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ヨハン・セバスチャン・バッハ 「音楽の父」とは如何なる”音楽”の父であったのか  放送大学・岡田暁生教授による「西洋音楽史」講座から

2016-10-12 22:32:10 | J・S・バッハ

 昨日”楽聖”ベートヴェンを話題にしたことをきっかけに、放送大学「西洋音楽史」講座から岡田暁生教授による、”音楽の父”ヨハン・セバスチャン・バッハに関する講義について、自分自身の備忘録としてエッセンスを記しておきます。

 先ずヨハン・セバスチャン・バッハが生きていた当時、当のヨハン・セバスチャン・バッハは決して有名な音楽家ではなかったとのこと。モーツァルトにとってバッハと言えば、ヨハン・セバスチャン・バッハではなく、そのヨハン・セバスチャン・バッハの11人の子供の内の末っ子である、ヨハン・クリスチャン・バッハであったそうです。また次男のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハも父親以上の名声を得ていたそうです。モーツァルトは楽譜の収集が趣味である貴族の館を訪れた時に、たまたまヨハン・セバスチャン・バッハの楽譜を見出して研究し、その成果特に対位法に関するものを後期の作品に反映させたとのこと。

 ただし、ヨハン・セバスチャン・バッハの作品が後世に受け継がれていなかったのは、当時の音楽は使い捨てで古い作品を演奏するという習慣はなかったそうです。一時期は殆ど忘れ去られていたヨハン・セバスチャン・バッハが再評価された最大の出来事は、メンデルスゾーンによる「マタイ受難曲」の再演だったそうで、当時まだ後進国であったドイツが、文学や美術ではフランスやイギリスの後塵を拝していたところ、何とか音楽でアイデンティティーを主張するという、多分に政治的な力学も働いていたと、岡田教授は分析されているようです。

 西洋音楽といっても、あらゆる西洋国家の音楽が同じように発展してきたわけではなく、長らくイタリア・フランス・ドイツの音楽を意味していました。まあバッハや古典派・ロマン派の時代は、現在の国境とは随分と違っています。さて、イタリアとフランスに共通して、ドイツと異なるもの、というと何が思い浮かびますか?イタリアとフランスは赤ワインが美味しくて、ドイツは白ワインが美味しいというのもありますね。しかし、岡田教授が指摘されていたのはキリスト教のカトリック圏とプロテスタント圏との違いですね。オーストリアもカトリック圏だそうです。カトリック圏の文化は華やかで派手なものが好まれる傾向があるのに対し、プロテスタント圏は深い精神性・質実剛健という傾向があるとのことです。つまり、ヨハン・セバスチャン・バッハの音楽は極めてプロテスタント的で、地味で理屈っぽく大衆受けしないということです。同じドイツに生まれながらイギリスに渡って活躍したヘンデルの作品がカトリック的であるのと良い対照とのことです。

 一方で、ヨハン・セバスチャン・バッハはバロック音楽を代表する偉大な作曲家ではあるけれど、決してバロック音楽の典型的な作曲家ではない、とも岡田教授は指摘しています。つまり、ヨハン・セバスチャン・バッハと言えば対位法というイメージが強いと思いますが、実はバロック音楽は決して対位法を中心にした音楽ではないとのことです。むしろ対位法の後に発展・完成した和声法こそ、バロック音楽期に完成しているし、実はその和声法を完成させた人こそがヨハン・セバスチャン・バッハその人であったとのこと。このことは現代音楽を代表する作曲家であるシェーンベルクがその様な示唆を含んだ発言をしているとのことであり、又平均律クラヴィーア集(バッハの当時には平均律という言葉はなく、「よく調律された」程度の意味、実際には”well-tempered”)こそが正にその集大成と言うべきものかと、私は理解したところです。

 この意味で「音楽の父」ヨハン・セバスチャン・バッハの「音楽の父」と言う意味は、必ずしも何の修飾もない「音楽」の父と言うよりは、「調性音楽」あるいは「和声法音楽」の父と呼ぶべきかもしれない、という主旨を岡田教授は指摘されていたと思います。古典派音楽とロマン派音楽は何れもヨハン・セバスチャン・バッハが完成した和声法・調性音楽の応用に過ぎなかったとも言えるわけで、なるほど「音楽の父」と称される存在ですね。

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