生涯を完結させるまでに歌いたい歌、最近始めたヴァイオリンとフルートはどこまで演奏できるようになるか、と時々ワンコ

死は人生の終末ではない。 生涯の完成である。(ルターの言葉)
声楽とヴァイオリン、クラシック音楽、時々ワンコの話。

慶應義塾大学コレギウム・ムジクム・オペラプロジェクト モーツァルト「ドン・ジョバンニ」

2016-12-25 23:03:52 | 聴いて来ました

 聴いて・観て参りました。慶応義塾大学コレギウム・ムジクム・オペラプロジェクト2016、演目はモーツァルトの「ドン・ジョバンニ」です。会場は日吉キャンパスの駅に最も近い協生館内の藤原洋記念ホールです。初めてのホールですが、天井が高く奥行きが深く、木の柔らかな響きのとても良いホールですね。定員は5~600人というところでしょうか。舞台と客席最前列の間がオーケストラピットになっていました。2管編成でトランペットとホルンはバルブなしのナチュラルトランペットというかバロックトランペットとナチュラルホルン、木管楽器群のフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットはモダン楽器の様でした。弦楽器群もモダンボウにモダン楽器の様に見えました。とすると金管楽器のみ古楽器を使う意味が良くわかりませんが、何事も雰囲気重視でよろしいのではないでしょうか。オーケストラの皆さんもほとんど慶応大学の学生さんの様でしたが、トランペットとホルンの方々は私の耳にはノーミスで演奏されていたようで、拍手を送りたいと思います。

 さて素晴らしいホールではありますが、オペラ公演には若干残響が長すぎるかもしれません。女声やテノールの声はそれほどでもないのですが、バリトンとバスの声は言葉がやや聞き取りにくい様に感じる時が何回かありました。というのもモーツァルトの「ドン・ジョバンニ」は主要キャストのドン・ジョバンニ、従者のレポレッロ、騎士長にマゼットの4名はバリトンとバスで、他の男声キャストはテノールのドン・オッターヴィオ一人だけですね。なので「ドン・ジョバンニ」は結構男声の低声系の重唱がありますね。

 さてタイトルロールのドン・ジョバンニを歌うのは、先日来すっかりファンになっているロシア人のヴィタリ・ユシュマノフ氏で、期待が大きすぎたからかあの感動をもう一度というほどの感動は感じませんでしたが、素晴らしい歌唱と堂々とした演技はブラ~ヴォですね。日本人の歌手だと女声とからむ演技ではどうしても気恥ずかしさがあるように感じてしまいますが、女性の扱いに慣れている風がアリアリながら自然な演技がドン・ジョバンニにはピッタリですね。そのヴィタリ・ジョバンニに最も絡むのが従者のレポレッロですが、白岩じゅん氏はユシュマノフに勝るとも劣らぬ歌唱と演技で、従者としての苦悩と根は真っ当なところもあるコミカルなレポレッロをご当人も十分に楽しんでいたのではないかと思います。もっとも「ドン・ジョバンニ」はこれまで生公演を3回か4回見てきていますが、「魔笛」のパパゲーノと同様に殆どのバリトンにとってはやりがいがあって、やれば評価されやすい美味しい役ではないかと思っています。今回の公演ではマゼットと騎士長を一人二役で望月一平氏が歌っていました。マゼットについては普通に良かったと思いますが、私としては「ドン・ジョバンニ」の中で最も格好良い役は騎士長だと思っているので、特に食事に招待されてドン・ジョバンニの館を訪ねたところからの騎士長については、過去の公演にもっと格好の良い騎士長がいたので、今後再び騎士長を歌うことがあれば更に研究して頂きたいと期待を込めてエールを送ります。

 それにしても大団円へと突き進んでいく一連の流れの始まりが、食事に招待された騎士長がドン・ジョバンニ邸を訪れたところからになるわけですが、モーツァルトの天才を感じますよね。ドン・ジョバンニ邸を訪れた騎士長が「ドン・ジョバンニ」と歌いかけた後はドン・ジョバンニが地獄に落ちるまで息を飲む暇が文字通りありません。ここはよほどひどい演奏・演出でない限り舞台の進行に引きずり込まれますが、今日の演奏・演出も限られた予算の中で最大限の効果を狙って、まずまず成功していると思います。私としてはこれまでで最高の演出とは言えませんが、これはこれで十分にありだなと思いました。

 以上、とりあえず本日はホールとオーケストラと男声陣について感想を述べさせていただいて、女声陣とその他に関する感想については明日報告させていただきます。


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