神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 王たちの道

2017-01-25 22:26:28 | SF

『王たちの道 1-3』ブランドン・サンダースン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

新☆ハヤカワ・SF・シリーズの中で異彩を放つファンタジー作品。未完結ということで放っておいたのだが、積読が多くなってきたので消化開始。

するとこれが抜群におもしろい。もっと話題になっていてもいいのにと思ったが、出版形態からファンタジーとSFの狭間に落ちてしまって捕捉しづらいのか。

最初の方は確かに読みづらく、なかなか頭に入ってこない。もしかしたら、ここで放り投げてしまう人も多いかも。

謎の暗殺者が出てきて王を殺したかと思えば、急に奴隷の話や、良家のお嬢様の話が出てくる。そういった群像劇はいいのだが、さらに高度なハイ・ファンタジーなものだから、たちが悪い。つまり、歴史や風土、生態系に至るまでが細かく作りこまれた異世界のお話で、説明もなく独特な用語や固有名詞がバシバシと出てくる。

スプレンってなにー。スフィアって光るだけじゃないのー。っていうか、ファブリアル(SF風に言うとファブリケーターとか?)ってそんな3次元プリンターだか、元素製造機みたいなものが、なんでこんな中世文化の中にあるんだよ!

ところが、主人公が奴隷のカラディン、お嬢様のシャラン、王弟のダリナルの3人に絞られ、彼らの置かれた状況が見えてくると、どんどんと物語に引き込まれていく。

特にカラディンのパートが突出して面白い。守るべき者を守れずに挫折を繰り返し、奴隷にまで身を窶してしまった男は、とにかに酷い目に合い続ける。それでもなお、仲間を守ろうとして努力し続けるその姿には感動を覚えずにはいられないし、応援せざるを得ない。

彼がそこまで他人の生命を守ることに拘る理由として、彼の出自を外科医の子として設定したところも絶妙な選択だと思う。狂信的な宗教家でもなく、博愛的な理想家でもなく、合理的な医者の卵として、彼は仲間を見捨てることができない。そして、雪だるま式に増え続ける救えなかった生命のトラウマを抱え込む。

カラディンだけでなく、ダリナルや、シャランの師となるジャスナーの言動や、過去の言い伝えからの引用も実に興味深い。まるで、マイケル・サンデルの正義の話のようだ。正義とは何か、王道とは何か。

これはすなわち、タイトルの『王たちの道(The Way of Kings)』ということになる。曰く「死の前に生。弱さの前に強さ。行き先の前に旅」。この世界、ロシャルを襲おうとする危機と、それを警告する過去からの声は、世界を救うために“王たちの道”を目指せとささやく。

その危機というのがまた……。神話になるかSFになるか。怪しい匂いがプンプンする。

実はこの3人以外に、暗殺者のスゼスを始め、リスン、アクシスといった数人の人物が断章に出てくるのだが、彼らについては、3巻までではほとんど触れられることもなく、伏線は回収されない。きっと彼らは第2部以降の主人公となるのだろう。

なにしろ、3部作の第1作が3分冊となったものらしい。ということは、残り6冊。もしかしたら、続きは文庫化後かな。

 

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