレビクルーが「交通の妨害で検挙された」とは、聞いたことがありません。

でも警察権力を行使する者がその気になれば、法律をどのようにも拡大解釈して、好みによって、ある者を捕まえたり、ある者をとがめもしなかったりできるわけです。
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