独立記者の挑戦 中国でメディアを語る

27年間の記者生活を土台に、国境を超えた普遍的な価値を追求する

中止された日本の資生堂CMと、議論を呼んだ中国のSK-II広告

2016-11-05 01:52:19 | 日記
またしても空気の話である。

1か月前になるが、資生堂の新化粧品に関するCMが中止になったとのニュースが流れた。商品は25歳の女性をターゲットにしたブランド「インテグレート」。25歳の誕生日を迎えた女性に対し、友人2人が「今日からあんたは女の子じゃない」「もうチヤホヤされないしほめてもくれない」「カワイイという武器はもはやこの手にない」と辛らつな言葉を浴びせる。最後は、「カワイイをアップデートできる女になるか、このままステイか、ってこと?」「なんか・・・燃えてきた」とやり取りがあり、「生き方がこれからの顔になる」との宣伝コピーが登場する。

朝日新聞は「インターネット上で『差別的だ』といった批判が広がっていること」、産経新聞は「『「男性の古い価値観を押し付けている』などと批判を受けたため」と、それぞれ中止の理由を伝えた。資生堂自身は、「大人の女性になりたいと願う人たちを応援したいという当CMの制作意図が十分に伝わらなかったことを真摯に受けとめ、総合的に勘案しつつ、今後のPR、宣伝活動の参考にさせていただきます」との告知を公表した。

授業で、メディアの差別用語と表現の自由をめぐる問題について取り上げた際、このCMを紹介した。中国の動画サイトでもすでにアップされている。



クラスは8割以上が女子なので、「どこが問題だと思うか」と聞いてみた。25歳女性の価値観を強要しているなど、それぞれの解釈はあったが、中止することにはみなが首を傾げた。私自身が理解できず、おそらく「空気」のせいだと納得するしかなかったが、そうなると学生に翻訳することも難しい。やむなく、「問題点を明確にしないで議論を避け、あいまいな決着をすることは、将来に教訓を残さないばかりか、悪い前例を残すことになる。安易な中止には反対だ」としか説明できなかった。

するとある女子が、「SK-Ⅱの面白いCMがあって、議論を呼んでいる」と紹介してくれた。25歳以上で結婚していない女性の葛藤を正面から描いたものだという。同じ25歳をターゲットにした異なる化粧品広告が日中で作られ、各様の話題を呼んでいるのは、偶然にしても興味深い。休み時間、スクリーンに映してみた。4分20秒ほどの長い作品だ。

http://v.youku.com/v_show/id_XMTUyODQ3NzcyOA==.html

中国では適齢期を過ぎた未婚女性を「剰女」と呼ぶ。「余った女性」という直接的な表現だが、その言葉自体が差別的だと使用禁止を求める広範な声は、今のところ起きていない。

CMには、両親から早く結婚をするよう迫られ、「不孝」と女性の「自立」の板挟みになって苦悩する3人の上海女性が登場する。自分で仕事を持ち、結婚のプレッシャーを除けば、それなりに都市での生活を楽しんでいる。最後は、両親が娘に理解を示し、「自信」「独立」「生活を楽しむ」という三つのキーワードが彼女たちの存在を肯定する。そして画面には「プレッシャーで未来が左右されないように」の字幕が浮かび、自立する女性にエールを送る。


「結婚のための結婚はしたくない。そんなことをしても楽しくは暮らせない」



ネットでは、「感動した」「励まされた」との感想から、「剰女を商品化しようとしている」「ことさら剰女をマイナスイメージでとらえることに反感を覚える」などの批判まで様々な議論がされた。だが、広告をストップさせろという声はない。不満があればそのブランドを無視すればいいだけだ。意見は消費行動によって表すことができる。気に入らないから抹殺させよという「空気」の力は働かない。それでなくても権力によってしばしば画像や記事が削除されるお国柄なのだ。自分たちの首を絞めるようなことはしない。

果たしてどちらが言論の自由な国なのか。境界線があいまいになってしまう。
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