医療裁判傍聴記

傍聴した観想など

陶生病院汚職 参事の医師 治験委託料でキャバクラ

2017-05-19 22:39:11 | 医療界
会議費の名目で流用  
 新薬などの臨床試験(治験)の補助事業者選定を巡る贈収賄事件で、第三者供賄容疑で逮捕された公立陶生病院(愛知県瀬戸市)参事の医師、谷口博之容疑者(63)は、製薬会社から病院に支払われる治験委託料の一部を飲食代などに私的流用していたことが、捜査関係者などへの取材で分かった。愛知県警は、委託料を差配できる立場を利用し、積極的に治験を引き受けていたとみている。

 名古屋地検特捜部は18日、谷口容疑者を第三者供賄罪で、治験補助会社「ASOCIA(アソシア)」(東京都)の実質経営者、小曽根秀明容疑者(53)を贈賄罪でそれぞれ起訴した。第三者供賄罪は、公務員が職務に関して依頼を受けた見返りに、第三者に賄賂を受け取らせることを罰する。直接金品を受け取らなくても実質的に利益を得たとみなされ、5年以下の懲役が科される。

 陶生病院によると、治験委託料は半分を病院収入とし、残りを治験を担った診療科に支給している。谷口被告は2014、15の2年間に28件の治験で統括する責任医師を務め、自身が部長の呼吸器・アレルギー疾患内科に委託料計5000万円ほどが配分された。

 病院関係者や捜査関係者によると、谷口被告は診療科に配分された委託料を差配する立場にあり、会議費の名目でキャバクラを頻繁に利用したりして、委託料の一部を飲食代などに費やしていたという。陶生病院は医師側に配分された委託料の使途に制限を設けておらず「谷口被告が何に使ったか把握していない」としている。

 他の公立病院では一般的に、医局や診療科に支給された治験委託料は研究費や雑費などに使われており、支出も総務部門が把握する仕組みになっている。名古屋市立病院では、使途が機器や書籍の購入など医療に関するものに限られ、医師の要望を受けて総務部門が購入している。担当者は「飲食代での支出はあり得ない」と話す。

 谷口被告は呼吸器に関する治験の第一人者で、医療関係者によると、投薬期間の調整がうまく「いろいろなパターンに対応できる治験医師」として実績を重ねていた。

 一方、陶生病院関係者によると、谷口被告は院内で使う薬を選ぶ権限があり、製薬会社に自身の講演会を企画させ、講演料の見返りに薬の採用を決めたこともあったという。製薬会社と会食し「薬を売りたければ俺のところに言ってこい」と豪語したともされる。

 こうした言動をとがめられると「薬は売れる。僕に金が入る。病院の収益も上がる。みんながハッピーだからいいことじゃないか」とうそぶいたという。また、周囲に「僕みたいにうまくやれば、公務員でも年収5000万円以上になる」と吹聴していたとされる。【野村阿悠子、斎川瞳】

「息子の妻へ94万円振り込ませる」として起訴
 起訴状によると、谷口博之被告は2014年10月~15年3月、別会社に発注していた治験補助業務をア社に切り替えて継続するよう小曽根秀明被告から依頼され、15年3~9月に見返りとしてア社に雇用させた息子の妻(30)の口座に現金計約94万円を振り込ませたとされる。捜査関係者によると、両被告とも起訴内容を否認しているという。

 捜査関係者などによると、小曽根被告は10年ごろに東京都の治験補助会社に入社した。この会社は13年に二つに分社して小曽根被告が一方の代表に就き、陶生病院の業務を請け負うとともに、谷口被告の息子の妻を従業員として雇用した。

 小曽根被告は経営権を巡るトラブルから代表を解任され、14年12月にア社を設立し実質経営者になった。直後、陶生病院の業務はア社に移った。息子の妻は15年3月からア社の従業員となったが勤務実態はなかった。  

 ア社は15年からの2年間で約4億5000万円を売り上げ、陶生病院からの受注が3分の1を占めた。

2017年5月19日09時00分(最終更新 5月19日09時00分) 毎日新聞
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